排気系と空冷エンジン

常々マフラーには抜けの良いものを
使用するほうが良いと言っています。

これからの夏場に向けて、知っておくと良い
内容ですから、少し理屈っぽいところも
ありますが最後まで読んでいただければと
思います。

もちろんマフラーは
単純に抜けだけを考えると排気音も
大きくなってしまうので、工夫が必要に
なります。

また測定した音と、
実際に乗った時に感じる音の大きさは
必ずしも比例せず、
その音質の違いによってもうるさく感じたり、
逆に静かに感じたりします。

出来れば抜けが良くて、良い音に聞こえて
余りうるさくないもの、かつ軽量、
見た目が好みであれば最高のマフラーと
いえます。

自分でも作りますが、
これはなかなか難しいことですね。

このブログを書いている今は、
5月の終盤になってきています。
同じ5月でも、空冷エンジンが主流だった
1970年代~80年代に比べ、
あきらかに気温が高くなっています。

暑い季節は空冷エンジンにとっては
皆さんが思っている以上に地獄で、
空冷エンジンが設計された時代よりも
現代の方が1年のうち長く地獄の時期がある、
そういうことですね。

暑い時はできるだけ涼しい時間帯に
乗ってあげましょう。

その中で空冷エンジンをさらに苦しめているのが
抜けの悪いマフラーです。

何でと思われる方もいるかと思いますので
その理由を書きます。

バイクで走っている時、
エンジン内の混合気が(キャブレターに
よってガソリンと空気が混ざったもの)
点火プラグによって火がつけられ、
燃えて、排気されます。

この時、燃え終わった残留ガスがあるのですが、
(以下残留ガスと書きます)
それが抜けの悪いマフラーを使用すると
エンジン内にたくさん残ってしまうことが
大きな問題になります。

例えば旧車に使われている純正マフラー。
今よりだいぶ基準は緩いものの
それなりに消音されています。

特に空冷エンジン後期の車種、
カワサキでいえばZ1000系などですね。
この頃の純正マフラーは構造的に
抜けがよくありません。

純正マフラーでなく
社外品のマフラーでも構造が悪かったり、
サイレンサーで何の工夫もなく
無理やり消音されたもの。
これは純正マフラーよりもさらに具合が悪い。

そんなことなら純正マフラーの方が
よくね。そんな感じです。

(現代のバイクの純正マフラーは技術も進み、
カッコはともかく静かにしつつ、
抜けをある程度確保したものが考えられています)

空冷エンジン時代の純正マフラーは
単純に詰め物をしている感じで
無理やり静かにしている感じのものが多いので、
トイレに行きたいけどいけない状態の
人間のようなもの。
どれだけ苦しいか想像できますよね。

先ほど書きましたが無理やり消音した
社外品マフラーはさらにたちが悪い。

残留ガスは、当然混合気が燃えた
直後のガスなのでかなり高温になっています。

このガスがエンジン内の燃焼室に
排気されず多く残っていると、
当然エンジンの温度も高くなります。

夏場に部屋を閉め切って換気できなければ
同じことですね。

抜けの良いマフラーがついていれば、
それによって多く排気されエンジン内の
残留ガスが少なくなり、
さらに良いことに新たにキャブレターから
より多くの混合気を燃焼室、シリンダー内に
入れることができます。

当然キャブからの混合気の方が
燃え残りのガスより温度が低く、
これによってエンジンもいくらか冷やされますし
たくさん混合気が入る分当然出力も高くなります。

仮に1100ccの空冷エンジンだとしても
残留ガスがエンジン内に100cc
残っていれば
(解りやすくオーバーに書いてます)
1000ccしか混合気が入らず、
そのエンジンは1000cc分の出力しか
発揮できません。

さらにその残った100ccの残留ガスが
燃焼室内の温度を上げ、エンジンの大敵
ノッキングを起こす原因にもなります。

つまり残留ガスが多いと、
エンジンの温度が高くなり、
エンジン本体部品の歪み、ガスケット類の
傷みも進行しやすく、
それによってオイル漏れも早く起きたりする。


さらにエンジンの出力が減り、
走る楽しさも減り、そうなると
さらに同じ加速を得るのに無意識に
アクセルを開ける量が増え、無駄な
燃料も使う。


さらにエンジン内、主に燃焼室、ピストンの
トップ部分にはカーボンの堆積が増え
エンジン性能の劣化が早くなる。

水冷エンジンならラジエターによって
温度が下げられた水がヘッドとシリンダーに
送られ温度が強制的に下げられます。

ところが空冷エンジンはそのような
冷やすものものがありません。
正に空気のみ。

つまり、残留ガスを徹底的に掃気することが
エンジンにとって最高なわけです。

その掃気を促すのが
性能が良く抜けの良い集合マフラーです。

良い集合マフラーは排気ポート、排気管内の
慣性排圧力変化をうまく利用して
エンジン内の残留ガスを減らします。

良い集合マフラーでもサイレンサーに
極端に抜けが悪い物がついていれば
それがすべてをダメにします。

確かに今の時代、極端にうるさいものは
ダメだと思います。

それでもある程度はきちんとした抜けを
確保する必要があります。

今回の最後に、
これは実際の経験例ですが、
同じ排気量、ピストン、オイルクーラー
などを使用して、
抜けが良いマフラーと
純正タイプのリプレイスマフラーを取り付け、
同じ日に走り比べました。

その結果、油温の高さが実際に違うことが
確認できました。

もちろん抜けの良いマフラーの方が
油温が低く、
純正タイプの方が油温が高くなりました。
かたや油温は100度を超えないのに
片方は100度を超える時があります。

しかも走りは抜けの良いマフラーのほうが
断然良く走ります。

皆さんのお住いの地域、使用状況で
いろいろ難しいこともあるかもしれません。

ですがたんに静かにすればよい、
スタイルが好みであればよい、
だけでない部分も知っていただければと
思います。それからの選択です。

なんでもどちらか極端に100%ではなく
バランスだと思いますし、
私たちも何でもオーナーさんの
いう事だけを優先するのではなく、
技術、経験から方法を提案できる人が
本当の意味での整備士なのだと思います。

音だけ静かになって、すぐにエンジンが
ダメになるのでは意味がない。
今だけ良ければよいそういう物ではないと思います。





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