私のできることは?

私がビトーR&Dを辞めて独立してから
18年ほど経ちました。

人にあれこれ指図されるのは
もともと好きではありませんが、
そんな小さなことではなく、

自分でしたいことがあったから、
独立したのです。

何がしたかったのか。

それは一部分の作業のみを行ったり、
パーツを造ったりするのではなく、
それまでの経験と知識、技術を活かして
旧車バイク本来の楽しさを知っていただく
仕事がしたかったからです。

世の中なんと調子の悪い状態のままで
旧車バイクに乗っている人の多いことか!

旧車バイクの楽しさを知ってもらうには、
パーツを作ったり、一部分の整備作業のみを
するだけでは不十分です。

作ったパーツがたとえ完璧でも、自分が作業した
一部分の整備が良くてもダメです。

それ以外の箇所に悪い部分があれば、
旧車バイクは本来の走りをすることができず、
オーナーさんはその旧車バイク本来の楽しさ、
魅力を知ることができません。

場合によってはトラブル連発にもなる。

影響の大きい部分が悪ければ、
仮に一箇所だけでも、
そのバイクの価値がなくなってしまうほど、
走りも印象も悪くなってしまいます。

レベルの低いお店で聞かれる、
他のところで作業したものや、購入したものに
文句を言うのは簡単。

自分のところの作業は見せず、教えず、
答えをはぐらかす。
なのに自分以外の作業は、
さも全てを知っており、
自分はなんでもできるかのごとく否定する。

そんな口だけのことは誰にでもできます。
批判だけすればいい。

でも結局、それを聞いて、
そのオーナーさんは幸せになれるのか。
なにかの解決になるのか。

その店は結局ずっと調子の悪いまま、
オーナーさんにお金だけ使わせて、
解決策を出せずにいるのではないか。

ではオーナーさんはどうすれば
楽しい気持ちになれるのか。
本当に調子良く乗り続けることができるのか。

そこで私自身(当社)にできることは?

一言で言えば、

その旧車バイクの本当の実力を
発揮した魅力ある状態にしてから販売する。

言葉にすればこれだけのことです。

実際には予算、時間に限りがある中で、
これはかなり、相当に難しいことです。

仮に、
エンジンは完璧でもキャブレターが
調子悪ければダメ、
エンジンとキャブレターが良くても
点火系が悪ければダメ、

エンジンとキャブ、点火系が良くても
マフラーが悪ければ気持ちよく回らない。

エンジン関連が良くても、
そのほか電気周りがダメならお話にならない。
電気周りが悪いと出先で即走行不能になる。

車体周りが悪ければ、
車体が不安定になったり、乗りにくくなる。
エンジンが良くてもアクセルが開けられない。

実はアクセルを開けた時の、
加速の気持ちよさは車体側の出来の良さも、
大きく影響します。
車体がいいと加速も気持ちが良いのです。

また、購入時に消耗品が減ったままだったり、
寿命の終わりが近いものがあれば
購入後にすぐに交換しなくてはいけなくなり
予定外の出費がかさむし、時間もとられる。

そんなことでは、
旧車バイクを楽しむどころではありません。
むしろ修行です。

相当な時間働いてお金を頑張って作って、
なぜまた仕事のごとく耐え忍ばなくては
ならないのか。

これって変ではありませんか。

では、
そんなことにならないために、
繰り返しになりますが、
私のできることは?

それは一通り全部販売前に
やっておくしかありません。

仕上がりの状態に合わせた
適切なベース車両を入手し、
それを、必要な部分はすべて整備し販売する。
これしかありません。

特にベース車両の選定はとても難しいです。
これにより勝負の半分は決まっているような
ものです。

お客様には
上限予算、希望車種、希望の仕様、
それぞれありますが、
当社の場合、過去に当社で作業したものでないものを
ベース車両にする場合は、
エンジンは全部バラしてJB、あるいはコスワース
鍛造ピストンを使いライナーも打ち替えて
オーバーホール。

過去には予算の関係で鍛造ピストンを使わない
仕様も3台のみ販売していますが
やっぱり乗った時に全然違う。
トルク、パワー、走行距離が進んだ時の
それの落ち具合、
(鍛造ピストンものはヘタリにくい)
そして音。

別に鍛造ピストンもののバイクを
所有されている人には、
ノーマルを知るということで
あっても良いかと思いますが、
そうでない場合はすすめない。
ここにこそお金を使うべきです。

そしてセルモーターの点検、
内部オーバーホール、必要なら交換。
セルモーターリレーの点検、必要なら交換。

インシュレーター交換。
FCRキャブレターに交換。

マフラーは殆どの場合交換。
純正4本だし等でなければ、
当社製で製作する場合が多い。

点火系の点検。
必要ならイグニッションコイルの交換。
ポイントの場合、フルトラに変更。

車体は、
ステムベアリングの交換、
フロントフォークをばらしての整備、
必要ならインナーチューブ、スプリング
なども交換。

ブレーキは前後ともキャリパー、マスターシリンダー
ともに全てばらしての整備。
シール類の交換。必要なら内部ピストンの交換。
さらに必要な場合はキャリパー本体も、
マスターシリンダーも交換。
ブレーキホースは交換。

リヤサスのチェック。悪ければ交換。

ホイールベアリングの点検、必要なら交換。
スイングアームのベアリングの点検、必要なら交換。
タイヤ交換。必要ならチューブ、リムバンドも。

チェーン交換。
ハブダンパーの点検、必要なら交換。
前後スプロケットの交換。

スロットルケーブル、クラッチケーブルの交換。

電球の交換。

配線類の点検。必要ならメインハーネス含め交換。
バッテリー交換。充電系のチェック。悪ければ交換。

ハンドルスイッチの点検。必要なら交換。
メーターの点検。必要ならオーバーホール。

ボルト類の悪い部分の交換。

これが最低線です。
ここまでがっちり整備しなければ、
結局、得られるものは小さく、
旧車バイクを買うことが修行になってしまう。

かざるだけでなく、所有する喜びでけでなく、
「走る」
楽しさを現代の交通事情で得たいのであらば
ここまではするしかないと、私は考えます。
近道なし。

これにプラスで予算があるのなら、
レストア、さらにチューニングも可能。
夢は広がります。

大人なら、簡単にあきらめてはいけません。

本当に調子がよい旧車バイクは、
走っていくうちに、
余計なことがどんどん頭から消えていきます。

そして乗った後にすぐ、
「また乗りたい」
そう思えます。

 

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