日頃レストアや整備の仕事をしていると
細かいところまで気を付けて作業せざるを得ません。
当社の発信する情報の中にも、
最近少ないですがこういう細かいところまで
気にして作業しているぞと言わんばかりの内容を
紹介していますし、
また当社以外のyoutubeにしろSNSでの発信でも
細かい部分にも気を付けて作業してこだわりが
感じられる、だから偉いのような風潮です。
実際には当社のように車体全体の作業を
紹介せず部分的に自社の都合のよい所、
得意な部分のみを紹介しているように見えますが、
今回はそれについて悪態をつきたいわけでは
ありません。
どんな会社も自社の良い所を
アピールするのは当然で、買い手側が
自分に合った店を選べば良いわけです。
情報発信がなければ選択のしようもないですが。
確かに良いバイクに仕上げようとすれば
整備、チューニング、レストアにしても
結局は細かいところまで配慮して作業することが
必要になります。
細部を軽く見ていると良い商品にはならない。
私が皆さんに提供したいのは細部にこだわるから
偉くてスゲーバイクではなく、運転して楽しく
また乗りたいと思う心躍るバイクです。
細部は大切でおざなりにしてはいけませんが
そのこだわりがお客さんにとっては
どうだっていいこともある。
当社の販売しているバイクは
ただの移動の足としてのバイクではないので
スポーツ寄りのバイクと言えるかもしれません。
例えばノーマルのZ1はそういうイメージが少ないかも
しれませんが、そう言う意味でカワサキZ1は
間違いなくど真ん中のスポーツバイクだと思います。
(スポーツモーターサイクルという方がいいのかな?)
そしてZ1から、Z900、Z1000、Z1000MK2と
進んでいくうちに市場の声を聴き改良され
安定方向に振られていきます。
これはどのバイクもそうで、初期モデルほど
スポーツ寄りで尖っているものです。
それが年月が進むにつれメーカーの作るものも
規制も増えますし、どんどん無難な物、
元々は尖ったスポーツカーといえども角の取れたものに
なっていきます。GT-Rですらそうですから。
能力を使うのは難しいけれど
とりあえず誰でも動かすことはできるもの、ですね。
ですから古いバイクは尖っているものも多く
運転して面白いものが多い。
ですから金銭面で余裕がある方は
Z1だけでなくその後の年式のモデルも
手に入れたくなったりする。
その気持ち良く解ります。
私が思うに壊れにくさや、運転がやさしい、
外観が美しいという事はあったらあったほうが良い
大切なことで、細部の作業も大切にしますが、
それはバイクの魅力をより分かってもらう
手段の一つであって最優先事項ではない。
スポーツバイクであっても、しょっちゅう
壊れていては話になりませんし、
乗り心地もあまりに悪くてもいけませんし、
運転があまりに難しくても乗ることができない。
それでは困るわけです。
さらにシートが低く足つきが良い、
振動が少ない、マフラーの音が静か、
最近ではスマホにもつなげられて便利。
作業ではなく、これらのことも
バイクにとって細かい部類の話だと思います。
よく私もそういうことを書いています。
どれもひどければとても乗る気にはなれないが
これ等の事ばかり気にしてそれをすべてに
優先するならスクーターに乗るしかない。
一つの何か優れたものを得たいなら
何かを我慢し他を優先すべき時もある。
そのバランス加減を考え、提案することも
私たちの大切な仕事です。
スポーツバイクの楽しさは、正しく、
タイミングよく操作できた時に
思ったようにバイクが動いてくれて
上手く操れたと感じる事ができることだと思います。
上手くタイミングが合って
ギヤシフトがスパッと決まった時は楽しく、
無駄に何度もシフトチェンジしてしまいませんか。
それを得るためにはあまりに振動を
気にしすぎて、エンジンマウントが
ユルユルではそれはかないません。
アクセルをガバガバ何の考えなしに開けても
なんとか加速するようなキャブがついていては
そのシフトも経験できません。
良くそういうキャブやインジェクションから
FCRキャブレターやTMR、CRスペシャルなんかに
乗り換えた時、
完璧にセッティングがあっているのにもかかわらず
息つきしたなんて聞くことがあります。
その時にはエンジン回転が低すぎるか
選んでいるギヤが高すぎるか、
アクセルを急に開けすぎているという事です。
初めてバイクの声を聴いて正しく
運転するチャンスを得たわけですね。
もちろん自社で販売するバイクも
できるだけ細部もきちんとしたい考えです。
(販売価格によって違いがあることは正しい)
そして毎回ここはこうした方がもっと良くなる、
あるいはこだわってもあまり意味はなかった
という事もあります。日々反省です。
写真はセカンドリングの面取り後のものです。
これは毎回しなくてはいけない作業の一つです。
コメント