エンジンフルオーバーホール?

フルレストア済みといわれて販売されていても
それに値しない旧車が数多く売られています。
少し色を塗って部品を目立つ部分だけ交換した
ぐらいでフルレストア済みとは言えないでしょう。
それと並んで良く言われるのが、
エンジンオーバーホール済み。
これもきちんと作業されているものは
極めて少ないとはっきり言えます。
普段エンジン全バラの作業などほとんどしたことがない
整備士が、たまに古いエンジンを全部分解してガスケットや
シール、ピストンのリング、カムチェーン、
ポートなどの軽いカーボン落とし、バルブを少しすり合わせと、
一部定番の部品を交換し組み付け。
これをエンジンフルオーバーホールなどという人がいます。
とんでもない。
これはいつもより多めにばらして行ったただの整備。
フルオーバーホールしたエンジンではありません。
ばらしてただ組み付けただけです。
もちろんオーナーさんそれぞれに上限予算と
いうものがありますから、その範囲内で作業するのは
当然ですが、整備した側が簡単に上記程度の内容で
「フルオーバーホールしました」
と言うのは正しい表現とは思いません。
この言葉を聞けばオーナーさんは
「自分のエンジンはフルオーバーホールエンジンだ。」
と思ってしまうでしょう。
アクセルを開けた際に本来のトルクのキックもなく、
気持ちの良い吹けあがりもない、
本当の実力ではない状態なのにそれをそのバイクの
実力だと信じてしまう。
古いから走らない。ではなくダメ整備だから
本来すべきことをしていないから走らないだけなのです。
70年代や80年代の古い4気筒のバイクで、フルオーバーホール。
古いので外観もきれいにして50万、60万で仕上がるとは
到底思えません。
交換すべき部品を換えてない。
修理すべき部分の修理していない。
加工し修正すべき部分もそのまま、
対策すべき部分もそのまま。
外観もいまいち。
それがフルオーバーホール?
まして、仕事でエンジンオーバーホールや
車体のフルレストアの依頼を受けるとなると、
その一回だけたまたま上手くできればよい、
ということではありません。
たまたまその日だけ絶好調でホームラン。
あとの試合は全く打てず全部だめ。
それはプロではありません。
依頼されたそれぞれの人のバイクが、皆調子よく、
それが長く持続し(もちろん機械として正しく扱う前提で)
しかも綺麗でということが求められます。
当然新車時のように、あるいはオーバーサイズの
ピストンを組んだり現代の技術が生かせるのであれば
古いものがベースでも、新車をこえている部分があり、
調子が良いのが長続きして当たり前です。
エンジンオーバーホールも、レストアも
少し整備をかじったくらいですぐに良い仕事が
できるようになるものではありません。
どうかこのブログを読んでいる皆さんの、
本来乗って楽しむ時間が、苦悩の時間にならないように。
一生は一度きり、時間は戻りません。
紹介するのは当社で実際の販売車両に積むエンジンの
写真で、Z1でエンジンオーバーホール仕様になります。
DSC07555.JPG
FCR35mmキャブレター取り付けのため、
大径インシュレーターを作業前のヘッドに
取り付けたところ。
大きな段差があります。
DSC07572.JPG
段差を削り落したところ。
削る量が多いのでかなり時間がかかります。
DSC07574.JPG
このエンジンはたまたま少ない方ですが、
ガイド周辺にデコボコが見えます。
前期、後期問わず気持ち悪くなるぐらい
デコボコの物もあります。
DSC07575.JPG
このエンジンはチューニング仕様でなく
オーバーホール仕様ですので、ある程度ということには
なるのですがデコボコを落とし、ペーパーを
かけ綺麗にしてます。
チューニング仕様の場合は形状も大きく変更して、
ペーパーも、もう一段細かいものまでかけます。
ブラストなどで燃焼室や、ポートのカーボンを
落としているものを見かけることがありますが、
それですとデコボコはそのままで、悪い部分も
そのままになってしまいます。
古いエンジンはこういう部分のばらつきがとても
大きいので、それでは本当の意味での調子の
良いエンジンにはなっていないことになります。
もったいない。
いわゆる当たりのエンジンはずれのエンジンと
いうことです。もちろんこの部分だけでなく
エンジン全体それぞれの部分で考えないといけないのですが。
この写真はキャブ側から撮ったものになるのですが、
奥の方は燃焼室側から行うのでガイドの手前
ぐらいまで作業してます。
ここまでした後、違いが解らないので写真に撮ってませんが、
インシュレーター取り付け部分はもう少し綺麗な
円になるようにさらに作業します。
その作業は性能には関係なく、したいのでしているだけです。
DSC07589.JPG
EXポートでマフラー側から撮ったもの。
これもガイドくらいまで作業し、
この後燃焼室側から行います。
DSC07598.JPG
マフラーのガスケット取り付け面を
掃除したところ。通常ここまで綺麗にならず、
このZ1は特別綺麗な方です。
マフラー取り付け面は(ガスケットをつける部分)
デコボコになっていたりしますが性能上全く違いが
でないので問題ありません。もちろん程度によりますが。
ポートの方は状態が悪いと影響があるので、
手直しして紹介している写真のようにします。
DSC07601.JPG
EXポート、燃焼室側からの写真です。
作業前。
DSC07622.JPG
バルブシート周辺など作業後。
ややピンボケ。
DSC07627.JPG
INポート作業前。
DSC07636.JPG
作業後。
DSC07817.JPG
続いて燃焼室のカーボン落としと
軽研摩作業をしたところ。
DSC07827.JPG
DSC07828.JPG
プラグ穴をタップで掃除して。
DSC07829.JPG
オーバーホール仕様のポートのカーボン落とし、
燃焼室の軽研磨、プラグ穴の清掃が終わりました。
プラグ穴の状態も良く、特別な手当ても必要ありませんでした。
このヘッドは後日マフラースタッド部の修理と、
(溶接してある箇所でまだ途中)
バルブシートカットすり合わせ、修正面研、
等を行い、再度ネジ山などをチェックして、
その後外観のレストア行います。
バルブガイド交換はすでに当社で作業済みです。

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