バルブタイミングとGS1000入庫

ハイカムシャフト、いわゆるハイカムと
言うものですが、これを組み付ける時に
バルブタイミングをきちんと取らないで
そのまま組み付ける人がいます。

ハイカムでも、種類が色々ありますから、
おとなしめのスペックの物であれば、
そのまま組み付けてもバルブとピストンが
干渉しないから、バルブタイミングを
測定、調整はしなくていいなどという整備士が
います。ですがそんなことはありません。
100%間違いで、ハイカムを組み付ける時には
バルブタイミングの測定、調整が必要です。

バルブタイミングを測定、調整することを、
以下バルブタイミングをとると書きます。

バルブタイミングをとることは
どの回転域で効率よく慣性過給を
効かせられるかを決めることで、
アイドリングから、高回転域まで全て
ベストということはありません。

したがって私達が使うような普通に乗る用途で
あれば、カムシャフト製作側の説明書に書いてある
タイミングに合わせます。

街中で使うことが多いからと言ってオーバーラップを
小さくとかではなく、当社の場合は、後は吸気系、
排気系で調整します。

また街中ばかりずりずりと走るのであれば
ハイカムでst-2は必要なく、
純正カムのままでも良いのです。
ハイカムだから偉いではなく、自分の使用する
条件に合わせる方が、ストレスが少なくて済みます。

ハイカムをタイミングをとらずに組み付ける話で
解りやすいのは、GPZ900Rで、
皆様ご存じのようにGPZ900Rはカムシャフトの
一つの山で2つのバルブを駆動させるため負担が
かかりカムシャフトがかじりやすいです。

この関係で交換が必要となった場合に、せっかく
交換するのならハイカムのst-1などを
組み付けたいと言うことで純正のカムと
同じ気分でカムを交換し、バルブタイミングを
とらないで組み付けてしまう人がいます。
こんなことはしない方が良いのは当然です。

GPZ900Rは一気筒あたりの排気量が小さいので
そのままハイカムを組み付ければ、
さらに中速トルクが落ちるので、ボアアップ&
圧縮比アップと同時に行うべきで、カムだけ
ハイカムにするという選択自体が良くないの
ですが。

それ以外に多いのはやはりカワサキZ系でしょう。
ハイカムを組み付ける方が多いのは圧倒的に
カスタムの対象になりやすいカワサキ製の古い
バイクで、数が多い分このようにタイミングを
とった形跡がなくハイカムだけ組み付けている車両を
時々見かけます。

もしあなたの回りでハイカムを組む際に
バルブタイミングをとらなくていいなどという
整備士がいたら、その人に整備を依頼するのは
辞めた方がいい。きっとほかの部分でも
間違った知識、考え方を持っていると思います。

それとは別にさらに悪質なのが、
バルブタイミングはとったと言っておきながら
実際にはとっていないケースです。
(ハイカムを組んだと言いつつハイカムでなく
純正カムのままってのが一番悪いと思いますが、
そういうこともあります)

エンジン外観からも、その判断がつく場合も
あります。
例えば、カワサキZ系でハイカムを
組みつける作業だけを業者に依頼したとして、
当然この時はヘッドカバーを外し作業
しますからその痕跡が残ります。

ヘッドカバーのガスケットと、カムプラグ
4個(ゴム半円上の物)は新品になっているからで
すぐに解ります。

さらにカワサキZ系にハイカムを組み付けるなら
右側のポイントカバー(DOHCとある部品)
左側のジェネレーターカバー、さらに
カムチェーンテンショナーを外す必要が
あります。
この中で特に左側のジェネレーターカバーを
外した形跡がない、つまり新品のガスケットに
なっていない場合は疑ってよいと思います。

ガスケットを再使用することもないとは言えませんが、
ハイカムシャフトを組み付けるには
通常よりさらにきちんとバルブクリアランスを調整し、
(純正シムの0.05mm単位ではダメ)
測定誤差は多少あるものの正確なタイミングを測定、
調整する必要があります。実に面倒で、手間のかかる
作業です。

そのような繊細で手間のかかる作業をする時に
一度はずすとオイル漏れのしやすい
ジェネレーターカバーのガスケットを、
テスト後すぐに開けて確認するとかなら
解りますが、一度納品した後しばらく
そのまま走るのであれば、一枚数百円のガスケットを
整備士側が好んで再使用するとは思えません。

つまり左右同時にカバーを外す必要のある
作業でそこを外した形跡がない。
となればきちんとバルブタイミングを
測定、調整はされていないと考えるのが
当然でしょう。

ちなみに右側のカバーを外すのは
タイミングホイールをつけるため。

IMG_0370

左側は測定時に何度も手でクランクシャフトを回す
必要があり、その際にジェネレーター中央の
ボルト(写真)に工具をはめ、クランクを回すからです。
ちなみに右側タイミングホイール側のボルトに
工具をつけてクランクを回すことはできません。
ここのボルトを回すとタイミングホイールの
位置がずれてしまうからです。
IMG_0235

もしご自分のバイクで本当にタイミングを
とっているかどうか確認したいのなら
ヘッドカバーを外し、長穴のカムスプロケットに
なっているか(写真)で確認するのが
一番です。
IMG_0373

長穴になっていない場合は100%
きちんとした作業はされていません。

なぜこのようなことを書くのかと言えば、
最近は回りのことを悪く言うだけで、
自分は当たり前のことをしていない業者が
多くいる。

私の回りのまともな業者さん、取引先は
回りのことを悪く言う会社はありません。
当たり前のことを毎回行い、
それを長く続けることは困難で、
なおかつ気をつけていても人間はミスを
します。だから回りを簡単には悪くは
言えない。そういうことが解っているからです。

自分がきちんとできないのなら、
回りのことも言わなければよいと
思うのですが、
こういうカムタイミングすら
きちんと作業していない業者に
かぎってFCR、CRなどの強制式キャブレターの
同調の取り方をしらない。

やたらとあちこちに液体パッキンを塗りまくり、
液体パッキンがはみ出たエンジンにする。
(液体パッキンも色々種類があり、
向いていない物を塗れば、オイル漏れ、
シールの飛び出し、それ以外にも
トラブルの原因になる。高温に弱いもの、
簡単にちぎれやすい、ガソリンに弱い、
などいろいろあります)
外にもたくさんはみ出るということは
内部にもたくさんはみ出ているということです。

そのはみ出た液体パッキンが、オイル通路を
塞ぐことになったらと考えたことがありますか。
考えただけでぞっとします。

話は変わりますが、
古いバイクに手を加える時に、
何が必要で、どこからはじめたらよいかが
解っている人はとても少ないと感じます。
それはプロであってもです。

例えばカタナやCB-F系などは純正のままですと
シフトダウンのタイミングがやや合わせにくい
バイクです。
ステップも悪い場合も良くありますが、
話しがややこしくなるので今回はそれは
除外します。

それしか知らなければこういうものだと
思って乗っているので、特に違和感は
ないかもしれませんが、
扱いやすいものに乗れば、なんか乗りにくいなと
感じます。ニュートラルもでにくかったり
する場合もあります。

この時によく間違って行われるのは
クラッチ操作が軽くなるような改造です。
レバーだけ変更したり、レバー回りのホルダーも
ASSYで交換するキットが売られていたり、
ワイヤー式を、油圧式に変更したり。
ケーブルを変更したり。
でも先ほどの改善したい部分については
全く変わらない場合がある。それは自分のバイクには
それが当てはまらなかったからです。

ところがこういう場合に、金額が張らずに
一番良くできる可能性が高いのは
クラッチレバーを握った時に引っ張るワイヤーの
ストローク量を増やすことです。

そのように改善すると、シフトダウンの
タイミングもとりやすくなりますし、
ニュートラルもでやすくなる。
また、スタートする時も自然なつながるので、

これも扱いや易さにつながります。
そうなるとミッションも傷みにくくなり、
クラッチの寿命も長くなる。

文章で表現すると解りにくいと思うのですが、
結局自分のバイクで乗りにくいのには理由があり、
それを改善するためにできる作業、部品交換は
何か。それが解っていない方が多い。

当社に初めて持ち込みで入庫するバイクは、
大きなことではなくても、ちょっとした改善で
大きく乗りやすく改善できるバイクが
とても多いです。

自分で趣味で整備を行う方は
プロではないのでそれで良いのですが、
お金を払って整備されていたバイクが
普通に走ることさえままならない。
結局皆さんが乗っているバイクに合った整備、
改善が必要で、そこがされておらず、
無駄にお金だけ取られて乗りにくい箇所は
そのまま。

ネットや雑誌にはこう書いてあったから
自分のバイクにもしてみた。
ではなく、実際にあなたのバイクの状況に
合ったオーダーの整備が必要です。

クラッチを軽くすることは必要ではなく、
クラッチレバーを握った時にきちんとクラッチが
切れるようにする整備が必要なのかもしれない、
そういうことです。

70年代~80年代の日本製のバイクは
人が走って作られていた時代のバイクです。

ONかOFFだけでなくその間の人間とバイクの
やりとりが面白いと感じる方には良いバイクと
言えるバイクが多く、私達はその持ち味を
引き出すのが仕事です。
自分のバイクにあった整備は何か
ちょっと考えてみませんか。

GS1000のクーリーレプリカ(青白)が
入庫しました。

このGS1000を販売します。

この車両は今のオーナーさんが
他店でこのGSを見つけ、
当社が間に入って必要な整備をしてから
販売したバイクで、
とても素性の良いバイクです。

車両は当社にあるので、
直接見ていただくことが可能です。
状態の良さをご確認ください。

状態が良い物を購入した為、
レストアは行っておりませんが、
オーナーさんも大切にされており、
今回もレストアせずに整備を行い
販売いたします。

最初に販売した時にも多くの整備を
しておりますが、再度ブレーキホースの交換、
タイヤの交換など現在必要な車体の徹底した整備と、
純正そのままのポジションが扱いにくい為、
ハンドルなどポジションの改善、
エンジンオーバーホール、ヘッドのポート加工を
行ってから購入することをお勧めします。

GS1000はエンジンのバルブ類も大きく、
ノーマルに近い状態であれば
カワサキZ系、スズキカタナ1100
よりも軽快で良く走り、ノーマルマフラーの
音もよく、乗ってとても面白いバイクです。

その他足回りなどもカタナの部品を
使えばチューニングも可能です。

ご興味のある方はお気軽にお問い合わせください。
金額は仕様によって変わりますので
都度見積もりいたします。

近日写真を撮って写真を紹介します。

 

 

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