特別な話ではないダメ整備実例

昨日このブログは書いたのですが、
時間の関係で内容確認できなかったので
再度読んで言葉足らずの部分を少し変更しました。
お客様持ち込み車両のバルブガイド交換作業で、
典型的なダメ作業実例を皆様にご紹介。
カワサキZ系、J系では特別な話ではありません。
その辺にゴロゴロあります。
このバイクは某有名旧車販売店で購入されたとのことで、
現状販売ではなく、車体各部とエンジン分解整備済み、
ということで購入されたものです。
作業の資料をいただいております。
その資料にガイド、カムチェーン交換と書いてありましたが、
EX側のみ、新しいガイドなのでその整備作業時に
交換されているようです。
バルブガイドが入っているすぐ脇の部分に
小さなクラックを発見したので、
抜いて確認することにしました。
(小さなものなので写真にはうまく撮れませんでした)
よく確認しなければいけませんが、
クラックは表面の薄皮部分だけと思われるので
おそらくこのヘッドは使えると思います。
まずガイドを抜いてすぐわかるのがガイドが入っていた
ヘッドの穴部分に入った傷。抜いた4本ともこんな感じです。
DSC04678.JPG
通常このようなひどい傷は入りません。
入れるバルブガイドのサイズが大きすぎたり、
作業手順で抜けや、間違いがあったりすると
このような傷が入ります。
もちろんガイドは圧入されているので
その際に多少は傷が入りますが、
普通ガイド交換する場合はヘッド側がアルミ、
ガイドが鉄系の材料の組み合わせになるので
かじりにくく、もっと傷は少なくなります。
ちなみにIN側は純正のままで、
ガイドは交換されていませんでした。
同じヘッドのIN側、純正バルブガイドを抜いた穴の
写真はこちら。
DSC04679.JPG
上の写真と見比べると傷は少なく違いが解ると思います。
これが本来の状態です。
写真ですと上のものも多少ましですが、生で見ると
もっと違いを感じます。
ちなみに交換されていたEX側に
実際に入っていた4本のバルブガイドはこれ。
DSC04680.JPG
オーナーさんによるとそのお店から納車された時点で
すでに具合は悪かったようで、(私も試乗して確認済み)
買ってから数ヶ月しかたっていない、ほとんど走っていない
状態で全バラでの作業依頼が入ってきたため、
明らかに熱による変色もなく、ほぼ新品のような状態です。
そしてEX側のガイドを抜いた穴の内径を図った数値がこれ。
私が実際に作業の記録として残している
ファイル用なので字が汚くてすいません。
これをNO1の写真とします。
DSC04682.JPG
8本とも抜いていますが、
解りやすいように最初の1本分しか
書いていません。
全体的に大きめですが、特にたての中の65は大きく、
通常ここがこの数値になることは少ないです。
ちなみにこれは百分の1単位ですので、
12.065mmです。12は同じなので
省略して書いてます。
下も大きいですがここは少し大きくても
構造上あまり気にしなくても良い箇所です。
このヘッド自体の程度はほかの部分の状態から
もともと、とても良い方で、整備作業が悪く、
ダメになった典型例です。
今回の場合は、大きすぎるバルブガイドを
無理して入れたのでヘッド側の穴が大きくなって
しまってます。
このヘッドのように整備前は元々程度が良かったと
各部の状態から判断できるヘッドは、
大体の穴の数値は抜く前からある程度予測がつきます。
このヘッドはこの間違った作業をしなければ、
一番最後に紹介してあるNO3の写真の数値と
変わらないぐらいのものだったと思います。
当社で使うガイドなら12.06~12.09mm弱
ぐらいの物を各穴径にあわせ圧入するでしょう。
で、実際に入っていたガイドを測定してみると、
DSC04683.JPG
4本ともご覧のような約12.11mm~ぐらいで、
材質により違いはあるでしょうが大きすぎます。
実際、ほとんど走っていないのにヒビが
入っているのですから。
もっと大きなヒビであれば、貴重な
そのヘッドは使えなくなってしまいます。
ポート研磨で大きくガイド周辺を削っていれば、
適切なガイド交換でもしばらくしてヒビが
できてきてもEX側の場合は形状からそういうことが
あってもおかしくないと思いますが。
ちなみに別のお客様のZで測定した数値はこれ。
このZもバルブガイドは既に交換されていて、
バルブガイドがなぜか長めに作られており、
全く信用できないので交換するため抜いたものです。
これはEXがわ4本分です。これをNO2の写真とします。
DSC04684.JPG
NO1の数値よりNO2の数値の方が一回り小さいのが
お解りになると思います。
通常バルブガイド交換は一度ガイドを抜くと
穴自体が大きくなってしまっているため、
一回り大きなものを作って圧入します。
その一回り大きな程度のものを入れ、しばらく使って
抜くとだいたいNO2程度の数値になります。
これは普通。
従ってほとんど走っていないのに
NO1の数値のように大きくなるのはおかしいのです。
ちなみに一度もガイド交換を行っていないヘッドで
ガイドを抜いて測定してものはこれ。
これは8本全ての数値です。NO3の写真とします。
DSC04685.JPG
このヘッドは穴が広がってない方です。
NO1、NO2と比べると違いが分かります。
穴が少しぐらい広がっていてもそれに合わせた
少し大きめの適切なサイズを圧入すれば、
何の問題もありません。
ただ、上で紹介したような大きすぎるガイドを
いきなり入れればかえって貴重なヘッドを
壊すためにお金を払ってしまうようなものです。
ある雑誌社の営業マンが当社にも直接いきなり
営業にきて、このダメ整備をしたバイク屋の
タイアップ広告が載っている、その本を私に見せ、
「タイアップ広告に力入れてます。」
と言ってました。お金が入れば真実はなし!
でいいのでしょうか。
うちのバイクにその雑誌の編集長を乗せて、
などのようなことを言っておりましたが、
もちろんきっぱりとお付き合いは断りました。
お金を払って壊されるなんて。でもこれが普通のZ、
その辺を走っているZです。
私がいままで見る限り、触っているエンジン、
車体に限ってこのように壊されています。
このようにダメ整備を施されるのですから、
長く、本来の調子で乗れるわけはありません
ですから当社はベース車両でなるべく改造していない
ものを買って、それを元に当社自身で人任せにせず、
作業するのです。
何してるか解らないものを納車はできません。
エンジンまるごと、フレームも人任せ。そんなのありえません。
あらかじめオーナさんからビトーR&Dにフレーム補強
をだしてと指定があれば、その時にだすくらいでしょうか。
といっても会社を初めて一度しか頼まれていませんが。

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