こんな店に整備にだしてはいけない。2

先日の、オイル漏れ修理から
フルオーバーホールに至ったZ1000R2の
エンジン分解の続きです。
DSC09636ピンボケですが、コッターが
(バルブステムエンド付近の部品)
きちんと組まれていないのが解ります。
隙間が両方にないといけないのですが、
片側にしかありません。

DSC09639バルブスプリングは問題なし。
でも新品に交換するのですが。

DSC09640エキゾーストバルブ、焼け気味ですが
問題なし。

DSC09679問題はこちらはIN側のバルブです。
コッターがはまる溝の付近に通常の
組み付けでは入るはずのない、
傷が入っています。

なんでこんな傷が入るのか意味が解りません。

このバルブだけでなくIN側のバルブ3本に
同じようにこの傷が入っていました。
当社基準では使えないので交換となります。

この傷がなければ、
ステムの部分は全然減っていなくて、
フェースの部分も問題なく、
再使用できたのにもったいないです。
今回、IN側バルブは4本とも
交換することにしました。

DSC09666燃焼室。なぜか解りませんが、
けがき針でさしているところが
少し変形し、傷が入っています。

DSC09668同じく燃焼室なのですが、
ご覧のように雑にシートリング部分の
段差を削った跡があります。
これは吸気側(IN側)でカーボンが
少ないので良く解ると思います。

今までの経験上、ダメな作業をしている
エンジンに限ってこういうことはしてあって
しかも雑です。

こういう作業は雑にするぐらいなら
しない方がいいです。
バルブシート周辺はデリケートな
ところなので、もっと丁寧に
作業しなければいけません。

こんな加工をする余裕があるのなら、
本来しないといけない部分を
もっと真剣にすればいいのに。

DSC09662排気側(EX側)も削ったあとが
あります。

DSC09681ヘッドのカムホルダー部です。
ヘリサートをして、ねじ山を修理したあとが
あるのですが、ヘリサートのコイルが
(スプリューて言うのかな?)
抜けてきています。
これでは治した意味がありません。

DSC09682これは別の部分。きちんと作業していても
少し抜けてくることはあるのですが、
そうなってもいいようにあらかじめ少し奥に
入れておくのが普通です。

このように何箇所も抜けてきているのは
明らかにダメ作業で、きちんとした作業を
知らないか、実際にうまくできないかです。
当たり前か。
こういうことになっている場合は
コイルが入っている部分の雌ネジも
ダメな場合が多いので、
当社で全て一度抜いて確認、作業しなおします。

DSC09687これは重要部品のカムチェーンテンショナー。
この写真はのびた状態です。

DSC09689たいした力も入れていないのに
押してみると簡単に縮んでしまいました。
テンショナー壊れてます。

このように押してみるだけでも
解るものもあるのですが、
エンジンをばらす最初のほうで
ヘッドカバーだけ外して、
クランクシャフトをラチェットなどで
逆回転させればテンショナーがダメに
なっている場合カムチェーンがたるむので、
それでも解ります。

Z1000R系のテンショナーは
結構ダメになるので注意が必要です。
このエンジンについていたものは、
力を入れなくても簡単に縮み、
完全にダメになっていたので、
チェックなどしていなかったのでしょう。

バルブとピストンが干渉しなかっただけ
運が良かった。
ピストンも圧縮が低そうなタイプですし。

DSC09692ピストンの2番と3番の間に、
カムチェーンがあり、スライダーもあります。

黒い弓なりになっている部品です。
この部品を先ほどのカムチェーンテンショナーで
押して、カムチェーンがたるまないように
なっているのですが、

DSC09693そのスライダーの軸の部分となる箇所に
ついているピンの両端が削れて
樽型のように小さくなっています。
このピンがダメになっているものは
初めてみました。使えません。
なぜこんなことになるのか、
理由が解りません。

このピンは欠品なのですが、
探したら中古で良いもの持ってました。
良かった。

DSC09697クランクシャフト右側になります。
点火系の部品がつくのですが、
位置決めのピンが変形してます。
で点火系は社外品に交換されてます。
換える前にきちんと組め!という感じです。

黄色に塗ってあるのは、あとで時間がたっても
修理するのを忘れないようにするために塗ってます。
一緒に写っている雌ネジのとこにも
塗ってあるのはネジが痛んでいるからです。

DSC09700スタータークラッチまわりをばらします。

DSC09701見た目では解りませんが、
スタータークラッチがダメになってます。
(3本のボルトで止まっている)

DSC09702スタータクラッチがダメになると、
このスターターギヤがダメになります。
縦に筋がたくさん入っているのが解ります。

このギヤは高価な部品なので、
換えずに済めば助かるのですが、
先ほどのスタータークラッチと一緒に
交換です。

ギヤは程度が良いと換えなくても済む場合も
ありますが、スタータークラッチは
エンジンOH時に毎回交換しています。

DSC09711エンジンをひっくり返しオイルパンを外すと
オイルポンプを固定するボルトが1本
ついてませんでした。
あり得ない。

このガスケットはどこのだろう。

DSC09713この部分です。
エンジン内にボルトは落ちてなかったので
組み忘れのようです。信じられない。

いよいよエンジン分解も終盤なのですが、
クランクケースが上下に分割できません。
何度もボルトの外し忘れがないか
確認するのですが、外し忘れはありません。

どうもこの左、前側の角の部分がおかしい。

DSC09777
DSC09780怪しい。どうも、こけたか倒したかの際に、
溶接して修理したような感じで、
上下がひっついてるみたい。

DSC09775
ここでオーナーさんに確認したところ、
前回の整備では触っていないそうなので
それ以前に作業されているようです。

これはもうこの部分を削るなり
何なりして分解する以外にありません。
どうか深く広い溶接でありませんように。
許可をとって作業をすすめます。

DSC09778色をはがすとやっぱり境目がない。

DSC09784リューターで少しずつ削り、
何度か分解を試みると上手くいきました。
それにしてもなんてことをする!
他の部分にダメージが及ばなくて良かった。

DSC09785クランクシャフトは問題なし。

DSC09787先ほどの溶接箇所以外、ケースも
大きな問題はありませんでした。

DSC09788といってもこの部分のクラックはありますが。

やはりいつも分解して感じるのは、
元々の純正状態が悪いわけではなく、
ほとんどの大きな問題は
後のでたらめな整備作業によって
人によって引き起こされているということ。

良かれと思って整備すれば整備するほど、
手を加える範囲が広く、深くなるほどに
そのダメージは大きくなる。

ベース車両購入、あるいは車両購入、
重整備、レストア、チューニングなどを
依頼されるときは、良く良くお考えを。

悪いものをつかまされたり、
間違った作業をされると、後がとても大変。
いい店がその辺にゴロゴロあるわけなし。
自分だけは大丈夫。その自信が一番危ない。
自信がないタイプの方がむしろ慎重で
良く考え失敗が少ない。

今回紹介してあるような整備もどきを
してあるものがむしろ普通で、
良いものにあうことはほとんどない。
常に重整備、フルレストアを行っている
当社だから解るのです。

ベース車両として良いものは、純正のままで
変に手を加えていないものだと断言できる。

失敗した後で良い店にめぐり合うことができても、
旧車の場合欠品もたくさんある。
また出せる金額にも限界がある。

あいまいなことしか答えられない整備士、
簡単に手に入る情報はうのみにせず、
人に判断を任せず、
大切なことは自分で判断を。

前にも書きましたが調子の悪いバイクに
乗っている友人のアドバイスは参考にならず。
当たり前のことを当たり前に。

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