今回は自分の望むものを
簡単にあきらめないでほしい、
このことについて書きたいと思います。
前回はZ1000R2のエンジンのヘッド、
それの作業模様を紹介しています。
なぜこのような作業を含め、
多くの情報を詳しく公開しているかといえば
私の知識を皆さんと分かち合うことにより、
結論の出ない無理だと思うようなことも
解決が可能になってくると思っているからです。
今回はエンジン組立の続きをと思っていましたが、
時間が足りないため、内容を変更します。
嘘のないように考えて紹介しているので
文章を書くのに時間がかかるのです。
私がこういうことにどんくさいだけなのですが。
そのエンジンは昨日完成しました。
紹介している写真がそれになります。
組み立て作業に集中したかったので、
更新も伸びてしまいました。
楽しみにしていてだいた方がもしいれば
申し訳ありません。
まずは業務連絡から。
Z1000の形にして販売する、
77年式Z1000ltdの国内登録が
無事終わりました。
国内新規なので、今の段階では
3年車検です。
この年式はZ1000と元々、エンジン、
フレーム形状がほぼ同じで、なおかつ
マフラーのステー形状などがZ1タイプとなるため
スタイルが良い、そして金額が他の一般的な
車種のZ系の50万円ほど高いものよりも、
程度が良いのに金額が大幅に手に入れやすい金額で
入手できる今一番おすすめできる車種です。
ltdでも色々なタイプがあり、他の物ですと
一般的なZの形に仕様変更するために手間や、
部品が多く必要で、仕上がりに不自然な
箇所が生じたり、金額面のメリットも減ってしまいます。
程度がよく、金額が適正なものは数が意外と少なく
楽に入手できるものではありません。
今回のltdは大きな部品で言えば外装、シート、
ホイール、マフラーだけの変更でよく、
一般的な定番の整備メニュー程度で、
一般的なZにできます。
整備前の物ですが近いうちに紹介できると
思います。
良い物を入手しやすい金額で買うには、
車でも土地でも他の人がその価値に気付く前に
手に入れることです。
解りやすい例はFX750やZ1000などもそうですね。
以前に、当社でも手頃な金額で入手出来た時に紹介し、
多くの方が購入し乗られていますが、
全ての方が現在も所有され続けています。
当社ホームページ内のお客様の声を書いていただいて
いる方の中にもそれで手に入れている方がいらっしゃいます。
お客様の声の方は日頃皆様によく見ていただいている
ようで、感謝です。
ほんの10年前までは購入しやすい金額で
手に入っていたFX750、Z1000なども、
今となっては部分整備で乗れるほどの
間違いなく程度の良いベース車両は、
どちらも150万円オーバーです。
意外にZ2、Z1、Z1000R2など高額な
車両の方が割合的には手放す方が多いのです。
それだけ購入時に無理しているのかもしれません。
あいかわらず、横道にそれっぱなしですが、
さて本題のあきらめないで欲しい、という話です。
実際に乗ると楽しいから頑張りよ、
的な感情的な部分だけでなく、
冷静に考えても、メリットがあると思います。
今までに当社にお問い合わせいただいた方や
実際に古いバイクを購入した方にお話を
聞いた際に、その方達が悩んだり考えたりした
時に問題となったところは何?という部分で、
ほとんどの方が言われていたのが
単純にこの2つです。
①購入時の金額が高い。
②購入後の故障が心配。
あとは家族の許可が(笑)
なんて人もいますが。
①はいろんなことがからみますから
後で書かせていただくとして、
②の購入後の故障が心配は全くの誤解、
つまり故障は少ないのが本当です。
車種や年式にもより違いはありますが、
当社の取り扱い車種のような
70年代以降の国産バイクは、
4サイクルのバイクの基本要素が
設計的にも生産の面でも安定してきた頃です。
なおかつ構造がシンプルで、余計なものが
ついていない。
またあまり無理をしていない設計のものが多く、
メーカーにより違いがあるものの
多少何があっても走れるようなマージンが
多めのものが多い。
それに甘えてデタラメな整備で
お金をとっている店もありますが。
つまり少々しくじっても走るわけですね。
ですがボアアップしたはずなのに
作業が雑で全然前と変わらない、
なんてことが起きるわけですが。
それでもバイクが走ってくれるのは
元々のバイクが良いおかげと
言ってもいいと思います。
また車体全体を見てもここは分解できない、
という箇所がほぼなく、
ほぼ全ての箇所で修理、整備が可能です。
電気系、配線なども全て原因を追うことができます。
しかもバイクメーカーが違っても
この頃の古いバイクたちは似たような部品を
使っていることも数多くあります。
ということはあらかじめ必要な部分ほとんどの
整備が可能ということです。
でも世の中的にはネットでも、
紙面でも故障のことが多く紹介されています。
多くの人が故障にあってしまっているのは
事実だとしても、
それがなぜ起こるのかといえば、
それら必要な部分の整備は全てできるのに
整備していないから、あるいは間違った手段で
作業され、きちんと正しい技術で整備を
していないからと、断言できます。
後で写真で紹介しているネジ山の修理のような
もんです。
あるいは分解できるのをいいことに、
触らなくていい箇所に手を加えてしまうから。
余計なことをしてしまっているのです。
そうかと言って、
実際に古いバイクをまるごと1台
全てバラしてまじめに整備をすると、
やっぱり金額は高くなってしまいます。
当社のフルレストア車も安くありません。
これは整備プラスさらに綺麗にしているわけですが。
フルレストア車の販売価格は、
金額が高くても、だいたい2台に1台は赤字。
これが当社の現実です。
手間(時間)があまりにかかりすぎるのと、
部品代がかさんでしまうからです。
特に持ち込み車両は予想を超えて
壊されている部分が多く、フルレストアはほぼ赤。
もう1台はトントンぐらいです。
好きでないとやってはいられない。
完成すると、どのバイクもいいんですけどね。
それに加えチューニングだとなれば
いくらまとめて作業するから効率が良い
といっても、尚更金額が高くなります。
ですが長く古いバイクのフルレストア、
チューニング、重整備やレストアに
携わってくると、いわゆる古いバイクの整備で
勘所というものが解ってきます。
ここだけは整備をしておいたほうが良い。
部品を交換しておいたほうが良い。
お客さんが望まないのであれば
ここまではしなくても良いという部分です。
これを生かして作業すれば
費用は大きく下げられるのです。
ここで出てくるのが、
①の購入時の金額が高い。
という問題です。
つまり、こうでなければいけないと、
部活の間違った指導のように頭を使わないで
ただ単にメニューをこなすようなものではなく、
実際のサッカーの試合のように
現場で(現物を見て)選手が柔軟に対処すれば
金額は下げても十分に良いものが
手に入れられる可能性があるのです。
要は人の選んだメニューでなく、
自分の頭も判断に使う。
欲しいバイクや、受けたいサービス
(修理や点検、オーバーホールやチューニングなど)
があるのなら簡単に諦めたりしてはいけない
のです。これを強く言いたい。
エンジンのフルオーバーホールしたい。
問合せをしてみる。
当社ではカワサキZ系で130万円です。
ただ金額を言われて予算オーバーだったら
簡単に諦める。
これは普通そうだと皆さん
言われるかもしれませんが
私はそうだと思わない。
フルオーバーホールとは
エンジンの見た目、そして機能面でも
新車のように、あるいはそれ以上に
することです。
ですが本当にみなさんに必要でしょうか。
ただ単に出先で止まるのが嫌で
調子良く走りたいだけと、
いう方もいるのではないでしょうか。
エンジンをすべて分解して作業しても
フルオーバーホールほどの作業が
必要ないのなら、それはフルオーバー
ホールではなく、エンジンを分解しての
メンテナンスです。
それが悪いとか劣るとか考えるのではなく、
必要充分な整備をしてもらう、と言える方も
実はたくさんいるのではないかと思っているのです。
だったらオーバーホールで依頼せずに
まずはメンテナンス、整備で話を
してみたらいいと思います。
だったら、純正キャブでも走れる場合も
あるかもしれません。
ただ、100万円で、130万円の仕事をしろ、
それが無理なだけなのです。
予算が不足しているときが、
私を含め誰でもあると思います。
そのときはカッコつけず予算をそこまで
かけられないので、
なにか方法はないでしょうかと正直に
聞いてみるのが良いと思います。
つまり値段を下げてと言わずに
正直に相談するのです。
それで対応が悪い店ならそんな店はクソ
(口が悪いですね)なのでとっとと
別の店を探せば良い。
また金額が高くなるのは、お客様側の
目的がぼやけていることも多いです。
まずは目的をはっきりすること。
これが曖昧だと、注文を受ける側としては
どこに注力していいかわからないので、
予算の配分が決められなくなる。
車両購入で言えば、
Z1が欲しいのか。
調子の良いZが欲しいのか。
では出す答えが全く違ってきます。
だから返答も踏み込んだ金額が出せず
中途半端なものになる。
何を優先なのかをはっきり店側に伝えることで、
予算オーバーで手にできないと思われているものも、
実は手にできたりするのです。
整備で言えば、
いま調子が悪くまともに走れないものを
走れるようにしたい。
というのと、
調子が悪いのでエンジンの
フルオーバーホールがしたい。
というのでは目的がまるで違います。
そして大切なのはくだらないことに
お金を使わないということ。
これは結果のでないことにお金を
使わないということです。
エンジンフルオーバーホールするお金は
ないが、手元に20万円あったとします。
人間、手元にいくらかあると何かに
使いたくなります。
この時この20万円を使うのが
悪いわけではありません。
エンジンをオーバーホールする前に、
キャブレターを交換したり、
点火系をポイントからフルトラにして、
オイルクーラーをつけたり、
エンジンオーバーホール後に
その性能を発揮できるように
しておくというのは生きたお金の
使い方ですが、
店にすすめられたからといって、
腰上だけを分解して、
つまらない安物ピストンを入れて
ボアアップした。
これほどつまらないお金の使い方は
ありません。
まともな店であれば、
オーバーホールする際には
その店の自信のある取り扱いピストンを使い
ライナー打ち換えボーリングして、
作業します。
だとすればその安物ピストンと、
ボーリング代、その他の作業した工賃等
その20万は捨てたのと同じになります。
こういうつまらない作業だと
ボーリングの際のクロスハッチの加減が
デタラメで返って白煙を吐いたり、
調子悪くなる可能性も高いでしょう。
全くの捨て金になります。
その20万円を活かせる店と
そうでない店があるということ。
それを知っていて欲しい。
お腹が痛い人に頭痛の薬をあげても
治りません。
最近、不思議と同じような話が重なるのですが、
手持ちの気に入ったバイクが有るのだが
もう一台買おうとした。
だけどやっぱり条件が合わない、
あるいは今持っているバイクを手放すことが
心情的にできないので、
(その気持ち大変良くわかります)
今持っているバイクのオーバーホールと、
マフラー製作など、手を加えることにした。
という方がいらっしゃいます。
私はこの考え方に賛同します。
予算の面では新しく買うよりも、
今のものに手を加える方が、金額が
下がるのは言うまでもありません。
ですがそれ以外にも理由があります。
それは今持っているバイクの良いところを
知らないまま、手放す方がとても多いこと。
先程も書きましたが、
プロならではの勘所というものがあります。
中古で買えば最初から調子の悪いことも
あります。
ノーマルのままで、それが世間的な
わけのわからない理由でそのバイク本来の
ポテンシャルを発揮できていない時も
あります。
カスタムされていても、
使われているパーツが本来の力を
発揮できていない時もあります。
古いバイクには
魅力があるバイクがたくさんあります。
自信を持っておすすめできる車種が
たくさんあります。
それを買えるのが一番かもしれません。
ですがあなたの持っているバイクを
忘れてはいませんか。
まず一番大切なのは、
現状を確認。
正しい情報で、正しい技術で対処する。
そのバイクの良いところを
理解して、
悪いところ、弱点も理解する。
その上でそのバイクを少しずつ
磨いていけば、もっといいものを
確実に手に入れられます。
後ろに下がることなんてありません。
諦めるのはまだ早いと思います。
もう少し粘ってみませんか。
もし本当に悩んで相談したいことがあるなら
増井でなく直接私(田崎)まで
電話をいただければと思います。
今日の最後にダメ整備士を見抜く
ネジ山の修理について書きます。
先に紹介している完成したZ1000R2の
エンジンのジェネレーターカバーを
取り付けるメネジ部分の修理の写真です。
エンジン組み立て前に行っています。
ぱっと見、それほど状態が悪いようには
見えませんが、中には折れたボルトが
残っています。
どこかのダメ整備士がダメ修理をしたせいで
ボルトのセンターの位置はずれ、
穴の系がはるかに大きくなり、
奥の方に少しボルトが数山噛むところが
あるだけでまともにボルトを締め付けられる
状態ではありません。
エンジンを組み立てるには、
1本1本ネジ、ボルト類を締めていかなければ
いけません。それが繰り返されて1機の
エンジンが完成します。
つまりきちんと適切なトルクで締められてこそ、
エンジンが本来のきちんとした状態で組み上がる
わけです。
つまりこのようなネジ、ボルト類の修理を
デタラメにしかできない人、
こういう小さい作業を雑にする人は
まともな整備なんかできるはずもないのです。
もしネジ山の修理がきちんとできない
整備士がまわりにいたら、その人は自分で
整備はできないと言っているようなものです。
素人の方ならまだしも、ネジ山の修理が
できない人はプロではありません。
整備は100%頼まないほうがいいでしょう。
この写真は残っていたボルトを
取り出したところ。
小さなかけらがたくさんあったのですが、
取り除いている時に吸ったので、
この写真の大きいもののみ残りました。
これが奥に残っていたボルトのかけら。
かけらを取り除いたところ。
一見それほど穴径が大きくなっているようには
見えませんが、センターの位置がずれているため、
通常のネジ山修理に使うヘリサート、
タイムサートは径が小さく使えません。
そこで使うのがこのビッグサートです。
中身はこのようになっています。
まず実際にカバーをあてがって、
穴の位置をどこにするのがよいかを
確認します。
センターがずれてしまっているので、
それを先ほどのカバーに合わせて
センターの位置を修正したあとに、
ビッグサートキットに付属している
ドリルなどで下穴を開け直します。
この写真がその時作業後。
ネジ山を切り終えたところ。
この写真の部品が先ほど
ネジ山を切ったところに挿入する
部品です。
これが先ほどの部品を入れたところ。
ボルトを入れて確認。
ジェネレーターカバーをつけて、
トルクをかけ締め付けの最終確認。
きちんと治りました。
もしビッグサートキットでも
ダメなもっと大きな穴になっていたら?
そのときは自分で挿入する部品を作って
治します。
それでもダメなぐらいボッコボコに
壊されていても、何とかします。
大変ですけど。
ネジ山修理を雑にする人に
まともな整備士なし!
ではまた。
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