CBX1000の話など

先日紹介していたZ2は売約済みと
なりました。
お買い上げいただいたS様、
ありがとうございます。
 
その他にも、
たくさんのお問い合わせをいただき
ありがとうございました。
今回の最後に販売車両Z1のお知らせが
あります。
 
CBX1000の作業依頼を2台いただいて
います。
一台はフルコンプリート、
もう一台はエンジンを除いた
コンプリート車製作です。
レストアが含まれます。
 
MK2の事故修理を最近までしていましたが、
すぐにニンジャの作業をしないと
いけないのでその準備期間の間、
CBX1000のチタンマフラーを集合部まで
製作することにしました。
ぎっちり予定が詰まっているので
ここしかないというタイミングです。

 

 

 
今回の2台は程度の良い物を持ち込んで
いただいているので、
ベース車両仕入れの苦労はありませんでした。
ありがたいことです。
勘違いされると困るのですが、
車両の持込は大歓迎です。
(状態により受けられないものが
ありますので、依頼時に写真を
送っていただくことになります)
 
CBX1000も以前は車両価格が
安かったものの、今はかなり高騰して
いますし、部品の欠品がとても多いので
欲しいと思っても強い思いがなければ
なかなか難しい車両となっています。
それだけに存在感はあります。
 
私自身、足回りの良いパーツが
出てくるまでは、ノーマルマフラーでも
いい音するなぐらいで特にCBX1000に
興味があったわけではありません。
足回りが良くないと音だけ良くても
楽しめないからです。
 
水冷エンジンで同じく6気筒モデルの
カワサキZ1300コンプリート車両に
ビトーR&Dで働いていた時
乗ったことがあるのですが、
(ホイールはこの時ノーマルでした)
乗っていない時の取り回しがとにかく重い。
 
乗ったままの後ろに下がるなんて
足の短い私には全くできません。
乗って、前に走る分にはそこまで
ないのですが、重い感じはします。
 
このことから6気筒モデルは重いと、
頭から離れていない状態になっていました。
 
普通の4気筒モデルが重いなんて言っていると
Z1300に乗っている人からみれば
何言ってんの、ぐらいの感じでしょう。
 
もちろんいったん走り出してしまえば
取り回しの重さから考えると
普通に乗れますし、
6気筒から得られる独特なエンジンの回転感、
さらに心地よい音と、繰り返しになりますが
重さがなければなという感じでした。
 
今はZ1300もマグタンが作られている
はずなので、ばね下が軽量化されれば
大きく印象は変わるのではないかと
思っているのですが、
まだ乗ったことはありません。
 
そこでCBX1000です。
こちらは空冷で、フレームも
ニンジャのようにダウンチューブがなく、
駆動方式もシャフトでなく
一般的なチェーンです。
 
足回りは脆弱で、このエンジンを積んで
走るにははっきりと役不足です。
エンジンから車体まで、強くしっかり
している箇所がない感じ。
ところがその分、Z1300よりも
取り回しも、乗っても軽いのです。
 
感覚的には4気筒モデルと
それほど大きく重さが変わりません。
つまり、一番の苦となる部分がないわけです。
 
ノーマルで乗っていると、いかにも
足回りがたよりない印象を受けますが、
ふと下を見ると大きくはみ出した
エンジンが見え、特別なバイクに
乗っているんだという気持ちになります。
こういう無駄な部分が人間そのものですから、
生きている実感が湧く時でもあります。
 
特に負荷の高くないペースで
走っている時でも、油温はノーマルで
4気筒空冷モデルよりもやや高め、
印象としてはカタナ1100に1230ccの
鍛造ピストンを組んだ時ぐらいの印象で、
発熱量は高めです。
 
ノーマルでもアイドリング時
故障でもないのに腰下から違和感の
ある音も出ていますし、
エンジンに元々余裕はない、
チューニングには向かない感じです。
といっても他のCB系などもそうですが。
 
印象としては構造から言っても
良い鍛造ピストンで軽いボアアップと
ポート研磨、
オーバーホール仕様で乗るのが
良いでしょう。ツーリング向きの
バイクです。
このバイクに良いマフラーを付け
空いた道で上まで回すのは
快感でしょう。
 
そんなエンジンで特に大切に
なるのが吸排気系です。
キャブはFCRを使うとして、
今回ご注文いただいた2人共、
当社でのマフラー製作を希望されて
いました。
 
新規で製作するとなると4気筒モデルより
手間がかかり、難しいのは明らかで、
間違いなく製作時間、材料代、
治具の製作も含めると作る前から
赤字になるのがはっきりと解ります。
 
今回も今依頼を受けている2本のみを
作る予定で、今後マフラー単品で販売する
予定はありません。
 
注文を受けた時には、
技術的には作れないことはないだろうなと
いう感じでした。
また今回はマフラー単品ではなく、
車体コンプリートの受注なので
利益が大幅に減りますが、
赤字分は何とかなるかなと考えました。
 
また依頼を受けてから、私自身が
6気筒モデルのマフラーを作ってみたいと
いう気持ちが起こってきたのが製作する
ことにした一番の理由です。
ただ、製作する前にあらかじめデータを
とっておき、各部品をあらかじめ
作って充分に準備をしておく必要が
あります。
 
今回も他社製品も含め
実際に購入したり、走ってみたりして
色々調べたのですが、その結果
解ったことは、売られているものの多くが
作り易さをかなり優先して作ってあると
いうことです。
 
実際に製作してみて、
特にそのことが良く解りました。
で、作り易さを優先すると、
大きく2つの面でデメリットがあります。
 
まずカッコが悪くなる。
(安っぽく見えるのも含めて)
見た目は好みの部分がほとんどですので
これが良い、これが悪いという白黒はっきり
という事ではないのですが、
普通の車でも車高が高くて
タイヤが細ければ、車好きの方から見れば
カッコ悪い、みたいなもんです。
 
作り易さを優先するとどうしても
誰が見てもなんかいまいちとなる。
特にCBX1000はエンジン腰上が
前傾しているのでマフラーの曲げが
緩くなりやすいのでメリハリが
なく見え、余計にそういう感じになります。
 
あと、ものすごく大事なことで
音、音質が悪くなる。
これは外から見ても集合のさせ方なんかで
大体わかります。
外観6-1のものは音を良くしやすいの
ですが、(中に仕切りの板が入っている
ものでも)
パイプ6本から2本になり1本になる
6-2-1タイプは厳しいですね。
マフラー専門メーカーで
溶接などが抜群にきれいでも
構造上これは音が集合音には
ならないので。
そんなものは私は欲しくない。
音は重要。

 
当社のものは今回6-1で、
内部の仕切り板もないタイプに
しましたが、こうすると排気干渉など
で多少良くない部分もあるのですが、
元々CBX1000は排気量が大きく、
キャブも今回はFCR、トルクも充分に
あり影響が小さいので、
(ボアアップして、ポート研磨すると
もっと小さくなる)
音の良さを優先します。
 
といいますか、6気筒エンジンのバイクは
音の良さにこそ価値があるバイクですから。
 
次に、製作し始めても時間が必要ですし、
一旦作り始めるとキリのいい集合部完成
までは作業を辞められないため、
その時間がとれるタイミングまで待つ
必要がありました。
 
それまで他の作業をしたくても
車体をばらすこともできず、持ち主の方は
まだかな~という感じになるでしょう。
結果かなり長く製作できるまで
時間を要しました。
 
それで出来上がったのが
今回紹介している写真です。

 
6-1集合だと右のバンク角が
どうしても厳しくなります。
今回はノーマルを基準に作りました。
もう少し深くすることはできたのですが、
オイルクーラーのホースが
集合部の後ろにあるため、
念のため少しすき間を開けました。
 
また、もし寝かしていって擦った時には
一番最初にスプリング部分が路面に
あたるようにしました。
それだと修理がしやすいので。
 
パイプの焼け色をもっと残す形状に
しようかと思いましたが、
そういう物は他にもありますから
今回それは辞めて、パイプの形状の
方を優先しました。
火で炙る範囲が広くなればなるほど
焼け色がつく部分はなくなっていきます。
かなり時間を要しましたが、
何とか完成できました。
 
テールパイプとサイレンサーは
4気筒ものと、特別違いませんから、
テスト用のものを付けて確認し、
後日製作します。
集合部まで完成するとやはり
特別なものを感じます。
 
話はかわります。
私は約20年前に今の仕事を
立ち上げました
 
昔からですが、
好きなことが仕事でいいねと
よく言われます。確かにそうです。
好きなこと以外はしなくていいように
突き進んできました。
それはそれなりに覚悟も必要で
いつもお金の面では大変になるのですが。
 
おかげさまで、
仕事の依頼は途切れなくいただいており、
ご注文いただいている皆様に
とても感謝しています。
 
実はその中で、結構ご依頼を
お断りする時もあります。
 
理由はその時々で様々なのですが、
取り扱い車種でなかったり、
依頼者の希望の内容と、
私たちの得意な方向性が違ったり、
納期が合わなかったり、
赤字になると解っているものなど
色々あります。
 
あと、こちらの段取り無視の
時間を大切にしてくれない人は
断ります。
何度も書いていますが、
事前連絡なしにいきなり来店してくる
のは本当に困ります。
 
御自分がとても忙しい時に、いきなり
職場に訪ねてこられたら困りませんか。
今日しなくてはいけない仕事が
あるはずです。
 
その中で特殊なのは
内容が楽しくないから引き受けない、
なんてことがあります。
つまり、うちでなくてもいい、
というような内容の時です。
実はこれの比重が大きいです。
 
私は会社を大きくしたいとも
思っていないし、
むしろ人も雇いたくない。
これの理由は簡単で、人を教えることが
私には向いていないから(笑)。
 
キレイごとだと言われるかも
しれませんが、売り上げや
利益は大切ですが最優先ではないわけです。
つまり会社が回っていけばよい。
 
つまり、やる気の出ない、やりがいがない、
楽しくない仕事はしなくてよいと言うことが
最も大切だと言えます。
 
また作業環境が悪いのも嫌なので
(暑い、寒い、うるさいなど)
なるべくそうならないようにしました。
腕の良い整備士は、それが必要な
お客様にとっては誇り高き仕事なのに、
悪い環境で働いているのはあんまりだと
思います。それでは良い結果も出ませんね。
 
先ほど書いたCBX1000のマフラーなどの
ように赤字で自腹を切ることになっても
したいと思ったら引き受けます。
また作業をしていると
どんどんエスカレートして、
最初の予定よりバイクを良くして
納品してしまいます。
 
仕上がりが良くなっても、
最初の見積り以上に追加の費用を
請求するわけではありません。
(最初に追加費用が生じる可能性が
ある時は、そのことを説明をしておきます)
 
私自身、他社さんの最初の見積りと
納品時の請求額が全く違う、
そういうことはおかしいと
思っているからです。
 
それだったら最初の見積りの意味なんて
ないじゃないですか。
 
なるべくやりすぎないように
注意していますが、
先日納品した事故修理のMK2も
最初の予定よりかなり良くして
しまいました。

 
実はそのMK2、外装の修理もしたかった。
サイレンサーもきれいに治したかった。
シートも良くしたかった。
ですが、事故以外の悪い部分が、
さすがに多すぎて、すでにサービス
しすぎていたので、もう1円も、1分も
使えないという状況だったため
しなかったのですが。
次にこのMK2が雑な扱いを受けて
ボロになっていたら2度と仕事は
しないですね。
 
以前、会社を興すとなれば
売り上げを上げて、利益を得ることが
全ての最善で、という事になっていたと
思いますが、私は昔から趣味の世界では
それがすべてではないと思っていました。
好きなことを仕事にできることが
大切で、それが続けられるように
工夫をする。
 
以前勤めていた会社では
部品を何でも、色々な車種、
売っています。
実はこれ、私たちにとってはとても
メリットのあることです。
 
欲しいと思うものが欲しい時に
お金さえ払えば買えるわけです。
私たち個人でたくさんの部品を
在庫しなくてよいわけです。
 
ですがそうなると会社側は
たくさん部品を作り続け、
常に在庫しなくてはいけません。
そのためにお金、設備、人、スペース
などたくさんのことが必要になります。
 
中で働くと良く解るのですが従業員も
経営者も本当に大変です。
当然働いていると、好きでない
仕事もたくさんあります。
 
私が働いていた時は、勉強、経験を積むために
働いていたのでそれ自体苦ではありませんでしたが、
長く務め続け、好きではないことをし続けるのは
したくないと思っていました。
あれしなさい、これしなさいと言われるのも
性格的に向いていません。
 
ですので独立して一番大切にしていることは
大変でも、好きなこと、楽しい、
面白いことをする。
やる気の出ることを仕事にすることです。
 
楽しい、やりがいのあることしかしませんが、
実は楽なことはほとんどありません。
 
とにかく古いバイクがらみは面倒で、
大変、手間がかかることが多い。
 
うちで一緒に働いている増井君にも
できるだけ好きではない仕事はしなくてよい、
という方向に持っていけるように少しづつ
変化させ続けています。
 
ですが、この仕事は面白い。
好きなバイク、興味が持てるバイクだけ
入庫させ徹底的に整備やレストア、
チューニングしたりして、
実際に乗ってどのように仕上がったか
自分たちで確認、感じることが
できる。
自分で体験できることが
最高の贅沢です。
 
CBX1000のマフラーを作るのもの
大変ですが、面白い。
ですが何本も売れたとしても同じ商品を
作り続けるのは退屈。
だからマフラーの値段を上げて
それで売れて儲かったとしても、
単品で何本も売ることに興味は
ありません。
同じことをすることに興味が
ないからです。どんどん良くしていきたい。
ですから先日売れた20年前製作のZ2も
そのままではなく、20年分の私たちの進化を
加えて納品します。
 
あくまでマフラーはバイクを
完成させるために必要な一つの部品であり、
すべての部品がそろって完成したときに
どのように走るかが大切。
 
そして見た目もなるべくよくして、
できるだけ壊れないものが良い。
そういうものを作ることが面白い。
 
エンジンだけ良い物を作る。
マフラーだけ作る。
セッティングだけする。
一部だけいい物を作る。
 
そういう事には興味がないわけです。
それぞれ良い部品を積み上げて、
できるだけ丁寧に組み上げて、
良く走ってなるべく壊れず、
トラブル少なく長く楽しめるものを
作る。それが面白い。
 
こんな変わったやつが一人ぐらいいても
いいのでは?そう思っています。
なんせ年に4台しか納品できない
ペースですから。
 
勤め人の時であれば
上司に言われれば基本仕事は引き受ける
ことになると思います。
 
ですが自営、自由業になると、
断ってもいいわけです。
それで収入が減って困るのも自分で
回りに迷惑がかかるわけではありません。
ですので、断れるというのは
実は独立して一番の良いことかも
しれません。
 
また同じことをするのを好まず、
どんどん新しいことを加えていくので
ブログ、フェイスブックのネタには
困りませんね。それもいいことです。
 
最初に書きましたが、
本日の最後にお知らせです。
この写真のZ1が入庫、販売予定です。

当社でフルレストアし、
昨年末に納品したばかりのものです。
納車して1年未満で、
写真はそのときのもの、
製作模様の詳しい写真1500枚以上
など全てあります。
 
Z2が売れた日にこのZ1の持ち主の
方から連絡がありました。
残念なことに今の持ち主の方は
体調が悪くなり乗れなくなったため、
当社にて販売することになりました。
 
入庫しましたら、再度紹介いたします。
入庫して状態確認していないので
まだ金額が決まっていませんが、
いつものように問い合わせが早かった
方を優先させていただきます。
 
問い合わせは当社ホームページの
問い合わせフォームからお願いします。
http://tasaki-tuning.com/contact/index.html

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