ピストン

日記

私たちがエンジンをオーバーホールする時には、
与えられた条件で作業するしかありません。

ピストンは組んでしまえば
見えなくなってしまう部品ですが、
その中で10年20年とできるだけ長い間調子が良く、
トルクとパワーの落ち幅を小さくするには
実際の経験から品質の良いピストンを使うことが
特に有効です。



当社でオーバーホールする、Zでも、ローソン系でも、
そしてニンジャ、カタナ、CBでも、明らかに年数が
経ったり、距離を走った時のへたり具合が
大きく違います。
良いピストンを正しくシリンダーボーリングを
して正しく組付ければとにかく間違いなく長持ち。

エンジンの燃焼室側は、オーバーホールでも基本、
整備のみで形状を変えるわけではなく
そのまま使用することになります。

ですが同じく写真で紹介している
燃焼室の半分を受け持つピストンヘッドの部分は、
使用するピストンを変えれば大きく変更することが
できるわけです。

同じ排気量であっても、ピストンヘッド部分の
形状で実際に運転したときの
印象が大きく異なってきます。

ここの形が変われば圧縮比が大きく変わります。
圧縮比が低すぎれば効率が悪く眠くて走らない
エンジンとなってしまいます。

またS/V比(燃焼室の面積と体積の比)も変わります。
S/V比は小さい方が効率が良くロスが少なくなります。

その他いろんな要素が絡んできますが、
圧縮比は高すぎれば問題がいろいろ起きますから
単に高ければ良いというわけにはいきませんが、
この両方ができるだけ良い方が理想です。

ピストンヘッドの形状は好き勝手に出来るわけではなく
エンジンの燃焼室形状との兼ね合いで決まりますし、
ピストンメーカーのノウハウを使ってもらって
私たちが一般で使用する、
いろんな幅広い使用条件でも壊れず、
なるべくよく走り、耐久性も高いよう
形状を作ってもらうしかありません。

旧車の純正で使用されている鋳造ピストンは、
トラブルの数は多くはないのですが、
どうしても巣ができてしまう欠陥を完全に取り除く
事ができず、そのために肉を厚めにしておく
必要があり、当然重めになります。

ちなみに以前から言われているように
運転中のピストン頭部中央付近で
温度は300度くらいになるそうですが、
温度が高い時の強度のみ見れば鋳造でも
充分だそうです。

話がそれましたが、鋳造品は巣の
不良品が出る可能性があるから、
あらかじめ多めにぜい肉を付ける必要が
あるわけです。

ピストンは高温高圧に耐えなければいけないのに、
往復運動を強烈なGにさらされながらしなければ
いけない為、強度を保ちつつ1グラムでも
軽いほうが良い。


そこで鍛造ピストンですが、巣ができるような
欠陥はおきません。
ですので、余計なぜい肉をあらかじめある程度
削り落とすことができます。

そこで実際にはどれぐらい軽いのかを
ざっくりとには実際に測った数値が
残っていたので紹介します。

空冷Z系最強のZ1100R用純正ピストン、
外径72.5mmの重さが266グラム。

これはピストンリングはついた状態で
ピストンピンは含まれていません。

次に当社で使用している73mm
Z用鍛造ピストン。
0.5mm大きいサイズですが、ヘッド側の
(燃焼室側)の形状はZ1100R純正と似た形状で
比較するのに適切だと思い選びました。

頭部が写真のように大きく盛り上がっている
タイプです。
圧縮比を高くしようとすると、旧車の場合
どうしてもこういう形状になります。

こちらのピストンの方が外径は
0.5mm大きいのですが
約246グラム。したがって大雑把でも
20グラムほど軽いわけです。

他に持っているデータで、
Z900純正ピストン、同じくリングは
ついており、ピンはない状態。
外径66mmで約220グラム。

Z1000、外径70mmで228グラム。

外径はそれほど違わないのに
Z1100Rよりはずいぶんと軽いですね。

Z1系は圧縮比が低く、出力も低いので
同条件で比べてはいけませんが、
Z1100Rは高出力になって形状が変わり、
ある程度必要な強度を見込んだら
重くなってこうなってしまったという感じ
でしょうか。

逆に言えばZ900~Z1000は圧縮比が
低いですがそれでも充分な強度があったとは
言えないのだと思います。
壊れたりはしないのですが、へたるのは
はやい。
Z1100Rの純正ピストンはもっとへたるのが
早いですが。

ちなみに当社で使う鍛造ピストン75mmで
同条件(リング付き、ピンなし)で
269グラムでした。
これで1100R純正ぐらいですね。

もちろん本来ならピストンピンも含んだ
重さにしなければならないのですが、
手元にあった過去の実測データを
使っているのでご容赦を。

もう一枚鍛造ピストン裏側の写真も
紹介していますが見ての通りかなり肉があり、
それでもこの重さですから、
かなり耐久性を見込んだものになっています。

旧車にはこういう昔ながらのオーソドックスな
形状のフルスカート式が良いと思います。
問題が起きないので。


今回は簡単に重さについてのみ書きましたが
ピストンについてはまた書きたいと思います。
単純にOH時に変えればよいというものとは違う
極めて重要なパーツです。

エンジンオーバーホール一式?
そりゃあ良い部品を使わず、手間もかけずなら
納期も早く、金額も安いですわな。
当然良い結果も出ませんけど。

フルレストア車?そのうちエンジン作業代は
いくら?エンジンとキャブとオイルクーラーぐらいで
200万円ぐらいにはすぐになりますよね。
で、フルレストア車300万で売られていたら
計算が合わなくなります。車体無料?
車体部品代無料?人の手間賃無料?
そんなことはありません。

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