少量生産へのこだわり

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世の中には物があふれています。

その中で私は人と同じというのがあまり好きではありません。
遠くでぱっと見れば同じようなバイクでも、
近くで見れば品質が高い。仕上げが違う。音が違う。
乗れば走りが違う。

そういうものを当社のお客さんの皆さんには
乗ってもらいたいと思い、これ以上無理だと
いうところまで毎回作業を行います。

これ以上は無理なので、買ってもらった方に
ダメだと思われたら当社に実力がないといえます。

良いものが正しいので手造りでも機械ものでも
こだわりはありませんが、
古いバイクで結果にこだわるなら、
人が介入する割合は高くなります。

古いバイクのレストア、チューニングに対しては、
100%これは正しいと言えると思います。

正しい判断ができる人が正しく作業すれば
必ず結果がでる。

結果とは美しく、乗っても良く走り、そして壊れにくい。
その結果所有するオーナーさんがそのバイクを持つことにより
楽しい生活を得られることだと思います。

今回はマフラーのテールパイプ製作について紹介します。

当社のマフラー。
例えば溶接は、溶接ばかりしている人にはかないません。
曲げ。それ専門で一年中曲げている人にはかないません。
マフラーのパイプの品質。
マフラー専門メーカーに大量に搬入される物にはかないません。

当社でもどれもできるだけ良いものにしようというのは
当然ですが、私はそれらを最優先だとは思っていません。

車の塗装が世界最高品質で塗れていても、
デザインがゴミであれば、
カッコ悪い塗装が綺麗な車で、全然欲しくありません。
逆にそれをうたい文句にされれば少し恥ずかしい。

私の考えはどんなに今書いたことが優れていても、
そのマフラーを取り付けることにより、
結果良く走らない。
音が悪い。
カッコ悪い。(カッコは好みですが)

これは意味がないと考えます。

溶接が完璧でも、それ以外の部品寸法が悪ければ
カッコ悪いし良く走るようにはならない。

曲げが治具に合わせ完璧に曲げることができても、
元の治具が正しくなければ意味がない。

マフラーのパイプが最高に良いものでも
重い材料だったり、パイプ径が適切でなければ
何の役にも立たない。

大事なのはトータルで考えることで、
一部分だけ優れていてもそれは何の意味のなく
役に立たないということ。

マフラーだけで考えてるのではなく、
車体との組み合わせ、とくに機能的にはエンジンとの
組み合わせです。

どんなに良い溶接で、よい曲げ、よいパイプでも、
その車種、エンジンの中身、キャブ、点火系まで
考えてそれに合わせたものにはかなわない。
専用品ですから。汎用品は汎用品です。
無難に作るしかない。

そのエンジンに合わせた商品をつければ
あつらえものの良さが解る。そしてダメな物のことも解る。

私はそのことを当社のお客様にも知っていただきたいので、
小ロット、そのバイクに合わせて製作することに
こだわります。

 

現在組み立て中のMK2の、
マフラーのテールパイプ製作模様を紹介。

マフラーを写真で見て購入し、実際につけると
とてもかっこ悪い。ということがあると思います。
イメージと全然違うといいますか。

これにはきちんとした理由があります。

それは私たちが実際にバイクを見るときの目線を、
考えて製作するか、しないかで変わってきます。

また目線について意識があったとしても、
それについて具体的にどうすればよいか解っており
それが実現できるか、ということです。

これから書くような小さなことを下請けの会社に
「こうして」言ったところで一か所位はしてくれるかも
しれませんが、何箇所もは無理です。
「そういうこと事でしたら他のところで・・・」
と言われてしまします。しかもできるとしても高い!。

そもそもそういう小さなことは依頼する側も気づいてないから
頼んだりすることはないでしょうが。

そこで私がマフラーのテールパイプ部分を製作するときの
事を書きます。

当社のエンジンとの組み合わせでとてもよく走ります。
もう18年も特定の車種だけ造り続けていますから。
IMG_2748

チタンパイプを曲げる前。
一般的なものより太めのパイプを使っています。

これが細いと無難な出力特性となりますが、
面白さの面からこのサイズにしています。
無難なものが欲しい方は新しいバイクを買って
制御されながら乗ればよい。

太い方が偉いということではなく、
使うエンジン、また見た目も含めてトータルで
こういうもののサイズはきまりますので、
何が一番良い、というものではありません。

あらかじめ砂をパンパンに詰めてあります。
きちんと詰まっていないと上手く曲がりません。

またざっくりといえば、パイプが太い方が曲げる
ことが難しいと思ってもらって良いと思います。

テールパイプは50mmぐらいの物を使っている
ところが多いと思います。ちなみにテールパイプが
細くなると集合部もとても作りやすく、製作時間が
断然短くなりますが、私はそんなものには興味がありません。

この写真のパイプは60mmぐらいですが
10mm太くなると曲げの難しさは全然異なります。

また材料が薄いものも難しいです。
IMG_2754

曲げた後。私(タサキ)が曲げてます。
向かって右が集合部に近い方、
左がサイレンサー側になります。

曲げる時に実際に取り付けた時のことを
考えて曲げてます。

テールパイプは集合部からサイレンサーを
つなぐパイプです。
ですが仮に最初の曲げる前の写真のように、
まっすぐな状態から、集合部とサイレンサーを
つなぐためだけに曲げるのであれば、
折れ線のグラフのように、部分的にバーナーで炙って
曲げればよいです。

いわゆる機械曲げの様に曲げた(笑)手曲げ状態です。

集合部-直線-曲げた部分-直線-曲げた部分-サイレンサー
となるわけです。

これで造られたものが車体につけられると、
カッコ悪くなる。

手曲げであっても、直線部分がはっきりと残るように
製作すれば機械曲げと理屈は一緒で、
やはりカッコ悪い。この方が作るのは楽ですし、
時間もかからない。

それですと、車体に取り付けた時、マフラーとの
隙間のでき方が一定でなく、急に部分的に大きくなるので、
カッコ悪くなる。

結局車体に合わせて作らないといけないので、
寸法は自由にできるわけではありません。
そのいろんな制約の中で、テールパイプは
車体にまとわりつくように作る。
それはメガホンマフラーでも意識します。

車のマフラーや、カウルつきのバイクであれば、
見える部分だけそれなりにすればよいのですが、
古いバイクでマフラーが全部見える場合は
考えて造りたいところです。

具体的に言うと、
IMG_2756

まずこのドライバー付近の曲げです。
先ほど書いた、直線と曲げのみの製作であれば、
ここは直線で良いところですが、
私が作る場合はほんの少し上向きに曲げています。
解ってもらえるでしょうか。
IMG_2755

先ほどの位置よりもう少しサイレンサー側に近い部分。
ここも機械曲げのように造るなら直線でも良いところですが
ほんの少しだけ上向きに曲げています。

ここでその曲げたパイプ車体に仮付けします。

IMG_2760

これがだいたい真横からの撮った写真で、
この角度で全体を写せば、
マフラーの販売用の写真で撮られるアングルですね。

だからこのアングルなど売る側の都合のよい部分だけの
写真を見て購入して実際につけるとカッコ悪い。
がっくし。

先ほどの部分を曲げることにより自然なアールで
つながって見えます。これが直線の部分があると
車体との隙間のでき方で人間はそれを不自然に感じます。

では別の角度から。
車体の下に太い黒の線がありますが
溶接機のアース線です。
車体に曲げたテールパイプを組み付けて、
各部を確認した後にこの状態で仮付け溶接し、
はずしてから本溶接します。
いろいろ試し、なるべく良い状態にしてから
溶接するので、とても時間がかかります。

IMG_2765

私たちがバイクを見る場合、こういう上から見た角度になります。
こういう角度から見たときに、車体側の他の部品、そしてすきまとの
兼ね合いから、折れ線のようにつながったパイプだと、
とても不自然に見え、カッコ悪く見えるのです。

これは車種によっても違って見え、ローソン系などは、
サイレンサーの横への張り出しが少なく、高さも低めに
なりやすいので
(ステップからサイレンサー固定のステーがでており、
それによりサイレンサー位置がMK2系より低め、
張り出しが少なめになるため)
その欠点はやや目立たなくなります。

IMG_2763

こういう目線でも良く見ますね。アールが自然につながって
見えます。これも先ほどの曲げが効いて、自然に見えます。
この後、私が製作する時にどの角度から見ているか紹介します。

IMG_2764

IMG_2761

やや下から。

IMG_2762

やや上から。なにも変えていないのに見るアングルで
全然違うものに見えると思います。このアングルが
一番カッコ悪く見えます。
これはスプリングが付くとややましに見えます。

IMG_2771

このアングルはとてもカッコよく見えます。

IMG_2766

今度はサイレンサーの横方向の角度、これは車体と平行にも製作
できますが、少しだけ出口側が後ろにいくに従い外にでる方が
私たちが普通にバイクに接している時は自然に、カッコよく見えます。
これは車種、サイレンサーの形状などで変えます。

他社の物ですごく斜めになっているものもありますが
ほとんどの物はその方が楽に作れるからですね。
何も考えてない。
逆にモナカタイプのサイレンサーだと似合うものもあります。
適材適所です。

IMG_2767

同じ状態で別角度から見ると、全然違って見えます。
斜めになっているのが感じにくいですね。
これが車体に平行に作っていると、サイレンサーの入り口部分が
外に出ているように見えてしまうのです。これは旧車では
カッコ悪い。
ちなみにサイレンサーの筒、バンド、カラーは製作用の治具で
仮の物です。

IMG_2769

この角度からみると多めに外に張り出しているようにも
見えますが、実際にはこの角度から見ることは
ほとんどありませんね。

このように実際に車体に取りつけ、いろんな角度から
見てからその状態で仮溶接し、はずして本溶接します。

同じ曲げであっても、テールパイプのひねり具合などの
位置関係で(言っていることが解りにくくすいません)
大きく見え方が変わります。

ですのでいろんな角度から車体に取りつけた状態で見て
なるべく良く見えるようにしてから溶接します。
マフラーは単品で製作すれば、製作時間が
かなり短くできます。

ですが車体につけた状態で製作するのが
一番良く見える状態で製作できます。
写真を撮るのだって、よい部分が写るように
色々考えて撮りますよね。
それと同じです。なるべく良い状態で
所有してもらいたい。

またこれはサイドスタンドの傾きによっても
違って見えますし、バイクのリフトに乗せた状態で
見てしまうと、実際の状態と目線が全く違うので
意味がありません。

私たちが実際にバイクを見る目線でなるべく製作する。
これが大切だと思っています。

ですのでここ15年、車体を持ち込んでもらわないと
マフラーは製作しないのです。
せっかく作るなら、です。
走行テストもしたいですし。

IMG_2775

パイプの溶接が終わったところ。

このあともう一度、車体にこの状態まで出来上がったら、
仮付けし今度はスプリングフックの位置出しをします。

スプリングもフックも車体に取り付けた状態で位置決め
した方が、不自然なところが減りカッコ良く見えるからです。

IMG_2784

スプリングをフックを溶接し、取り付けました。

これでまた見え方が違って見えるとおもいます。
この機能部品も適当にしないことが大切だと思います。

私にとっては何本か作るうちの一本でも、
オーナーさんにとっては唯一の物。

IMG_2785

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こういうアングルから見るときは特にスプリング
フックの位置は大切です。

IMG_2788

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IMG_2790

どうだったでしょうか。
車体を持ち込んでいただく理由が解っていただけますか。

このあとサイレンサーの出口部分も
車体に実際に取り付けて、角度、長さなどを見て
その車体に合わせた物を取り付けます。

先ほども書いたように車体に合わせて作らないといけないため、
いろんな制約があり自由に、見た目も思いどおりに
できるわけではありません。
また実際にエンジンの性能も引き出さなくては
ならず、音もできるだけ良い方が良い。

その中でできることは何とかしたい。
小ロットにこだわる理由はそこにあります。

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