新年が新しく始まりましたので、
当社の目指している方向について書きたいと思います。
まず販売価格についてはなるべく上げたくないと考えています。
ベース車両価格については、変動幅が大きすぎるので対象外となりますが、
最近ではほぼ全ての材料や、部品代、外注加工賃などは上がってきています。
当社としては、できるだけこの部分についてできるだけ努力し、
なるべく販売価格、作業した時の金額は上げずに済むようにしたいと考えています。
当社の一番大切にしていることは、販売車両の品質維持、作業品質の維持
さらに車輌の品質向上、作業品質の向上です。
これは会社としては当たり前のこととなりますが、難しいのは事実です。
一番の理由として挙げられるのは、当社で仕入れる車両、
あるいは既にお客様がベース車両をお持ちで、
それを当社に持ち込みでの作業依頼となった場合の
ベース車輌の品質の低下があげられます。
理由は簡単で、取り扱うバイク自体が元々古く数に限りがある上、
さらに年々古くなっていくからです。
保管状況が良ければ品質の低下はほとんど問題ありませんが、
そのようなこちらの希望するような保管状況を全て満たしている
ものは少ないです。
さらに動く状態のバイクであるときの、一般的な整備をするお店の
メカニックのレベル低下です。
これは車の整備などをディーラーに出せば、全体の傾向として
すぐに一般の整備レベルが下がっているのが解ります。
優秀な方はいるのですが、全体から見たときの割合は年々低くなっているのです。
優秀な若い人から見て、魅力のある仕事でなくなってきているということでしょうか。
当たり前の作業はできるのですが、少しでも通常起こりえないことが起きると
もうお手上げのようなメカニックが増えています。
そういう人は古いバイクの整備には通用しない。
整備、レストア前の旧車バイクは予想外のことがたくさん起きますから。
そんな人が古いバイクの整備をすれば元々は良いものでも、
どんどんダメにしてしまう。本来なら手を出すべきではない。
ですが当社としても旧車は数が少なくなって行く方向ですし、
良いものは当然価格が上限なく高くなって行くので、
買えるもので最大限良い物を買ったとしても、ベース車両の品質は
毎年少しずつ下がってきます。ベース車両の金額は高くなっているのに!
最終的に販売する際の車両品質を下げない、あるいは向上していくと、
私は決めています。
ですので、どういうことになるかといえば、手間(時間)が今までより
かかる方向、交換部品も増える方向となります。
時間も部品も増えるので販売価格は高くなって行くのが当たり前ですが、
なるべくそういうふうにはしたくない、と私は考えています。
一番の理由としては、この時代のバイクはきちんと整備、
あるいはノーマルは乗って面白くないものでも、
上手に適切に手を加えると格段に乗って面白くなります。
見た目も自分ごのみの方向に近づけて行けます。
ですから、本気で欲しいと思う方にはなるべく、
頑張ればなんとか入手でき、なおかつ維持ができるもので
あってほしいと思うからです。
これから販売されるバイクにはない面白さ、そして質感、音、
をできるだけ実際に所有して体感してもらいたい。
それによりそれ以外の生活でも、ハリのある人生を送れると思うからです。
借りて少し乗るだけでは、ほんの表面の浅い部分を体験したに過ぎないのです。
自分で苦労して得たもので買った人にしか解らないものです。
また当社の販売する旧車バイクはレース用のバイクではありません。
普通の方が乗って楽しめるものを作っていきます。
何を持って普通というのかは難しいことですが、
解りやすいことといえば、革ツナギを着て走ったり、
サーキットを走るためには作っていないということです。
ですので具体的なことを何点か上げますと、
エンジンの始動性はできるだけ良いほうがいいと考えていて、
ハイカムなど組んだなどで中速トルクが落ちる車両以外は、
できるだけ純正の点火系を使用して始動性に配慮しています。
かと言ってエンジンに力がなくてはダメなのでエンジンには
良いピストン、そして適切な部品、作業、適切な補機類を組み合わせ
充分なトルクとパワーを与えます。
車体は全体のバランスを重視して、一つだけの突出した部分を作らないように
しています。そのひとつの部分が運転時に危険だったり、突然の大きなトラブルに
つながるからです。
こういう操作をすれば、こういう挙動が返ってくるということが
予測さえできれば安心して操作ができ、無駄な危険を避けることにもつながります。
そうなれば転倒なども減らせます。
車体に使う電気回り、配線回りに付いてはやや保守的な考え方です。
ほかに先立って新しいものは使用しません。
なぜなら、一度きちんと車体全体を整備済みの場合で、
ツーリングなど出先でエンジンがかからなくなったり、
走行不能になる可能性が高いのは、電気回りの可能性が一番高いからです。
その時に一番困るのが特殊な配線回り、電気回りを使用していると
現地で治せなくなる可能性が高くなります。
製作した本人がすぐに診られるのならよいのですが、
現実的ではありません。
その場合近くのバイク屋さん、あるいはオーナーさん本人が
そのトラブルに向き合わなくてはいけなくなります。
その場合に純正と大きく違う配線回りであったり、電気部品であると
対処がとても難しくなりなります。
なるべくその場で何とかして家まで帰れるものであって欲しい。
そう考えて製作しています。
ですので簡単に変更できるバッテリーでさえ、昔ながらのものを使っています。
配線を束ねる際には整備する際に見やすいようになるべく取り回して、
タイラップは切れば見たい配線がすぐに引っ張り出せるように、
配慮しています。
もしトラブルが起きても家や、馴染みのバイク屋さんまで持っていければ
そのあとのことでも大きく悩まずに済みます。
出来れば出先でのトラブルは避けたいですが、万が一に備え
最近は当社で選んだ車載工具を販売時に付けるようにしました。
だいたい車載工具はベース車両には付いていないことが多く、
ついていても足りないものがあったり、使えないようなものが多いので。
また車体が完成した時の試乗テストは、服装は作業着だったり、
普段着、あるいは普通にツーリングで走るような格好で行います。
当社の販売するバイクに乗られる方は、ほとんどの方がそういう服装で
乗られているようで、革ツナギで走るにしても、とても少ない限られた回数です。
ですので試乗テストも普段着のような格好で行う。
それにより解ることもたくさんあるものですから。
(例えばシートが滑る。ミラーが上着がかさばって隠れて見にくい、などなど)
消耗品なども苦労せずに入手しやすいものを選んでいます。
オイルなどもお客さん自身がネットなどで簡単に購入できるものの
ほうが良いと考えているからです。
小さなことを言えば、もっとまめに調子伺いの連絡をしたほうが良い、
大きな話であれば、納車後のことを考えればそれこそ近くに
当社の支店があったほうがよいというような話になります。
ですが現状として今は、まずきちんとしたものを製作することが第一。
それが普通のバイク屋さんにはできるようなことが、当社ではできないことがあっても
(例えば引取りや納車とか店でバイク談義など)
それらのことは多少お叱りを受けながら、少しずつできるようになっていけば
と考えています。
また最後にひとつ。普通に乗れるの中に、乗るときには適切に取り扱ってもらう。
ということが入っています。
間違った扱いをすると、今の車やバイクのようにそちら側で対処したり、
助けてはくれません。車が勝手に止まってくれたり間違った扱いでも
壊れにくいようにはなっていないのです。
私には勝手に車やバイクにフォローされながら走るのが、
楽しいとは思えません。
当社では納車の際に長々と使用説明をします。
ですが、当然全てを説明できるわけでもなく、
またお客様も納車の喜びで話の半分も覚えておられないと思います。
ですがそれでも構わない。エンジンのかけ方。暖気運転の仕方。
これを覚え、あとは乗りながら質問したいことが出てくれば、
その都度聞いていただいて正しい扱い方を覚えてもらい、
バイクを傷めず、長く楽しんでいただきたい。
最初に調子悪いでなく、扱い方が間違っているかな?
と思える人には当社の旧車バイクは難しい商品ではありません。
良いものは残していきたい。本当のバイクの操る楽しみ、
アクセルを開けたとき、せめて古い車やバイクは余計な
電子部品の制御が入らず、開ければ開けただけ加速する
ダイレクトなその加速を、音を、魅力を知ってもらいたい。
その一端を担う会社でありたい。そう思います。
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