弱点克服

当社のHP内に、納車して数年後の
お客様の声を紹介していますが、
GPZ900RのF様が書いて
いただいている番号⑪の文の中に

「段階的にチューニングでき、
非常に変化が解りやすく、どんどん乗りやすく
良いバイクになっていると感じます」

と書いていただいています。

改悪と言われる物が大変多い中で、
なぜそのようにできるかと言えば、
それは常に弱点の克服、長所を伸ばすことを
常に意識しているからです。

今回はスイングアームを例に説明します。
これは当社の物。今の物は少し形状違います。
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これはJB製、こちらの方が剛性は上。

サイズが太いリヤホイールを装着する際に
スイングアームの幅が足りなくなり
(タイヤがスイングアームに干渉する)
必然的に交換することが多いのが
この部品です。

元々純正についているスイングアームの
強度に余裕がない場合、ノーマルでも
負荷が高めの走りをしたり、
またエンジン側のパワーが上がったりすると
車体がヨレヨレし走行中に不安定に
なったりします。

これはかなり怖い現象で人間側でどうこう
できるようなものではありません。

もしそのような現象を今は感じていなくても、
実はその弱点を修正した時に、
今までは不安定な状態だったんだと
後で気付き、本当はもっと楽しめるバイクだった
と解る場合もあります。

特に飛ばしていなくても
アクセルを開け続けて走る様な高速道路、
レースでなく一般道でも空いた道でアクセルを開け
続ければ現象がでます。

また大きめにアクセルを開けている時に
ギャップを越えたりしてもそれをきっかけに
車体が暴れたりすることもあります。

当社の取り扱いの車種で、
このスイングアーム交換で特に良い結果がでるのは
スズキの空冷バイク1100カタナです。
カタナ1100は純正スイングアームに
アルミの材料が使われています。

1100カタナは年代的に、
鉄のスイングアームからアルミに変わり始めた
頃のモデルで技術的にまだ足りなかったのでしょう。

ですから純正のままでもエンジンのパワーを
フルに使うような走りをすれば
不安定になります。

鉄で鋼を基準にした場合、
そのまま材料をアルミに換えれば
私たちが乗っている時に重要な、
弾性変形の領域の強さがだいたい
3分の1強ぐらいに落ちます。

ですからカタナに使われている
アルミのスイングアームがまだ充分な
強度が出せず、それにより不安定になることは
仕方のないことです。

アルミに換えれば軽量化できると
いうことで、今の時代でも鉄の部品から、
多くの部品がアルミに変更されていますが、
そのまま置き換えるのではなく、
板厚を上げたり、太さを変えたり、
形状を工夫しなければ、
ただ弱くなってしまうのです。

良く古いバイクはフレーム剛性が
たりないと言われますが、
それより前に回りの部品が足を引っ張って
いることもとても多いのです。

それがはっきり出ているのが
スズキのカタナだったということです。

ただし、ノーマルで車の後ろについて
おとなしく走っている時には特段問題ありません。
純正ですから国内である程度のペースで走れるなら
良いと判断されたのかもしれません。

すごく飛ばしているというほどでなくても、
そこそこアクセルを開け続けたりする様な走り、
少し飛ばしているかなというぐらいから
現象がでます。

それぐらいの時までは乗り手側でペースなど
考えて乗ればいいことです。

ただし、エンジン本来の力を引き出したり、
チューニングが施された場合には役不足です。

こういう場合にスイングアームのみ変更と
言うことは少なく、ホイールやブレーキ、
ステムのオフセット変更など、
セットで交換することが多いと思われますが
きちんと弱点が解っていればこそ
効果が望めます。

カタナの場合まずは、フレーム側でなく
まずは回りの部品の変更が大きく効く
車種です。

もちろんやみくもに強ければ良いと
いうわけでもなく、それで重くなって
バネ下が重くなってしまったり、
スイングアームの縦方向が太くなりすぎ
リヤの車高が上がりすぎてしまったり
(カタナやZの様な2本サスの場合)
すればそれが改悪になり、乗りにくくなって
しまいます。

ものが重くなれば剛性を落とすのと同じことです。
逆に軽量ホイールや、軽量なブレーキなどを
使えば、車体の剛性をアップしたのと同じ意味です。

最初に少し書いたGPZ900Rは
後期モデルでいえばスイングアームの強度は
純正でも充分にあり、それが原因で
よれたりは簡単にはしません。

交換の必要がある場合は、高負荷の
特殊な場合と、見た目を変更したい時ぐらいで、
カタナの様な場合とは全く違います。

車体を製作する場合は、エンジンのパワーと
どれぐらいのスピードまでの安定を求めるのかで
作り方が変わってきます。

あまり高速域まで安定を求めすぎると
その辺を走っている時に面白さがなくなります。

その後のお客様の声にも、どのような
使い方をしているか書いていただいて
います。
結局はそれに合わせて製作することが
一番良く、回りの人と同じものを作るのではなく、
自分スペシャルが一番いいバイクになります。

自分の意見だけで古いバイクを
製作していると「こんなはずじゃなかった」
と乗りにくくなっていくことが多いのは、
そのバイクの弱点や良いところが
自分では意外に解っていないからなのです。

製作側とのコミュニケーションは大切です。
神様ではありませんので、月日と共に解っていくことも
多いと思います。

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