クランクシャフト転がり軸受滑り軸受

日記

もうずいぶん前の話ですが、カワサキZ系のクランクシャフトを
壊した方がいました。

頑丈なイメージのカワサキZ系、J系のエンジンですが、
クランクシャフトは組み立て式の物が使われています。
写真はそれを分解したものです。

これはクランクシャフトに転がり軸受の
ニードルローラーベアリングが使われているからで
このベアリングを使用するために組み立て式に
せざるを得なかったのです。

Z系のエンジンが頑丈なイメージあるので
勘違いしている方がいるのですが、
この組み立て式クランクシャフトは後の年式の
一体物クランクシャフトに比べると剛性が落ちます。
また、とても重い。重いのでなおさら弱くなる。

そしてこのクランクシャフトに使用されている
転がり軸受は瞬間的に大きな力を受けることには
適していない。
本来クランクシャフトの軸受にはGPZ900Rなどの
一体式クランクに使われている
滑り軸受(プレインメタル)の方が適しています。

カワサキZ系に、なぜ本来適していない
転がり軸受を使ったのか
調べていない為詳しく知りませんが、
このクランクシャフトの軸受は燃焼室で
混合気が燃える時、瞬間的にとても強い荷重を受けます。

この時にニードルベアリングのローラー部が
オイルをかき分けてローラーを保持する
インナーレースとアウターレースに
傷をつけてしまいます。

もちろん通常の運転ではそのようなことには
ならないのですが、
運転が荒い
度を過ぎる高負荷での走行
油温が高すぎる
エンジンが暖まっていない
エンジンオイルが劣化している
オイルポンプが消耗しているなど、
条件によっては損傷してしまうことがあります。

本来転がり軸受はクランクシャフトや
コンロッドの軸受には向いていないのです。

そうなるとこのベアリングが壊れ、
大きな異音が聞こえてくるので
エンジン全分解→オーバーホールとなります。
本当にめったにありませんが、今までの経験では
コンロッド側の方が先に壊れている印象です。

エンジン、車体、電装、外装全てにおいてですが
どこかが壊れた時、トラブルが起きた時、
最終的は先ほど書いたようにZ1系のクランクシャフト
回りでいえば、コンロッド大端部が壊れ
異音がして修理することとなったとなった、
と壊れた一か所のみに焦点をあてて考える方が
多いと思います。

ですが実際には直接関係ないようなことでも
関連する何点かが絡み合って、
最終的に条件的に一番きついある一か所が
壊れてしまった、となることがほとんどです。

お客様にはこのような形にしたい、部品を付けたい、
エンジンはこれ、マフラーはこれ、足回りは、
電装系は、などそれぞれの理想があると思います。

ですがなるたけ私たちの経験から得た声を
聞いていただきたい。
何十年もこの仕事をしています。
お客様にとってはたいしたことではないように
感じる事、また直接壊れる部品でなくても、
それぞれにまとまってエンジン、車体、電装、
そして一台のバイクとなります。

関係ないようでも各部がお互いに影響しあうわけです。

昨日パーツメーカーの方で私よりもはるかに情報を
多く持った方と1時間ほどお話しする機会がありました。
同じようなことを言っていました。

車体が完成し納車時には電話なり、
直接会うことができれば直接取り扱い方を
説明します。

エンジン始動の仕方、オーバーホールしたなら
慣らしの方法、車種特有の弱点があればそれを
説明します。

ですがまずは車種は何で、どのような部品を使うか、
どの様に組み立てるかで、この時にはできるだけ
任せていただく方が間違いない。

それでもしトラブルが出ても責任が誰にあるかが
はっきりしているので動きやすい。
先程のパーツメーカーの経営者の方も
最近はお客様の考えをなるべく入れないように
しているとのことで、とても納得できる話でした。

ユーザーの意見、希望は汲み取るが、
言いなりではダメで、譲ってはいけないところは
譲らないことが本当の意味での
お客様のためになると。

要はお客様のバイクですから、
予算が許せば好きな車種で好みの形、
仕様で乗れるのが一番こちらとしても理想。

ですがあくまで機能が大切な乗り物ですから
トラブルにつながる恐れのあることはしない、
させないこともプロとしては大切なことなのでは
ないかという事です。

これに関連して一度書きましたが
慣らし運転について近いうちにもう一度
書きたいと思います。

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