この写真は、今整備模様を(4)まで紹介している
販売車両GSXR1100のフロントホイールのシャフト回りで、
再メッキしてあります。
カワサキZ系などフルレストアをしてまでも
乗りたくなる大本命の旧車バイクならともかく、
それよりも後のネオクラシック世代で
ボルト類の再メッキを施してまで整備をしている
会社はとても少ないと思います。
今回はその理由を話したいと思います。
整備をする時に、ボルト類を再メッキするかしないか、
また車体の部品をレストアするかしないかで
大きく段取りが変わります。
段取りが変わるという事は作業効率も大きく
変わってくるという事で、
当社も好んでしていることではないのです。
とにかく作業効率が悪い。
フルレストア車は全部ばらして、すべての部品の
レストア、OH、再メッキ、あるいは必要な部品の
用意をします。
フルレストア車はその分価格が高く、納期も長く
なってしまうため、ごく一部の人のための作業ですね。
特に現代のように価格が高騰すれば。
そういうフルレストアを施さない(施す必要のない)
車両でボルト類を再メッキしない場合には、
車体の整備する箇所をばらして、必要箇所の整備をして、
ボルト類を清掃し、組付けることで作業が完成します。
つまり作業が止まることがなく一気にその場、
そのタイミングで完結する。
何でもその時に完了できれば効率が良いのは
誰でも考えれば解ることだと思います。
これに対しボルトや、各メッキ部品を
再メッキする場合には、
いったん車体をばらしてそのボルト類を
メッキ屋さんに再メッキに出します。
ここで流れが完全に止まる。
ボルト類を再メッキに出すのも、
ばらしてそのまま出せばよいという事ではありません。
メッキ屋さんに迷惑にならないよう、
つまり長くお付き合いしてもらえるように
汚れはある程度洗って落とし、
傷んでいるものは修理したり、
ダメなものは代替品を探して一緒に再メッキに
出さなくてはいけません。
となればそういうことが少なくて済むように
ボルトや鉄系の部品が痛みの少ないものがついている、
つまりベースの車両は程度の良いものを手に入れる
必要があります。
何でも拾ってきたようなものをつけているバイクも
ありますが、それでいいわけではありません。
各部に必要な強度だったり、適切な形状があるわけですから。
もし、ごく一部だけのボルトを再メッキに出すのであれば
代わりのボルトを仮組みして、バイクが移動できるように
したりしますが、先ほどの写真のように
ホイールシャフトなどは簡単に代わりのものが
用意できないことが多いので結構困ります。
説明の順序が逆になっていますが、
どこまでボルト類を再メッキするかによりますが
足回りをばらすとバイクの位置を
移動できなくなくなってしまいます。
日本のどこのバイク屋で、整備スペースが余っている
なんてところはほとんどないと思います。
ですからバイクの移動が簡単に出来ない状態になると
これが非常に具合が悪い。
またホイールなど足回り部品は意外と大きく、
形も大きさもバラバラで、これらばらした部品の
置き場にも困ります。
ばらす前は綺麗に見えても
これら部品は今まで走った分だけの泥汚れと
グリスなどの油汚れもひどい。汚れた部品は
どこにでも置いておけないのでこれも困ります。
こういう部品もばらしてすぐに清掃して
組み上げるならそれ程問題にはならないのですが
再メッキのためにしばらく置いておかないと
いけないとなれば厄介です。
先に洗っておいて油分がぬける
塗装されていない部品なんかは錆びてきたり
することもあるので、あまりに早く洗っておくことも
できません。
めちゃくちゃ広い所で作業できるなら、その辺に
ひとまとめしておいておけば良いですが、
日本のバイク屋さんではそんなところは殆どないでしょう。
これだからレストア屋は田舎でスペースが確保できないと
大変です。ばらした部品だらけになりますから。
そこで、一旦かたずけておくことになる。
まあ、1台分くらいならそうでもないですが、
そんなことはなく大体同時に何台か平行作業しているのが
当たり前ですから、その量は膨大になります。
再メッキの納期はメッキ屋さん次第ですから、
こちらでは時間をコントロールできません。
一般的なメッキであればそれほど長い期間は
必要はないのですが、仕上がってくるタイミングが
重要です。
他の部品の準備が整ったらすぐに組付けたい。
一旦ばらしてすぐに組付ける時は問題ありませんが
一旦メッキ屋さんにのボルト類や部品を出すと
それらがメッキの種類ごとでまとめて一緒に返ってきます。
そうなるとその再メッキに出したものの中から
組付けに必要なボルトを1本1本探し出し
組付ける。
またどこにどこのボルトを使うのかを調べながら
組付けなくてはいけない。
これにも膨大な時間がかかる。
そりゃ何でもてきとーに組んでる人なら時間は
かからないでしょうが、わざわざ再メッキに出してる
ぐらいですから、1本1本きちんと調べて考えて
組んでます。
バイク部品の再メッキなどは一回に出す量が少なくて
メッキ屋さんにとっても効率が悪く
儲かる仕事ではないので、お金を払ってはいますが
あくまでお願いする立場です。
お金を払っているのだからと横柄な態度の人がいますが
旧車バイクの世界はそういう事では
良いものを手に入れることができなくなります。
ボルト類が綺麗になるという事なら、
車体側の部品もある程度それに合わせて
綺麗な方がバランスがとれてよいのですが、
これにも手間がかかりますから、
どこまで綺麗に仕上げるか。
これが難しい。バランス悪くレストアすると
見た目がちぐはぐになり、おかしくなります。
これも再メッキ同様ばらしてすぐに組めるなら
良いのですが、ばらして、洗浄し、ブラストなり
下処理をして塗装。
こうなると、これまたしばらくばらした状態になります。
それだけではなく、
まず一番に考えておかなくてはいけないのが
販売価格と納期です。
なんぼでも高くていいという事であれば
楽なのですが、そんな人はいませんよね。
当社はフルレストアもできる会社なので
やろうと思えば
どんどんフルレストアに向かって突き進むことが
できます。
ところがそうなると時間もかかって、
販売金額もどんどん高くなる。
そうなると買える人は殆どいなくなりますよね。
それだと本当に良いバイクでも、
飾るだけになってしまい、そのバイクの良さを
皆さんに知ってもらう機会がなくなってしまう。
それはとても残念なことだと思うのです。
もし可能なら、
出来るだけ再メッキや、レストアしなくてよい程
状態の良い、しかも魅力ある車種のバイクが
それ程高くない金額でベース車両として
入手できれば、
作業が止める時間がなくなり、
販売価格が下がり、納期も早くなる。
もしそういうバイクが目の前に現れたら。
当社ではできるだけそういうバイクを
仕入れているわけです。
例え手間のかからないもので
それほど高くないバイクがあったとして、
それでも乗ってつまらないものは
当社ではお勧めはできませんね。
バイクは動かして、乗って楽しむものですから。
ちなみに当社のフルレストア車の仕上がりを100%とし、
部分レストア車両をその80%とした場合、
その差は20%です。
ですがこのフルレストア車の20%の部分が
とにかくめちゃくちゃ非効率で時間がかかります。
ただし、Z1のような元々の状態が悪いものが
多い車両は中途半端に部分レストア車両を
作るよりフルレストア車の方が効率が良い。
また程度の良いもの、例えば空冷GPZ750があり、
それをベースにするなら断然部分レストア車両の方が
費用対効果がよく、フルレストアはしないほうが良い。
また昨日CBR400RR(NC29)走行距離約1万キロ、
リヤショックが綺麗なほど状態が良いのですが
こういうバイクは整備だけが良い。
何でも同じコースで作業するのではなく
中古車のコンデションは一台一台違いますから
そのバイクにあった整備、レストアを施すことが
良いバイクをできるだけ買いやすい金額で
手に入れる秘訣です。
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