古いバイクの整備をする時の一番の難しさは、今まで経験のなかった問題が毎回のように、さも当たり前に起きることです。そのたびに柔軟に対応しなくてはいけません。
すでに過去に作ったことのある新品の部品を再度作る時には、以前の工程をまねたりしながら部品を作ることができます。その中に手作業、例えば溶接のようなものが入っており、最初はあまりうまくできなかったとしても同じような工程を繰り返すにしたがって上達していきます。
ところが古いバイクの整備やレストアとなってくると、元々のバイクの状態はバラバラで毎回のように信じられない問題が起きます。
それは販売された時から現在に至るまで、長い期間の間に何度も行われた間違った整備、そうでなくても長く乗っていなかったり、保管の仕方が悪かったり乗り方が悪くて傷んでしまったりで大きく整備前のバイクの状態が異なるからです。
したがって年式が新しい物や、改造されにくい車種、ノーマルに近い物でばらした回数が少ない物の方が整備前の状況としては良いものが多くなります。
特に間違った整備で人為的に壊されてしまったものは事故にあったバイクのような物で、まともに使える状況に戻すのはとても難しく、まず状態を良く見てどのように修理するのか考え、またその方法で実際に治せる技術、設備はあるのか、部品は手に入るのかなども問題になってきます。
アイディアは良くても実際にできなければ何の意味もないですから。口だけで眺めているだけでは一つも良くなってくれません。行動しなくては。
この時に整備士の実力が問われます。まず壊れている、調子が悪い、消耗しているなどが解るという事がすべての大前提です。
これが解らない整備士のなんと多いことか。ある意味問題のある箇所が解るという事が、一番センスが問われることなのかもしれません。
そして依頼する側のお客様が、基本整備士であれば誰でも、ある程度きちんと整備の仕事ができると思っている方も多いようですが実際はそうではなく、できない人もたくさんいるという事を頭に入れておく必要があります。
整備士のはずなのに信じられない間違ったことを平気でする人もいます。
つい先日も他店でスイングアーム(ノーマルより少し長い)が変更されているバイクで、チェーンがピンピンに張ってしまっているものがありました。よく取り付けてたなというくらいピンピンです。
スイングアームをノーマルのものから社外品に変更したときに、本来なら少し長い社外品スイングアームに合わせて、チェーンもリンク数が多い長い物に変更しなければなりません。それをせずに、無理やりギリギリチェーンをかけられる長さだったためそのままにしてやがったのです。アホか!
ですので、そのチェーンを取り付けると遊びが全くない状況になり、一切サスは縮むことができなくなります。こんな信じられないことを平気でするアホ整備士もいます。それもその辺にゴロゴロいます。理由は以前書きましたね。
話がそれましたが、
専門外の車種だったりすると整備士の免許は持っていても素人さん同様になったりすることもあります。
専門の取り扱い車種でも古いバイクは生産するにつれたくさん改良されていたり年式で異なる部分も多く、輸出モデルであればその輸出先で同じ車種でも内容が違ってきたりします。調べようとしても実際に経験を積んでいなければ対応できないことが沢山あるのです。
結局実際の世の中と一緒で、平時で問題なく過ごせている時は、人の後ろに並んで頭を使わず言われたことだけやっていてもそれほど問題はおきません。
ですがいったん問題が起きた時は、状況を見てなるべく正しく判断し、直ちに行動しなくてはいけなくなります。運も必要です。
趣味のものではありますが、古いバイクの整備、レストアは結構頭の使うことで、新しめのバイクの整備や車検などのように流れ作業的にこなせるものではありません。しっかり考え、正しい判断をして、良い修理やレストアなどしなくてはいけません。
ですが実際には70年代以降の古めの国産バイクは(海外のものは知識がないので)いったん正しくまとめて整備やレストアを施せば、問題はほとんど起きなくなります。
全く一切何も起こらないなんてことは言えませんが、快適になるための装備など余計なものがほとんどついておらず構造がシンプルなので、機械、電気的な整備が正しく行われていれば後は取り扱い方法がある程度あっているとほとんど何も起きないのです。
当社でも納品後にお問い合わせなどは時々ありますが、ほとんどは今までの経験からくる心配のしすぎ、取り扱い方法の誤り(ガソリンがキャブ入っていない、低い回転で乗りすぎるなど)がほとんどで、少し意識して乗ってもらえればすぐに解決し、長く調子よく乗ることができます。
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