専用設計と試乗

今日は専用設計についてとGSX-R750試乗確認です。
もう30年ぐらい前になるのですが、車ディーラーの
整備士だった時にS13シルビアのオープンカーの
整備をしました。

修理内容はオープンカーなのに
オープンできないとのことでした。
細かいことは覚えていないのですが、
結局シートなどを大掛かりにひっぺがして
あちこち調べて修理した記憶があります。

この頃には勤め始めて数年経っていたので
結構前例がないような面倒な仕事を
任されることが多くなっていました。
ディーラーなのにオートマをマニュアルにする
なんてのも。この頃の整備仕事は面白い
事も多かった。

このオープンシルビアは乗ってみると
まるでダメで、とにかく車体が緩すぎ弱すぎ
でゆっくり走ることしか出来ない印象の車です。
どこに向かって走ってんの!てな感じで。

昔のオープンカーは普通の車の屋根を
すっ飛ばして無理やりオープンカーに
仕立てた車も多く、
オープンにはなるのですが走りは
からきしダメと言う車も多く受けられました。
この時代、良いオープンカーに乗るには
どうすればよいかといえば
普通の車の屋根をすっ飛ばしたモノではなく、
オープンカーにする前提で設計された車を
買うのが良いのです。


なぜこのようなことを書くかですが、
昨日最近書いている初期型GSX-R750
(フルノーマル)にテスト試乗しました。
どの様な整備や改善をするかメニューを
決めるためです。

以前乗ったことはあるのですが、
記憶があいまい、しかも自分のレベルがまだ低い
時ですから当時の記憶はあてになりません。
今回はっきり書けば予想よりも良く走りました。

これは車体が1100などと共通ではなく、
750ccのエンジンを載せる前提での
車体設計になっているからだと確信しています。

以前もっと後の年式の同じくスズキ750cc
ネイキッドモデルにオーバーホールした油冷
(同じく750cc)エンジン、さらにFCRキャブレター、
当社製マフラー、足回りから全て手が加わった
バイクの事を思い出しながら試乗したのですが、
ノーマルでもそのネイキッドバイクよりもエンジンも
車体も楽しく、面白かった。
造られた背景、本気度が違うからです。
やっぱり良いバイクです。


今回は実際に乗った時のことを時系列で書いて、
同時に改善点も記していきます。
まず車体を乗れるように移動します。
セパハンであるにもかかわらず車体を起こして
後ろに動かし、向きを変える時から
軽さを感じました。

フルノーマルなのでハンドルが少し遠いと
思いながらバイクにまたがりエンジン始動。
(ハンドルは変更します)
ノーマルマフラーですがすごく静かなわけではなく
それなりの音を発しながらエンジンがアイドリングします。


この時代のバイクはノーマルでもこういう感じの
音のバイクが多くあり、いい時代です。
ポジションはシートが低く、ハンドルも高めなので
今のレプリカとは印象が異なり気楽な感じです。

調整が悪く上に向きすぎている
クラッチレバーを握りギヤをローに入れ走り出すと、
1100に比べるとクラッチのつながる位置は
少し手前で違和感はあまりなく重くもありません。
クラッチのマスターシリンダーはブレンボの
ラジアルポンプタイプに交換するので
さらに軽く自然なつながりになります。


ですが相変わらず入ってくるバイクの
レバー類の位置調整がまるでダメで、
(何もポジションの調整はせずタイヤの空気圧のみ
調整して乗っています)
良いバイクなのにもったいない。


乗り始めすぐはしばらく動かされていなかった
車両の為、ステムベアリングの動きに渋さを
感じましたが、
しばらく走っているとスムーズに動くように
なりました。それでも古い車両ですから
ステムベアリングは交換します。


サスペンションに違和感なく、普通に走って
いる感じでは足回りのことは忘れて走れます。
こういう時は出来が良い時ですね。

ブレーキも効かないという事はなく
これも整備をして、フロントブレーキのマスター
シリンダーをクラッチ同様ブレンボラジアルポンプ
タイプに交換するのでさらに効き良く
扱いやすくなります。
ちなみにブレーキレバーも上向いています(笑)
アホか!


少し走ると下りのヘアピンのような左コーナーが
でてきます。
ここでこのバイクは自然に良く曲がり
扱いやすいことがとても良く解ります。

こういう小さなカーブで力まず曲がれるバイクは
バランスがよく、飛ばしていない時も
楽しさを感じられます。


またがった印象は車格が1100より一回り
小さく感じますが、それだけではなく
より曲がる設計になっているのだと思います。
そして信号待ち。足つきは良いので足の短い
私でも何の不安もありません。

タコメーターは3000回転からなので
針は全く動いていませんが、
何の不安もなくアイドリングしています。


そして少し開けられる道に出て、
アクセルをワイドオープン。
この日は暖かく暖機運転もすでに充分なので
10000回転まで回します。

750ですが低回転でも充分にトルクがあり
乗り易いのですが、中回転域から高回転域まで
綺麗に吹け上がり、気持ちよく加速します。
車体が軽いので予想していたより、
はじける感じでよい加速をしてくれました。
回しきる楽しみがあります。


さきほど書いたネイキッドモデルよりも
印象はだいぶ良いですね。さすが本気の
スポーツモデル。

しばらく直線が続くのでアクセルの開度を
色々試し、ここでネガの部分を見つけました。
アクセルを大きく開け、そして閉じた後に
再度じわっと開け始めた時、大きめのドン付き
がでます。ドン付きを上手く説明できないのですが
じわっと加速したいときにそれができないと
いう感じです。

ここでキャブレターを交換することを決定しました。
こういうドン付きのような物は整備しても上手く
治すことは難しく、なおかつ調整が前提でない
純正キャブレターなら尚更です。

純正キャブはこのエンジンにしては口径も小さめの
物がついており、これも適切なものにすれば
ドン付きは減り、さらに中高回転域での加速が
良くなります。

さらにもうひとつ。ステップバーが滑ること。
バーの先端が丸い形状になっているのですが
これがよくなくて滑る。
ゴムなどはつけらていないのですが
これは改善したいと思います。

やっぱりステップバーは大切です。
そういえばステップの位置は1100よりも
前にあるような印象ですね。


正確にはまだ調べておらず印象のみ
ですから確認したいと思います。
その部分以外は気になるところもなく、
今日はマフラーのみを変更し再テスト、
データをとります。

750はエンジンを囲うセンターとアンダーの
カウルの設計がよりタイトで、
余分なすき間は全くありません。

1100もタイトですが、さらにカウル内に
綺麗に納めるのは難しそうです。
レースで勝つ目的もあったでしょうから
より攻めたつくりになっているわけです。

今回のマフラー交換後のテストも
アンダーカウルのみ外して行います。
変化がどう出るか楽しみです。


GSX-R750、GSX-R1100はとても似ていますが
それぞれ結構作りが違います。
販売されたのは750が先です。

例えば世の中のバイクで、
同車種で排気量が違うモデルを作る場合、
車体はほぼ同じでエンジンだけ違うという
バイクが多くあります。


カワサキでいえば、Z1とZ2、
またはZ750FXとZ1000MK2です。
この場合どちらをメインで考えていたかで
走りの良さが変わります。


上記車種であればZ1とMK2がメインで
考えているのは間違いなく、
当然の走りもバランスがとれたそちらが良い。
Z2とFXはエンジンを触りたくなって当然です。
元々Z1とMK2前提の車体設計ですから。

それに比べGSX-R750はフレームの形状こそ
似ていますが、太さも違えば、
ダブルクレードルフレームのダウンチューブ部が
(エンジンの下を通っているフレーム部分)
1100はボルト止めなのに対し、
750は溶接で一体ものとなっています。

1100は整備性を優先したわけですね。
エンジンの搭載位置も違って見えます。

今どちらも当社にありますが、
どちらもそれぞれに素晴らしいバイクです。
フレームからエンジン出力に合わせ
それぞれ専用設計されているからです。


この時代のバイクは面白く、良いバイクが
沢山あります。
さらに今の技術で改良すれば尚更楽しく
自分だけのバイクに仕上がるのも良い。

ちょっと乗って乗り換えるバイクでなく
一生を共に歩めるバイクになるわけです。
しかも今なら車種によってそれほど高くもない。

ただし程度の良い車両はなかなか見つからないですし、
改良、改善点を見つけられない整備士が多い。
なんせレバーの位置すら合わせられない人に
何が解る?お客さんにお金だけ使わせて
結果がでなくてよいのか?

まだ元バイカーズの佐藤さんのCB750Fは
まだ書類が上がってきていないのですが
GPZ400Fは車検が通し終わり試乗しました。

こちらのことは後日書こうと思いますが
エンジンは11000回転まで実にスムーズに
吹け上がって、さすが走行2000キロという感じです。
このバイクもいいところがあるなあ。

今日の最後にもうひとつ、
実はかなり前から探していたドカティ900SS
買いました。たぶん1994年式です。

国産車以外で探していたのはこの900SSと
モンスターの初期空冷モデルです。
どちらも傷んでいるものばかりでなかなか
良いものが見つからなかったのですが、
ようやく見つけました。

これもフルノーマルで実走行距離約4000キロ、
エンジンはかからず国産車と違い
すぐ乗れるというわけにはいきませんが
何と言っても良いバイクなのに車両価格も安く、
その分少し時間をかけて少しチューニングと
整備をしたいと考えています。

900SSは手を加えるとすごく良くなりますし
スタイルも美しい。
めちゃくちゃ忙しく古いバイクは
どのバイクも手間も時間もかかりますが
面白い仕事ばかりです。

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