Born in the Circuit Back to the Circuit
この文は油冷エンジンを積んだGSX-R750の
開発時コンセプトですが、
サーキットで生まれてサーキットに帰るという意味です。
スズキのバイクにたくさん積まれた、
意外と知られていないスズキの油冷エンジンについて
簡単に説明を。
元々エンジンの冷却には水冷式と空冷式しかありません。
その中でスズキの言う油冷式とは?という話です。
空冷式は軽く作れるものの、高出力化を狙った場合
冷却が不十分になり故障や熱ダレによる出力低下、
ひどくなればエンジンブローなどが発生してしまいます。
1980年代、GSX-R750より先に販売された
GSX-R400は水冷式で販売されていました。
水冷で作ることは可能であったのに、
なぜわざわざ油冷式のエンジンで作る必要が
あったのか?
この時、水冷式を選べばラジエターなどの
冷却のための補器類を取り付ける必要があり、
当時の技術ですと重量増になると考えられていました。
それにプラス、補器類の関連でエンジン関連の部品で
前後長も増えると。
ですが、前世代の空冷750ccを積んだGSX750E
輸出モデルで出力が大体80PS、これをスズキは
他メーカよりずば抜けた性能を目指し、軽量な車体と
750ccの排気量で1エンジン出力を100PS以上
にも上げようとしていました。すごいことです。
そうなると高出力化に伴い、エンジンをより
冷やさなくてはいけないのに車体全体としては
重量増はダメ。それを避けるために
特に重量のかさむエンジン回りを重くしたくない、
補器類含めてよりコンパクトに作りたい
となったわけです。
そこで考えられたのが油冷式。
スズキの油冷エンジンは空冷エンジンで
あることは間違いないのですが、
通常の空冷式とは異なる構造です。
スズキの油冷式エンジンとは
エンジン内部にあるヘッドカバー側に取り付けられた
ノズルから大量のオイルをシリンダーヘッドに直接噴射して、
通常の空冷エンジンよりも、よりエンジンの冷却を
すすめようとしたエンジンです。
同時にピストンにもオイルをしたから噴射し同時に
ピストンも冷却します。
これは、冷却に水とオイルを同じように使っても
オイルで冷却したほうが分が悪く上手く冷えない。
そこで大量のオイルを使いそれを吹き付けることで
冷やすことにしたのです。
そして、空冷には違いないものの、
普通の空冷エンジンとは違うとの主張、
一般の方にも解りやすくするために油冷式と
いう名称を使った。こういう事です。
今の技術であれば水冷でもコンパクト、
軽量に作ることは出来ます。
ですが当時の技術者が知恵を絞って
軽量でコンパクト、高出力を狙って作られたのが
この油冷エンジンです。
ではこのエンジンを今見るとどうか。
まず外観が良く、いわゆるエンジンらしい
エンジンです。
サーキットなどで高負荷で走り続けるのでなければ
エンジン出力は充分に高く保て、メンテナンスも
難しいことはなく故障も少ない。
私が何より聞いて欲しいのはその音。
特に1100に良いマフラーと良いキャブを使いセッティングが
あった時の音は最高で、ノーマルのエンジンでも。
通常ノーマルのピストンではここまで良い音は
聞けないものなんです。
バイクのような趣味の乗り物は
単に速ければ偉いというわけではありません。
ですが当時の技術者が知恵を絞り、
本気で作ったバイクが本来の調子で走る時、
それは今乗っても感動し、楽しめることに
間違いありません。
写真はGSF1200を鍛造ピストンを使い
エンジンオーバーホール、チューニングを
行ったときの物。
ヘッド内に大量に吹きつけたオイルがオイルパンに
戻るためのパイプが見えます。
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