そのままでは乗れません

日記

お問合せいいただくお客様の言葉で、
1台売りに出すと、お問い合わせいただく方の中で
一人には言われることがあります。

「そのまま乗れると思っていた」
このそのまま乗れるとは、低走行距離のバイク、
例えば今持っているものであればGPZ400F、
走行距離は約2100キロのようなものは殆ど整備せず
すぐそのままの状態で乗ることができると
思われている方がいるという事です。
残念ながらそういうわけにはいきません。

金額に関連することは後で書きますが、
例えば今から20年前ぐらいに製造、
具体的に言えば今2023年ですから2003年ぐらいに
製造され、保管状態が良く
(屋内保管で湿度が低く紫外線があまり
きつくないような状態)
かつ適度に乗っていたような物であれば
オイルなどの油脂類の交換、タイヤ交換、
フォークのシール交換、バッテリー交換などの
軽整備でもすぐに乗り出すことができる
場合もあるでしょう。

言っておきますが、この程度は整備しました!
と威張って言うほどの事ではないです。
納車整備と声高らかに言うほどのものではない。
最低限の整備です。

それは設計が改善され、製造技術が進んで
多少動かさない期間があってもオイル漏れなどが
しにくい構造や、シールやガスケットなどの
劣化がいわゆる旧車バイクと言われる物より
少ないからで、
当社の持っているものであればSC57のCBR1000RR
ぐらいの年式のものはそれにあたります。

ですが1980年代製造やそれ以前のバイクとなれば
そういうわけにはいきません。

GPZ400Fでさえ今から約40年前にもなりますから
走行距離2100キロであれば毎月乗ってあったとして
約50キロずつの計算になります。

本当は毎月50キロずつ乗ってくれれば
今でも軽い整備で乗れる可能性はあると思います。
走るだけならキャブも交換しないで走れるでしょう。

ですが実際にはそんなバイクは
ゼロではないのですがほぼないと
いっていいと思います。
あっても定期的に乗っているのなら
オーナーさんがなかなか手放さないので
市場に出てこない。

古いバイクの走行距離が少ないものは
最初に書いたGPZ400Fもそうですが、
ある一定の時期だけ乗って、その後車検が切れ
そのままずっと不動状態で置かれたものです。

そうなると金属部分は減ってはいないものの
エンジンや車体の動く箇所に使われている
シール類、ガスケットは硬化し本来の性能を
発揮できなくなります。
この時代設計されたバイクは動かしていないと
それらの部品が劣化しやすいです。

その状態で乗り始めるとあちこちからオイルが
漏れ出します。また車体側のベアリングも
場所によっては動きが悪くなっているところもあります。
良くダメになっているのはハンドルが動く部分に
使われるステムベアリングですね。
そして決まってキャブが調子悪い。

また保管が良くてもバイクの場合、
サイドスタンドを使って左に傾けておかれる
ことがほとんどですから左側に湿気がこもりやすく、
車体左側の方が右側より錆びや色剥げなどが
発生していることが多くなります。

ここで状態と販売価格の話です。

キレイごとばかりいう人がいますが
世の中何をするにもお金と時間が絡んできます。

うちに限らず、どんな販売店でも、
できるだけ手間がかからず売れるものが良い。
つまり仕入れたものがそのまま売れることを
望んでいるわけです。
ですが、実際にはそんなものは殆どなく、
古ければ古い物ほど物はボロくて傷んでいるのが
当たり前。

そのボロを悪い業者がそのまま売って
情報弱者が買い儲かってしめしめというか、
手間がかかっても整備してから売るかどうかは
その店の良心であり、店のオーナーが
決めていることです。

事実を書けば、うちで買い取らなかった
バイクがそのままの状態で他店で驚くほどの
価格で売られていることがあります。

実際に元オーナーさんにいくらで売ったと
金額も教えてもらえたのですが、
店頭の販売価格はその車種にしては高い
ですから当然長く売れてはいません。

売っている店は大型店なので、少々長い期間
売れなくても良く、高い金額でも誰か間違って
買ってくれたらよいぐらいの感覚なのでしょう。

うちだったら売れないぐらいの状態なのですけれど。
そもそもエンジンの部品が手に入らない車種ですし。

当社はどういう考えかといえば
状態の良い、自分でも乗りたいものを売りたい。
それでもあまりに部品代や整備、レストアに
手間がかかってしまうと販売価格が
高くなりすぎ納期もレストア車のように
長くなってしまい誰も買えなくなる。

エンジンOHだけでも旧車4気筒エンジン、
4サイクル車は1年以上はかかるでしょ。
すぐ出来あがるほど暇なら怪しすぎる。

そこで当社の場合です。
旧車で状態の良いバイクの数は少ないですが、
手に入れたい車種の中でそれが適切な価格で
手に入った時、必要な整備をして販売する。
常にこの形です。

したがって良いものが手に入らない時は
どうにもならない。

程度の良いものを仕入れることができれば、
交換部品や、整備作業の手間が減り、
販売価格は仕入れ価格プラスそれらに
かかった費用プラス利益ですから、
結果的に同じ販売価格であれば
良いものをお客さんは手にすることができる。

ただし、仕入れ価格は同じ車種でも
低走行距離だったり、程度の良いものは
走行距離が進んだもの、程度の悪いものより
断然高くなります。

それでもボロを手に入れ、大掛かりな整備や
レストアしての販売価格より
状態の良いものをベース車両にして
必要な整備をして販売するほうが確実に、
大幅に安くなります。

繰り返します。
良い状態で納品するという前提なら
良いベース車両に整備したものの方が
確実に安い。

もちろん、それでも安いという事には限界が
あります。
私的には今、ノーマルに近い仕様のバイクで
整備後、充分に綺麗な状態で100万円台のものが
手に入る時は激安の車種で超おすすめ、
今すぐ買っておいた方がよい。絶対に損はしない。

もし頑張って手に入れられるなら
200万円~300万円台も適切な価格。
高くなる前、部品がなくなる前に手に入れた方がよい。
きちんとした整備をすれば解るが
古いバイクの場合すぐ100万円なんてのはかかる。
それプラス車両代と消費税で200~300万円台になるのは
解っていただけると思います。

それにホイール、ブレーキ、エンジンチューニング
など加われば400万円台、これも解っていただけると
思います。

つまりこれらの価格で自分の気に入った車種が
あれば今勝負したほうが良い。
今から5年お金を貯めてなんてのは
本当に乗る気があるのならのんびりしすぎ。

あっという間に金額が高くなってしまうことが
あるし、部品がなくなってしまうこともある。
お金を借りるにも今後は金利が高くなる
可能性が高い。

で、世の中特別に安い価格のものは?
そりゃ整備されていないという結論で
間違いない。それでも良いという方向け。

昔は売る側がいくらぐらいで売れるという
情報を持っていなかったので、
安く買いたたいてという店も多くあったでしょうが、
今は情報の民主化が進んだので
そんなことも少なく極端に情報に弱い方だけの話でしょう。

当社でも予算が足りないかたに
現状販売することもありますが、
これは納品後自分で整備できる方、
したい方に向け、という事です。

そのまま乗れるからそのまま売ります、
という事ではありません。
SC57 CBR1000RRとGPZ400Fを同じように
考えることは出来ないわけです。

旧車バイクの仕事を何十年もしてきていますが
それで解ったのはフルレストア車を望む方は
ここ10年ぐらいで大きく減り意外と少なく
なってきたこと。

充分に綺麗で、ある程度状態が良ければ
きちんと走ることができる整備がされていることを
望まれる方の方が大幅に増えているのです。

人の目がどうという事ではなく
自分が良いと思うものに乗る。
これが幸せです。

販売していたDUCATI900SSは売約済み
となりました。
このバイクも低走行距離車ですが
エンジンを降ろして腰上は分解整備、
足回りの整備とキャブやマフラーを変更して
納品します。
お買い上げありがとうございます。

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