キャブレターのジェットニードル

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以前紹介しました、
GPZ900R(赤黒)
カワサキZ1000リミテッド整備仕様
(外観はZ1000)は売約済みとなりました。
お問い合わせいただいた皆様
ありがとうございました。

今回は社外品キャブレターの
ジェットニードル(写真)の話を中心に書きます。

キャブレターを純正の物から交換した際に
特に重要なセッティングパーツが
ジェットニードルです。
もちろんその他のパーツも大切なのは
言うまでもありませんが、
私達が一般道で社外品キャブレターを使う場合
このパーツのセッティングがあっていないと
エンジン本来の力がでずに面白くないバイクに
なります。

そんなことは知っているよ!
という方も多くいるとは思うのですが、
知らない方もいると思うので。

サーキット走行や、峠道で同じ所を
グルグル走るなど、高負荷で走る時と、
私や多くのバイク乗りの方に当てはまる、
一般道を走る、その中で時々自分なりの
速いペースで走るという方では、
良く使うアクセル開度が
違ってきて当たり前です。

ですので、
店やバイクの持ち主によりここが大事
という部分が違ってきて当たり前ですが、
今回は私達が一般道で走るときに
大切な部分のキャブレターセッティングに
ついてです。

私達が750cc以上の排気量のバイクで
一般道を走っている時、
アクセルの開度は開け始めの16分の1くらいの
開度から2分の1くらいを良く使います。
大きく開け気味で走っているつもりでも
極端なハイスロを使っていない場合は
全開までは、なかなかいかず
4分の3ぐらいまでです。

いわゆるキャブレターセッティングを店に
依頼する時は、この特に良く使う部分の
開け始め16分の1から2分の1くらいまでを
実際に走って特にきちんと確認してくれているかが
特に大切だと思います。
その後にその他の部分
2分の1から全開までを調整する。

そこで開け始めから2分の1までの
特に重要なのが写真で紹介している
キャブレターのセッティングパーツで
ジェットニードルです。

このパーツは途中までがストレート形状で、
途中から先端に向けて径が細くなる
テーパー形状になっています。

ストレートの部分の太さを変更することで、
太くなるほどセッティングは薄くなります。
またテーパー部分の角度も変更できます。
角度が急になるほど濃くなります。
この角度は4分の1くらいから
全開まで影響します。

カワサキZ系や、J系、GPZ900R
スズキのカタナ、GSなど4気筒に
使うジェットニードルのテーパーの角度は
排気量が違ったり、OH仕様、チューニング
仕様でもだいたい同じような角度の物を
使うことになります。
エンジン、マフラーがまともであれば
2種類ほどあれば充分だと思いますので、
迷うほどではありません。

ストレート部分の先の方にはクリップが
はめられるように溝が切られており、
そのクリップをはめる段数によっても
セッティングを変えられます。

その中で特に重要なのがストレート部分の
径です。

私達が一般道で走る際には、
このジェットニードルのストレート径と
スロージェットの組み合わせ、
そしてそれに伴うエアスクリューの
開度調整をまずきちんと行うべきです。

私が素人時代に自分のZ1000MK2に
乗っていた時、走れることは走れていたのですが
乗った感覚としてエンジン本来の力が
でていない気がしていました。

散々時間をかけ色々試してみましたが、
今ひとつ思うようなものにはなりません。
簡単に言えば力がないのです。
また特定の回転で引っ掛かる時もあります。
それにアイドリングにも力強さが感じられません。

それは当り前で、純正キャブは色々調整して
乗るようにはなっておらず、
エンジンが純正のままで調子が良く、
その他の箇所、例えばマフラーなども変更されていない
状態で走ることを前提に作られているからです。
私のZ1000MK2は最初純正キャブで、
マフラーはカーカーのスモールバッフルが
ついていました。

今から考えると私のMK2はほぼノーマル状態で、
壊れてはいないもののエンジンが消耗し
キャブレター自体も消耗品(程度は良かった)
ですから走れるが本来の調子ではない、
という状態になっていました。

約25年前の当時、私は整備士でも
車のディーラー勤めで
古いバイクは全くの専門外の素人だったため、
最初調子がいまいちでもキャブを換えるという
発想はなく、純正キャブをいじくり
回していました。

色々試した揚句、純正キャブレターに換えて、
たまたま友人がとても程度の良い
ケイヒンCR29を持っており、
それを売ってもらい使うことにしました。

早速取り付けてみましたが
これがどうにも上手くいかない。
走るとすぐにプラグがかぶってしまいます。

あとで解ったことですが、
要はそのCRに最初組み込まれていた
ジェットニードルがやたらと濃い
セッティングの物だったのです。

これが少し濃いぐらいだったら
すぐに正解にたどり着けたと思うのですが、
はるかに濃いものでした。

なんせ素人ですから、ジェットニードルを
換えるという発想がなく、スロージェットなど
ジェット類をやたらと買いこみ
とにかく試していきました。

今の様にネットで部品も買えませんでしたし、
情報も得られない状態でした。
何をするにも時間がかかります。

結局エンジンを始動した時には良いけど
しばらく走るとダメになる、
どっか調子悪いと言うことを繰り返し
かなりの時間を使った挙句、
ジェットニードルを変えて見ようと
考えました。

当時お付き合いのあったバイク屋さんに注文し
ジェットニードルを何種類も買いました。
その時の部品が私が後に働くことになる
ビトーR&Dで売られていたジェットニードルで、
私の買ったCRについていたニードルとは
全く違う品番でした。

すぐには結果がでず、
かなりの時間を費やしましたが、
結果無事セッティングはでき、
何の問題もなく走るようなりました。

トルク感、アクセルを開けた時のツキが
全く最初のころと違います。
これこそがキャブレターを交換する
理由だとはっきり確信しました。
乗っていてとても楽しいのです。

結局この時の遠回りの経験が、
今、一般道で走るためのセッティングを
短い時間でだせる事につながっています。
無駄な空ぶかしをやたら繰り返す
必要はありません。

要はすごくセッティングがずれたところから
スタートしたため、濃い時、薄い時、
回転が引っ掛かる時、ボコつく時、
息つきする時、回転落ちが悪い、
エンストする時など、
いろんな経験ができたため、
どのような状態の時にどうセッティング
すればよいかが解ったわけです。

シャシーダイナモ等も進化して
色々できる時代になり、
用途により使うと良いと思いますが、
まずは走って合わせ、さらにデータを
とったりしたい方や、全開域など、
その辺を走って合わせられない、
高出力なバイクで高回転域で速度が
ですぎて走って合わせられない時に
使えばいいのではないでしょうか。

用途によって使い分ければ良く、
どれがダメでどれが良いというものでは
ありません。
目的によって使い分けます。

このストレート径の重要さが
解っている方、実際に部品交換を
濃いものと薄い物を経験した方なら
これから私の書くことが良く解ると思うのですが、
このジェットニードルのストレート径、
次にテーパー部分の角度が一つ違うと
走りが全く違います。

本来使うべきものより一つ薄いと
とたんにトルク感がなくなります。
アクセルを開けた時にグッと前に出る感じが
弱くなってしまうのです。

私はそれだけで乗る気がなくなって
しまいます。面白くないからです。
ちなみにメインジェットは5番ぐらい
ずれていたところで何の問題もありません。
むしろこちらは少し薄めで納品しています。
その方が走る状況、環境が違っても
無難に走るからです。

つまりストレート径が合っていないと
頻繁に使うアイドリングから
2分の1までで加速があきらかに鈍くなり
いわゆるツキと言われる反応も悪くなります。

そうすると加速にメリハリがなくなり、
今度は車体も反応が悪く感じたり
曲がりにくくなってしまいます。
バイクはアクセルを手で操作する
乗り物で、そこがきちんと反応するかどうかで
大きく乗った時の印象が変わります。
それほど影響が大きい部分です。

FCRキャブレターではそれぞれのジェット類
スロージェット、ジェットニードル、
メインジェットの役割分担がはっきりしており
調整がしやすく、また加速時に加速ポンプから
燃料を追加する様な構造になっているため
アクセルが一定の時は余計な燃料が
でないためかぶりにくいです。

ですから少々セッティングがずれていても
かぶることがない。
そのためセッティングがずれていることに
気付かないまま走っている方も多くいます。
それでもかぶらせてしまう場合は
何か間違っているところがあるはずです。

ただし4バルブ車、GPZ900Rやカタナ1100
など4バルブモデルで長くエンジンを
かけていなかった場合はなかなかエンジンが
かからない時があり、かぶらせて
しまうことがあります。

私もビトーR&Dにいた時に長く動かして
いなかったデモカーの4バルブ車のエンジンを
取材準備のため始動しようとして
なかなかかからず、かぶらせたことがあります。

エンジンがかからないからアクセルを
あおったりして加速ポンプのノズルから
燃料を出すのでそれを繰り返すと
そうなってしまうのです。

話がずれました。

エンジンがノーマルのままでも、
古いバイクでオーバーホールなど
していなければ、調子がそれぞれ違って
当たり前ですし、特にキャブの口径と
マフラーの影響は大きいです。

現在当社も予定が詰まっているため、
ZZ-R以降の年式のバイクは
キャブセッティングを行っていませんが、
GPZ900Rは排気量がノーマルの時は
マフラーの影響がとても大きいバイクです。
マフラーが合わないとトルクはでない、
セッティングパーツも普段使わないようなものを
使うことになったりします。
それでも気持ち良くは走らず、
ぼやけた印象になります。

それに対してCRキャブレターは
FCRに比べ、特にスロージェットと
ジェットニードルのストレート径の
役割が重なっている部分があり、
そこの組み合わせをどうするかが
一番のポイントです。

簡単に言えばFCRよりセッティングが難しい。
またジェットニードルの段数も
きちんと合わせる必要があります。

私が素人時代にセッティングが
なかなか出せなかったのは
そこが理由だと思います。
普通のバイク屋さんでもFCRでは走るようには
できるけれど、CRはできないという時は
その部分が大きいと思います。
繰り返しますが、ただ走るというのと
セッティングが合っているというのは
大きく内容が違います。

また、CRは加速ポンプがついていないため、
そこの部分のセッティングが薄いと
トルク感がなくなり開け始めの印象が
ぼやけ、メリハリがなく乗っていても
全く楽しくないバイクになります。

かといってセッティングが濃いと
エンジン始動時は良くても
走ると今度はプラグがかぶってしまう事が
あります。

ですのでやや濃い目を狙って
なおかつ、かぶらないように調整するのが
CRキャブレターのセッティングの肝で
難しいところです。
簡単に薄めにしてごまかしては
いけません。
それはセッティングをしたことには
なりません。

このときに間違ったジェットニードルを
選択し、なおかつクリップの段数を
極端に薄め、上から一段目にしてある物を
たまに見ます。
これは間違ったセッティングです。
まずそのような状態ではアクセルを開けた時に
トルク感がありません。
また場合によっては少し大きめに開けた時に
あっさりと息つきをする時もあります。

このような状態であっても
セッティング済みなどという店がありますが、
それは違います。

古いバイクは2バルブエンジンが多く、
またニンジャの様な4バルブもの物でも
(マフラーがまともであれば)
低回転から充分にトルクがあるのが
本来の状態です。

どちらにしてもキャブセッティングが薄い物は
セッティングをしたうちに入りません。
高いお金を出してキャブを買った意味が
ない状態です。

もし自分でCRキャブレターで
自分でセッティングに挑戦したいのなら、
ジェットニードルと、スロージェットを
数種類用意してから、はじめて見ましょう。

なお、ビトー製のキャブレターであれば
納品時のセッティングを基準に
そこから詰めていけば良いと思います。

とりあえず部品を濃いものと薄いものと
換えてみて、良いと思う方をチョイス
すればよいだけですので、
私の様にセッティングその物を
マスターする目的ではなく、
自分のバイクを良くするだけであれば
何も難しいことではないと思います。
基準が大切です。

当社で納品するバイクもセッティングを
してあるので、もし多少ずれてきても
微調整だけで大丈夫です。

セッティングは走っているうちに
エンジン内にカーボンが溜まったり
あたりも変わりますので、
少しずれてきて当たり前です。
また季節や、走る場所が変わっても
キャブ自身が自動で調整などしてくれませんから
多少調整する必要がでてくる時があります。

その時も最初に一度きちんとセッティング
されていれば微調整で済み
何も難しくありません。
もし人生の中で一度も純正キャブ以外の物を
試した経験がないのなら、
これはバイクという乗り物の
大きな楽しみの一つ、
それも重要な部分を捨てているようなものです。

マフラーがノーマルでも効果があります。
是非チャレンジしてみてください。

調子の悪い純正キャブ、
セッティングが合っていない社外品
キャブレターはエンジンに大きく負担が
かかります。
上手くセッティングすれば
エンジンの負担も減ります。

ただし、どの場合でもキャブの口径が
大きすぎる場合はセッティングが
出せない時があります。

思ったよりもジェットニードルの方が
長くなってしまったので
今回の最後にもう一つ簡単に。

古いバイクの魅力については
そのスタイルやエンジンについて
書かれていることがほとんどなのですが、
私はフレームにも乗っていて楽しい理由が
あると思っています。

今となっては鉄パイプのフレームは、
エンジンを降ろし、単品にすると弱々しく、
とても頼りなく見えます。

車体剛性という面から見れば
数値で測れば、現代の物と比べれば
著しく低いでしょう。

ですが車体剛性は高ければ操縦性が
良くなると言えるものではなく、
このフレームこそが新しいバイクとは
違った、乗った時の楽しさや、親しみやすさに
つながっていると思います。
いまだにメーカーも色々と
試行錯誤しているようですね。

私もいろいろと経験を重ね
解ってきたことは、部分的にとても強い、
とても弱い部分を作らないことが大切、
勘所だと思っています。

バイクの場合はステム、
フロントフォーク、スイングアームなども
フレームの一部の様なもので
それぞれ強さの兼ね合いをみながら
部品の選択をする方が良いのは
言うまでもありません。

例えば補強済みのフレームに
太さ41mmのフロントフォーク、
38mmのフロントフォークをそれぞれ
組み付けた時、
(剛性も性能も単品で言えば41mmが上)
またスイングアームも
目の字タイプの断面を持つタイプの材料の物と
そうでないタイプの材料の物で
それぞれ製作し、実際にそれぞれ組み付け
走った時、
(当然断面が目の字タイプの方が剛性は高い)
一般道を走るのであれば
38mmフォーク、目の字タイプでないスイングアームの
方が乗っていて扱いやすく、私ぐらいの腕であれば
速く走れたりします。

勝つためのレース仕様、
公道を走るバイクは目的が違います。
実際を知らない偽の情報で
物事を判断すると高いお金を払っただけで
結果を得られなくなります。
経験、ノウハウはとても大切です。

今の色々の決まりごと、縛りの中で
生まれた新しいバイク、
そういう縛りが少なかった時代に
今よりも劣る技術で作られているが
それに加え、
そのバイクが生まれてから現代に
至るまでの時間、
その時間の中で得られた経験、
知恵やノウハウを存分に使って
仕上げた古いバイク。

一度きちんと仕上げられた古いバイクを
所有してみてください。
機械好きならその面白さは存分に
感じてもらえると思います。
いわゆる一生ものです。

今、すでに古いバイクを所有しているのなら
是非大切にしていただきたいと思います。
代わりになる物はありません。
今後販売されることのない
唯一のものですので。

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