写真は今製作中のCBX1000。
まだ外装が上がってきていないのですが、
仕上がりを待って完成後の走行テストですね。
この車両は今回エンジンの作業は行わず
車体のレストアチューニング作業の注文ですから、
走行テストは短めでも大丈夫です。
このCBX1000のように古いバイクの作業をする時、
気を付けていることがあります。
それは一時だけ良いものにしないことです。
レースであればそのレース中にエンジン、
車体共に最高のパフォーマンスを発揮することが
一番の目的、レースを走り切るまで良い状態を
保つことが最優先。
それとは違い私たちがバイクを所有して
乗る場合には、そこまでのハイパフォーマンは
得られないけれど、もっと長い期間、
年単位である一定程度のレベルで
好調であることが求められます。
これも古いバイクが相手の場合なかなかハードルは高く、
簡単ではありません。
となると車両制作の仕方が変わってきます。
私がビトーR&Dでメカニックとして
働いていた時感じたのは、(25年以上前ですが)
長く好調で乗れる耐久性をよく考えて
物が作られていたことです。
社長が元々トップレベルのレースメカニックで
あったにもかかわらず、
レース車両をそのまま持ち込むのではなく、
私達一般のライダーが一度買えば、
長く難しいメンテナンスが必要ではない
商品やエンジン、車体を作っていました。
会社が大きくなった今でも手曲げマフラーは
ご自身で曲げているんですよね。
私も曲げるので解るのですが、体力が要る作業で、
こだわり、また好きでなければ続けられない
と思います。
その証として、何十年も前の商品が
今でも難しいメンテナンスをすることなく
使えていますし、部分的に改良され
さらに良くなっているものの多くあります。
マグタンなどマグホイールも販売初期から
長く使っていますが問題が起きたことは
一度もありません。
古いバイクの場合、まずベースにする
車両が入庫すれば、多くの修理、レストアを
したくなる箇所があります。
作業する必要がないってのは気付いて
ないだけですね。
そこに多くの費用と手間がかかります。
マイナスからのスタートなのです。
新しいバイクであれば修理と言っても
(事故車を買ったりしない前提)
古いバイクに比べれば作業量は大したことなく、
部品も注文すれば手に入ります。
またレストアというほどの作業もありません。
つまりセッティングなどプラスの作業に
多くの力を注ぐことができる。
むしろ高性能なバイクであればそこが楽しい
のではないでしょうか。
古いバイクの場合、ベースにする車両価格の高騰で
(私は買いたい人が買えなくなるので反対)
本来の調子で走るというレベルに到達することさえ
出来ないユーザーが多いのが現状です。
パフォーマンスが高いことと、
それが長く保つことは相反することで
一番技術を持っているメーカーの作ったもので
あっても、パフォーマンスが高いものは
通常のバイクや車よりも短い期間、走行距離で
メンテナンスを受ける必要があります。
例えばサスペンション。
スムーズで、低フリクションであればあるほど、
路面からのショックを上手にいなしてくれ、
より安全、快適、思うように運転することが
出来ます。
誰にでもわかるところでいえばギャップを
こえた時、突き上げの角が丸くなり
乗り心地が良くなります。
ところがそうなるとオイルシールなどは
寿命が短くなり気味でオイル漏れが発生しやすく、
希望のタイミングでなくても早めに分解整備を
施さなくてはいけなくなる。
当社取り扱いの黄色い感じの
某有名メーカーのリヤショック。
沢山数を売っているわけではありませんが、
定期的に注文はあり、もう25年くらいは
お付き合いがあります。
長く使っていると25年前と今では
商品の変化も感じ、明らかに低フリクション、
性能が上がっています。
ですが新品で購入して保管しているだけで
オイル漏れが発生したり、
使い始めて比較的早いタイミングで
オイル漏れもおきたりします。
保証期間が切れていればオーバホールとなり
安くても数万円、走ってシャフトに傷が
入っていれば10万円コース。
性能がよくてもお客さんからの指定がない限り
お勧めすることに躊躇してしまいます。
サスペンションセッティングにこだわり
とことん良いものを追求するのであれば、
近場にそれを行ってくれる店(信頼できる人)
があり、定期的にメンテナンスする必要が
あるでしょう。
バイクは作りがシンプル、車と違いボディ
(フレーム)が劣化してこないので
短いサイクルでメンテナンスできれば
その走りのすばらしさを体感できます。
繰り返しになりますが古いバイクの場合、
レストアや修理するだけでも大仕事。
たくさんの費用と時間がかかります。
そこからさらに維持まで費用と時間がかかると、
とてもそこまではやっていけないという方が
殆どだと感じます。
最近はバイクに関連する記事なども
あまり読まなくなったので今のことは詳しく
解りませんが、お客さんに乗ってもらって
ストロークを計測して、バネレートを計算し
サスペンションを分解してシムを交換してなど、
確かに古い物でも理想はそこまでできたらいい。
ですが、プロの私自身でさえ古いバイクが
対象ならそこまで費用と時間を使うことができない。
作業が完成したら、もう乗って楽しみたい。
このCBX1000もそのように作っています。
前回書きましたが、古いバイクのフレームは
強くないので、足回りの許容範囲が広く
出荷時にテストして確認しておけば
充分に楽しく走れます。
ある一定のレベルをどこにするかは店と
作業する人次第。
確かに1クリックでの違いを感じる事もあります。
でもそれよりも私が大切だと思うのは
気に入ったバイクを手に入れられること、
そして手放すことなく維持できること、
そして走って無事に帰ってくること、
ですね。
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