最近はネットを見れば右も左もフルレストア車だ。
こういっては何ですが、到底そのレベルに達していないものばかりです。
雑にばらして色塗って組み上げたらフルレストア車とでも思っているかの様。
たくさん写真が掲載されているわけではなく数枚の写真が紹介されているだけなのに、その写真を見ただけでこれがフルレストア？なんてものばかりです。
そして根拠のない能書きがダラダラ。さもこのバイクはすごい、的な、ことが書かれている。
錆びている部分があったり、色もきちんと塗られていない、ボルトも配線もデタラメ。根っこからきちんと作業していない安レストア。部品も良いもの選んで使う気など全くない社外品のセット買い。それでは走りも見た目もダメに決まっているでしょう。手間のかかる部分はすべて省いてあるのが一見しただけで（写真をパッと見ただけで）解ってしまうわけです。
やっぱりフルレストア車なんてのを買う時は買う側の皆様も、それなりにしっかりとした目が持てるように勉強していただくしかありません。
写真のぱっと見でひどいと解るほどのレベルは、現物を見ればもっとひどいです。もちろんそんなものは乗ったらもっとひどいし、所有して長く乗れば乗るほどひどい。整備もきちんとしたレストアもせずに機械は自分で良くなっていったりはしないですから。
こんなことが書けるのも読む人数が少ないブログだからこそなのですが。好き勝手に書かせてもらってます。
話は少し変わって、時々書いている「旧車バイクの望むこと」でヘッドのシートカットや、シリンダーのボーリングについて書いてます。
次回はこれまた重要なピストンの事でも書こうかと考えているのですが、残念ながらこれらのことがきちんとできていても、結果としてそれらだけでまともなオーバーホールエンジンになるかと言えば、そうはなってくれない。
これは実際に私自身が経験したことが何度かあります。
以前にどこかで書いたような気もしますが、昔あるお客さんから、ヘッドとシリンダー、ピストン回り、そしてエンジン外観のレストアのみ、仕事の依頼を受けました。ヘッド回りの作業は私自身がすべて行って（ポート、燃焼室、バルブシートカットすり合わせなど）そして、ピストンはコスワース製を使って、ボーリングもいつも当社でお願しているところに依頼、クリアランスもOK。
そしてそのヘッドとシリンダー回りを使ってそのお客さんがエンジンを組みたてました。ヘッドとピストン以外の内部消耗部品の、何を交換するという判断と、組付けはそのお客さんが行うことになるわけです。
マフラーとキャブは当社のものでキャブセッティングは私が行いました。となると、内部の部品の何を交換したかという部分と組付けのみお客さん自身が行ったことになります。
で、どうなったかと言えば、はっきり言っていまいちでした。オーバーホール済みエンジンにある、しゃっきりとした感じがなく、くたびれた感じが組みたてた直後からあったわけです。
確かに、分解前の状態よりはいいわけです。それでも当社で同じエンジンをオーバーホールした感じには程遠い感じでした。
そしてその持ち主の方も言っていたのが「すべてやってもらえば良かった」
この言葉がすべてを物語っています。もう費用の面からいまさら後戻りはできません。
私自身の作業経験でも、過去にヘッドの作業、一般的に腰上オーバーホールというご依頼を一度だけ受け、作業したことがあります。
腰下はそのまま、シリンダー回りはピストンを交換したりなどはせずに、ピストンリングなどを交換したりする程度でピストンのカーボンを落とし、ヘッド回りの作業はフルオーバーホールと同じことをして組み上げました。
この結果もばらす前よりは良い。ですが全くパッとしませんでした。これ以後腰上のみのオーバーホール作業はすべて断っています。
たいした結果が出ないのにお金だけもらっても楽しくもなんともない。
誤解を生むといけないので補足しますが、一度きちんとフルオーバーホールして、あまり距離を走っていない時に、メンテナンスとして腰上のみ作業した。これはいいわけです。
そうではなく過去にきちんとフルオーバーホールなどが行われた形跡がなく、予算が足りないから腰上のみオーバーホールする、なんとなくやってみたいから腰上のみ作業してみる。こういうのがたいした意味がないわけです。
最初に書いた良いピストンを使い、ボーリングも良い。ヘッドもきちんとしてある。それでも結果が出なかったのは、結局必要な消耗品を換えず（旧車バイクのエンジンの何を交換すべきかが解らない）組付けの際のコツ、経験、トルク管理、こういう物が不十分だったわけです。ちなみにそのお客様は車の整備の仕事をしている方でしかも優秀。素人ではないわけです。
結局レストアも、エンジンオーバーホールもどこかが足りていなければ良い結果は出ない。今回はそういう話でした。
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