修理とオーバーホールは違います

日記

エンジンオーバーホールのお問い合わせで感じるのが、
修理、オーバーホールの違いに気づいていない人が
多いということです。

ここまでが修理、ここからがオーバーホール、
という線引きが解りにくいからです。

はっきり書きますが、これが解っていないと損をします。

よく少し前なら80万円でエンジンオーバーホールした、
などと言う話を良く聞いていましたが、
私に言わせると80万円かけて修理をした、
そういう感じです。

あくまで修理なので、分解前と比べても
たいして気持ち良くは走ってくれない。
あるいは80万かけたので、
気持ちよく走ってくれていると
信じたい?という感じ。


例えばエンジンの1つの部分に
オイル漏れしている箇所があり、
分解して歪んでいる部分を修正面研し、
ガスケットを変え、組付ければオイル漏れが
治ります。

これはエンジンの一つの部分を修理したという事で
誰もが解りやすいですね。

それとは違い、
エンジンのあちこちからオイル漏れをしており
全てばらして修理するしかないという事で、
一度エンジンをすべて分解して組み立てると
これがオーバーホールと思っている人、
言ってしまっている人が多くいます。

補足しますと、エンジンを全てばらして
オイル漏れを治すときには、
せっかくばらしたのだからついでに
ポートや燃焼室のカーボンをある程度
落としたり、ピストンリングやクラッチ換えたり
します。普通の流れですね。

そうすると、こういうことが一般には
オーバーホールだと言われますよね。

ですが私はこういうのはオーバーホールだとは
思いません。費用をかけた大掛かりな分解修理です。

あくまで分解したついでにある程度作業しているだけ、
エンジンオーバーホールとして必要な作業を
したうちには入らないのです。

点数がついて、70点以上オーバーホールなら
解りやすいのですが、そういう物が一切ないので
解りにくいですよね。

まず、修理とオーバーホールでは考え方違います。

逆に考え、エンジンオーバーホールは結果から
いかないとダメなんですね。

エンジンオーバーホールしたエンジンとは、
エンジンのトルクも出力も、外からの見た目も
ある程度新車時に近い状態に戻っているか、
元の状態よりも良い
ことをいうわけです。

この結果が出ているか否かで判断すべきです。

そのためにはまず本来エンジンオーバーホールをした
その車種が、どれ位、どのように走るか知っておく
必要がある。

遅ぎたり、ガサゴソ回転のフィーリングが
悪い場合、それはオーバーホールエンジンではない。

(逆に排気量や、組み合わせた部品の内容より
速すぎるエンジンの場合は寿命が短いことも
知っておかねばならない)

その新車時に近いという結果を出すためには、
エンジン分解したときに必要と思われる作業を
全て準備して行わなければなりません。
ついでにいくつかする程度はただの修理です。


古いバイクや車のエンジンオーバーホール
をする場合、”新車時に近い”
それを達成するのがとても難しい。

だから、新しいバイクに比べ修理と
オーバーホールの違いがあいまいになる。

大きく4点ほど上げると、

一つは技術面、次は部品の面。
そして予算と時間。

まず技術。
古いバイクのエンジンオーバーホールは
新しいバイクのように、部品を適切に換え、
きちんと組むことができても
本来の状態に戻るわけではありません。

壊れている部分を修理したり、
壊れてはいないものの元々設計が悪かったり
生産の技術が低くて物にばらつきがあったりが
当たり前なので、その修正、加工が多く
必要になります。

優秀な先輩がいれば教えを請い、
ある程度土台が出来上がったなら
自身で経験を積みながら学んでいく。

まず、この技術、良い経験を積むことが
本当に難しい。

一機分解して組んだからオーバーホールのできる
優秀な整備士とは呼ばず、
一機分解組んだことのある整備士です。
大したことではない。

それでも仕事でなく趣味であればすごいと思います。

次に部品、
どんなに技術があっても必要な部品がすでに
欠品で代替品もない時には新車時に近いと
いう事ができなくなる。

この必要な部品を可能なだけそろえることが
できるという事も優れた整備士の証です。

これには日頃から人脈、良い信頼関係がないと
貴重な部品は分けてもらえなかったりする。
また他車種のものを使用できる場合もあるので
これまた知識と経験がいる。

勘違いが多いのですが、良い部品は作れても
良いエンジンが作れるとは限らない。
これも難しい所。

技術と部品があっても、予算が足りなければ
部品も買えないし、工賃も払えなくなる。
最低限、必要な予算がなければオーバーホールは
出来ないので、ただの修理になる。

そして時間。エンジンオーバーホール=
乗れない期間になってしまうので
早く納品してほしいのは私も同じ。

ただ、どんなに急ぐといっても
落ち着いて丁寧に作業する必要があります。
「早くして早く!」と横からせっつかれ、
連絡ばかり来ても仕事になりません。

また当社は少ないですが、
整備士が頑張って早く作業したとしても
ボーリングや再メッキなど外注の作業もあり、
必ず待ちの時間が出てくる。

良い加工屋さんは大体予定が詰まっているので、
これも頼んですぐには出来上がってはこない。

それにプラス、まともな店、人ほど
実際にはエンジンオーバーホールを
一機だけ受注しているという事はほとんど
ありません。

数機重なったり、車体のレストアなどの
大掛かりな作業も重なると
その一機だけ作業するというわけにはいかず
完成までの時間が必要になってしまう。

時間も絶対に必要なのです。

ではここでエンジンオーバーホールと修理の
違いが判らず損をしているとは何なのか。

80万円で4気筒エンジンの全体的なオイル漏れを
治す修理を依頼した。

エンジンを全分解したついでに
整備屋さんが良い人で、
エンジン内のカーボンを軽く落として
バルブのすり合わせもしてくれ、
交換の必要がある、寿命が来た部品を
換えてくれた。

これは修理依頼なので問題なし。
金額に納得できて、きちんと
オイル漏れが治れば良し。

では、そうではなく
4気筒エンジンオーバーホールを80万で依頼。
これは修理ではないので予算面でそもそも無理。

繰り返しますが、本来オーバーホールは
エンジンのトルクも出力も、外からの見た目も
ある程度新車時に近い状態に戻っているか、
元の状態よりも良いことをいうわけです。

もし今80万円で4気筒の
エンジンオーバーホールを依頼したならば、
新車時に近い状態に近づけるために必要な
部品を換えることができず、
加工しなければいけない部分を作業せず、
エンジン外観もそれなりの仕上げになる。

ですが、依頼した側(お客様は)きちんと
オーバーホールができると思っている。

つまり期待したものは得られていない。
せっかく払った80万円ものお金が
生きていない捨て金になってしまっています。

では80万円で4気筒のエンジンオーバーホールは
無理なのか。

可能な場合もあります。
それは元々のエンジンの状態が良い時です。

交換の部品が少なく、加工や修理、
調整のする箇所が少なくても良い時。
エンジンの外観も部分的な再バフ程度でよい
綺麗な時。

どうでしょうか。古いバイクでエンジンの
オーバーホールするタイミングでそんな
状態の良いものがありますか?
だいたい調子が悪く、外観も傷んでいます。

レース車両で、
一度きちんとチューニング、
オーバーホールしたエンジンで、
一度本番を走ってメンテナンスで分解したときなども
費用は少なくて済みます。

これは少しでもタイムを縮めるための
オーバーホールですね。


そしてもう一つ、残念ながら部品がない時。

これは気持ち的にはオーバーホール
なのですが、部品がなければ交換すべき
部品を換えられず、ある部品だけを使い、
再使用する部品が多いという事になります。

こうなればこれはオーバーホールではなく
分解してのメンテナンス、あるいは修理ですね。

当社であれば部品がない物のエンジン作業は、
調べたうえで、修理、メンテナンス、という形の
受注になります。

その場合は一般的なエンジンオーバーホールより
金額は安くなります。

オーバーホールは結果から考える。
これ重要です。


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