ライナー打ちかえボーリングの重要性

当社の会員制、旧車バイクユーザー支援会内で、
個人業者様向けの会員がスタートしました。

個人でバイク店を営んでおられる方、
車屋さんを個人で営んでおられる方で、バイクも好きな方など、
良ければホームページ内、旧車バイクユーザー支援会の案内、
http://www.tasaki-tuning.com/member/index.html
を見てください。

古いバイクを愛する方に、
ぜひ知っていただきたいことがあります。

エンジンオーバーホール作業の時に
とても重要な作業になる、
シリンダーライナー打ちかえボーリングについてです。

この作業を軽く考え、
問題のあるシリンダー回りをそのままにして
ボーリングのみを行い、オーバーサイズの
ピストンを入れている方、
あるいはピストンリングのみ交換をして、
オーバーホールしたと言っている方、
店がとても多いようです。

これは情報としてライナー打ちかえボーリングについて
触れている物が少ない、
オーバーホール後に、適切に、大切に運転している
人はとても多いのですが、
古いものだから、すぐにへたる根性のない事が
あたり前だと思っており
長く調子の良いエンジンを知らない人が
多いのも関係あるでしょう。無関心に問題がある。

エンジンはきちんと作業すれば
長持ちするものです。

エンジンオーバーホールをしたのにもかかわらず、
すぐにヘたるのは、あなたの運転がまずいのではなく
シリンダーライナー回りの事を軽く考えた、
その作業自体に問題があるのかもしれません。

紹介している写真順に、
ライナーを抜いた状態のシリンダー、

圧入するシリンダーライナー、


ライナー打ちかえボーリングが
終わったシリンダーです。

本来、シリンダーとシリンダーライナーに
(以下ライナーと書きます)
ガタや隙間、あるいはそこまでいかなくても、
緩くなっていてもいけません。

また測定などを行う時はエンジンを分解した
状態ですから、エンジンが動いている状態、
暖まった状態ではありませんね。

古いバイクのシリンダーはアルミ、
ライナーは鉄系の材料ですから、
膨張率が違い、
エンジンが動いた状態、つまり暖まると
アルミ系の材料のシリンダーの方が大きく膨張し、
シリンダーと鉄系の材料のライナーとの間に隙間が
できやすくなります。

ですから、常温で仮に20度としましょう。
その状態でシリンダーとライナーの間に隙間があったり、
手で押した位でライナーが抜けてくるようでは、
エンジンが動き、暖まった状態になると
さらにシリンダーとライナーの間の隙間が
増えてしまいます。

これではダメなのです。

エンジンオーバーホールの際に測定する時は
分解している時ですから、だいたい先ほどの
20度くらいのものです。

その時にピストンとそれが入るライナーの
クリアランス(隙間)を測定し、
それが適切に加工されていたとしても、
走っている時には暖まっていますから
シリンダーとライナー間にも隙間ができてしまい、
ライナーをきちんと固定できなくなります。

こうなってはエンジンが動いている時にこそ、
本来適切に保たれていなくてはいけない
ピストン外径とそれが入るライナー内径の隙間、
いわゆるピストン、シリンダークリアランスも
狂ってしまいます。
こういう部分は100分の1mm単位の世界ですから、
小さなことが大きく響きます。

ですから暖まった状態でも、
きちんとシリンダーライナーが固定できるように
分解時の常温や冷えている状態では
シリンダーに対し、シリンダーライナーは
圧入の状態になっていないといけないのです。

どれぐらいのきつさで圧入されているかは
材料によって変わって当然ですから、
メーカーによっても変わります。

ですがエンジンを分解した時にライナーが
ゆるくて抜けてきたり動いているようでは
話になりません。

分解して点検している時にはシリンダーと
ライナーが軽くひっついた状態で問題ないように
思ってしまったり、
紹介している写真のZ1のシリンダーのように
一番下の部分にオイルの進入を防ぐゴムの
オーリングが取り付けられているものもあり、
これがライナーにひっつきライナーが
動かないように感じる時があります。

ところがそのオーリングを取り除くとスルスルと
ライナーが動くものがあるのです。

ではこのシリンダーと、シリンダーライナーが
圧入状態になっておらず、
実際にゆるかったり、ガタがあるときには
どういう現象が起きるのでしょう。

これには色々あるのですが、

エンジンが暖まった時に白煙が
マフラーからでる。

この白煙については、異常がなくても
始動時などでることがありますし、
暖まってから止まることもありますが、
ガタがあると完全に暖まっても
白煙がでる、あるいは少し吹かしたり、
走っている時も白煙がでてきたりします。

さらにそうなるとオイル消費が多い。
エンジンに力がない。
(オーバーホールしたのにもかかわらず
する前とあまり変わらないも含む)
プラグがかぶり気味になりやすい。
燃費が悪い。
マフラーから、でる音が悪い。
品のない少しドロドロ系の音になりやすいです。

単独でこのような症状がでたり
いくつも重なってでたりします。

あるいは一つは気付いても、その他のことには
気付いていない人もいます。
要はこのようにエンジンの調子が悪い時の
諸症状が多くみられます。

つまりオーバーホールしたはずなのに、
シリンダーとライナーが圧入状態に
なっておらず、
ひどい時にはゆるゆるの状態なら、
とてもオーバーホールを施したとは
言えない状態なのです。

特に高出力を目指したり、
負荷の大きい走りをする場合には
きっちりと圧入になっていなければ
なりません。

そこで、避けては通れないお金の話ですが、
シリンダーライナーを購入し、
さらにライナー打ちかえボーリングを依頼すれば、
店にも寄りますが、だいたい4気筒エンジンで
15万~20万ほどは見ておいた方が
良いと思います。(ピストン代は別)

この費用をどう考えるかです。
私は必要なエンジンの場合には
必ず行います。

20年ほど前は少しのボアアップであれば、
ライナーを打ちかえなくても大丈夫な、
古いバイクたちがまだ状態の良い時代もあったのですが、
ここ15年は全てのライナー打ちかえの必要な車種は、
すべて必ずライナー打ちかえボーリングを行っています。

そうでないと良い結果、つまり
長く調子の良いエンジンにならないからです。

1年でパワーが落ちる?
そんなことはレースなど高負荷な状態での使用なら
解りますが、一般的な使い方ならおかしいです。

つまり、この追加でかかる15~20万円を
ケチってやらないのであれば、
オーバーホールとは言えないのです。
そうなればただの分解組み立て。
ましてや、良いピストンを使ったり、
その他加工などを施しても、
ライナーまわりがガッタガタであれば、
本来の能力を発揮できません。

それを目先の費用を安く見せ、
注文に結びつけるために、
ライナーの打ちかえを行わない、
あるいはしなければいけない事を理解していない。
そういうことであれば、他に数十万円突っ込んだ
エンジンがすぐにダメになる。
あるいは最初からダメ。

それが費用を払い、時間も待った
オーナーさんの為になるでしょうか。

必要なエンジンでと書いたのは、
全てのエンジンにライナー打ちかえボーリングを
行う必要があるわけではないからです。

メーカーや車種により、
シリンダーとライナーの関係がそれほど
ゆるくなっていないものもあります。
要は使って問題がないのなら
無理して交換する必要はない。

当社で過去実際にライナーの交換が必要なかった
経験があるのはCB750F、GSF1200、
その他油冷モデルなどです。

お金も必要になるし、
ライナー打ちかえボーリングにも
技術、ノウハウが必要です。
つまり上手く行わなければ失敗すること
もありえるということです。
余計な加工はしない方が良い。

空冷モデルより水冷モデルのライナー打ちかえ
ボーリングの方がミスしやすく、
これは加工が終わった物を受け取り、
外観から見ただけでは良否の判断は難しく、
エンジンを組み上げ、車体に載せ、
走ってみてからダメだったいうこともあるのです。

当然そうなれば、もう一度ばらして
やり直しとなります。
幸い当社ではそういうことになったことはないのですが、
これは慣れた加工業者でも失敗する可能性があります。

ライナー打ちかえボーリングは、
日本のメーカーで大雑把に言えば、
カワサキZ系、J系などの空冷モデルは必ず行います。

スズキ、ホンダなどはライナーを
打ちかえる場合とそうでないものがあります。
ホンダは今のところ打ち換えないことが多いです。
これは使用するピストンが
大きくないことが多いのも理由の一つです。
大きく出力アップすると、マージンが少なく
他が壊れたりするもので。

カワサキでも空冷モデルでなく
水冷になったGPZ900Rではライナーを
打ち換えない場合があります。
これも使用するピストンサイズが関係あり、
小さいものでライナーの肉厚が充分に残り、
状態が良いのであればライナーを打ち換える必要はなく、

大きめのピストンを使用する場合はライナーが
薄くなってしまうので、必ずライナーを打ち換える
必要があります。

当社では空冷物でライナーの厚みの残りが約2mmは
あるようにしています。

また使用するライナーが手に入りやすいか
どうかも関係します。

カワサキZ系などは部品が豊富なので
良いのですが、メーカー、車種によっては
ライナーが売っておらず、一品モノで
作るしかない時もあります。

ですが一品モノで作ると高いのです。
一般に売られている物を買うときは良いものでも
高くありませんが、一品モノを製作すれば
全く金額が違い高いです。

こうなるとほとんどの方は
問題があってもライナー打ちかえは
できないでしょう。

ではどうするのが良いのか。
そういうライナーが入手しやすい金額で
手に入らない車種は、
程度の良いベース車両を購入するのが一番です。

そうすればライナーは問題なく再使用できる
でしょう。

本日の最後に写真をご紹介するのは、
以前もツーリング時の写真を送っていただいた
東北のN様のFX750です。

車両を購入していただいた時に
ライナー打ちかえボーリング込みの、
エンジンオーバーホールを行っています。

納車して6年ほど、5万数千キロ走っておられます。

先日、写真と主にメールをいただきました。

「9月末に秋田~奥日光~山形と走ってきました。
例のごとく、初日は雨でしたが(涙)、
その後は天気もよく楽しめました(^^)
もちろん、雨の中もトラブルなしで快適でした。

途中事故渋滞に巻き込まれ、
アイドリング時に油圧ランプが
ついたときには、
“これが油温があがったサインだ~”
ってドキドキしましたが(^^;)」

という内容です。

オイルプレッシャースイッチは
当社製の対策品をつけていただいていますので、
油温が100度を超えてくると
アイドリング時にランプが点灯します。
その間もオイルは流れるので問題ありません。

きちんとエンジンのオーバーホールや、
車体の整備を行えばそれなりに費用はかかります。

ですが、
当たり前にすべき作業をズルをせずに行えば、
古いバイクはそれにキチンを答えてくれ、
一生の相棒になります。
いつも言っていることではありますが。

40歳でエンジンのエンジンオーバーホールを
行い、65歳まで普通に乗れたとして、
日割にしたらいくらになりますか?

早くした方が楽しめる時間が増え、
日割した費用は安くなる。
通販の文句みたいですが。(笑)

 

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