誰が壊しているのかと購入前に調べる話

Z1のクランクシャフトの写真です。
2、1,2と書いてあるのは
以前持ち込まれた車両で
エンジンオーバーホールのために
クランクシャフトの振れ具合を測定して
実際の数値を書いたものです

測定方法はクランクシャフトを
1回転させダイヤルゲージで測定
したものです。

クランクに書いてある数値は
実際には
百分の1単位ですので、
2と書いてあるところは0.02mm、
1は0.01mmとなります。

曲がりはこの数値の2分の1ですから
組み立てクランクシャフトとしては
極めて良い状態だといえます。
普通こんな数値にはなりません。
このクランクは私が修正したわけではなく、
最初からこの数値でした。

程度の良い物でも
4気筒の組み立てクランクの場合、
写真のようなほとんど振れのない
低い数値にはなりません。

大体組み立てクランクシャフト
(何個かの部品を圧入して一本の
クランクシャフトになっているもの)
の中央付近の振れ具合は

0.03~0.07程度は振れて
いるものが多いです。
程度の悪いものは0.15とか鬼のように
曲がっているものがあります。

この場合はクランクケース剛性が
低めの車種で
回しすぎたり、
エンジンブレーキが

きつくかかるような走りをしたり、
きちんと回転を合わせてシフト
しなかったりと、


乗り方が悪い、粗い、
負荷が高すぎたときに
振れが大きく
なります。

だからMK2系などはケース剛性が
Z1系の前期物より高くなっているので
振れは低めになっているものが多い。

自分で仕入れたものにそんな程度の
悪い
物は今までありませんでしたが、
ビトーR&Dに勤めていた時に
クランクの芯だしピン溶接の依頼で
クランク単品でレースをやっている
有名バイク屋さんが送ってきたものを、
かなりの時間を
かけ、苦労して治した
ことがあります。
これはかなり曲がってました。

この時はZ1クランクで私は社長の助手
でしたけれど。慣れた人でも状態の
悪いものはクランクの修正は
難しいのです。

相変わらず話が横道に行って
ばかりですが、
先ほど書いたように曲がりとしては
この数値の2分の1ですから
0.02~0.035とかですね。
ちなみにスズキのカタナ1100
は最初からピン部が溶接されていますが
振れは大きいものが多い印象です。
一桁違って0.1mm以上振れている
ものもあります。
GS1000はピン溶接されていませんが、
0.2mm以上振れているものがありました。

どちらの車種も私が実際にオーバー
ホール時に
測定したものです。

写真のクランクシャフトのエンジンは
入庫時、
エンジンのオイル漏れが
ひどく、

調子も走れることは走れるものの
本来の調子には程遠く
息も絶え絶えという感じでした。

まあ、その辺を走っている旧車の
良くある状態と言えばそうなのですが。
そういうものを旧車はそういうもんだと
言って販売したり、整備したとか言って
いる人がいますがそれは
はっきり言いますが嘘です。

一度まともなものを経験すれば
誰にでもわかります。

まずこのエンジン、
段取りの関係でまずシリンダーから

上のみばらしました。
明らかにこの部分は過去にばらされ、
作業された形跡があります。

正しく作業されていれば
何の問題もおきないはずですが、
あちこちに問題がありました。

一番ひどいのはシリンダーヘッドの
ガイド交換作業で、
その際にミスを連発されてました。
ヘッド側にクラックが入ってしまって
いるのです。
ガイドもゆるゆるで1本動くように
なって
いるものもありました。
Z1の純正でこのようなものは少なく
GPZ1100,Z1100Rなどに時々見られます。
(本来圧入なので固定され動いては
いけない)
これがこのエンジンの力がなかった
一番の原因でしょう。

しばらくして、心配しつつも
腰下まですべてばらしました。

その際に裏返してみると
オイルパンがへこんでます。
オイル漏れでそれに泥が引っ付いて
おり汚れがひどくて
裏返すまで
気づきませんでした。

フレームは何ともなってないのに、
どうやったらここだけこんなに
へこむの?

ってぐらいへこんでます。
割れる寸前です。

ボルトが痛んでいる箇所が
あったものの、
クランクケースは分解したことは
過去にないことが判明。良かった。

そのクランクケース中に
入っていたのが

写真のクランクシャフトです。

動かしていない期間があり、
実走行距離は明らかに少ないものの、

長い間オイル交換がされていなかったようで
ケースの中と部品は真っ黒状態でしたが、
ベアリングも真っ黒の見た目とは違い
状態が良いです。

そしてクランクを1日かけて
痛めないように掃除して
測定したらびっくりの数値、
今まで測定したZ系のクランクシャフトの
中で、一番曲がりが少なく状態の良い物
だったの
です。

これであれば芯だしをする必要はなく、
ベアリングも問題ないので
掃除は大変でしたがこのままピン溶接
できます。

溶接後は少し数値が
変わってくるのですけれど。
(やや曲がりが大きくなる)

ヘッドなども壊されている部分以外は
状態が良かった。

つまりこういうことです。
過去に分解されダメ整備が
行われた部分だけが具合が悪く、
壊れている。

このエンジンは元々とても状態が
良いエンジンだったわけです。

私が、なるべくノーマルで、
人に余計な作業をされている
形跡が
少ないバイクを仕入れる、

その理由が解ってもらえるでしょうか。
基本そういうものは
値段が高いです。
基本古いものほどノーマルは
希少価値が高いので値段が高くなる。
それでも良い物に仕上げるなら
それを買うのがベスト。

そこまで古くないものなら
まだ値段が高くないのでその時に
買うのが良い。

今までにもう何度このような
人によって壊されたものに触れる
経験を繰り返してきたか
解りません。
もう25年もこういうのを
繰り返してみてます。

良いバイクに仕上げるなら
公式はこれになります。

元になる車両の状態の良さ
+(技術×作業時間×お金)
=状態の良いバイク

です。
お金は良い部品を買うための
部品代です。
それぞれの数値が高ければ
高いほど良いバイクに仕上がります。

その辺を走っているバイクが
不具合ばかりで調子悪かったり、
見た目の状態が悪かったりすれば、
このうちのどれかの数値が低い、
ひどい時は全部低い、
と言えます。

高くてボロもあります。が
安くて良い物はありません。
業者は回りを見て値段を決めるからです。
自分だけ安くして、儲からなくていい、
損していいなんて業者はいません。
生活がかかっていますから。

 

とにかく仕入れる時は
極力ノーマルに近いもので、
古い分だけ手を入れられている
確率が高くなる旧車バイクでも、
極力エンジンのメインの部分や
フレームなどまでは分解作業を
あまりされていないものを選ぶのが
ベストです。

メーカーでいうと
ホンダや、ヤマハは、
カワサキ、スズキより大きく分解
作業されているものは少ない。

元々カワサキ、スズキが改造されやすい
車種が多いからです。ユーザーの
好みも違います。

この経験から実際に私が仕入れる時も
新しめのZRX1200Rや、
もう少し前のニンジャでも
極力ノーマルのものを仕入れ、
作業します。これ絶対。

とにかくダメ整備野郎が触り崩して
いるものは最悪で、ひどい時は
治せないものも
ある。
旧車も新しめのバイクも購入時の
目利きが大切で、とにかく最初に
どれを仕入れるかが肝心なのです。
くそボロに高いお金払うのは
騙されています。騙されている人が
なんと多いことか。

この、騙されてボロバイクを
高いお金を払って
買ってしまう
人について書きます。

長くこの仕事をしていると
そういう方たちに共通している
ところがあるのが
解ります。

バイクにしても車にしても
高い買い物ですから、昔と違い
ある程度調べれば
今の時代、
かなりのところまで
すぐに解ります。

すごくしつこく調べなくても
1時間もあれば購入の対象の候補に
なるかならないかぐらいは解ります。
直接出かけて店にいく前、電話や
メールで問い合わせ前に調べるのが
キモ、必ず調べるべきです。

騙される人はこれをきちんと
していない。調べてないです。

まずダメなバイクを買う人は
自分にとって都合の良いところだけ
見たり
聞いたりして、
そのほかの部分を調べたり、

聞いたりしない。

外観見て好みかどうかと値段だけで、
中身のことや、どのような部品、
ノウハウ(経験含)を使い整備、
チューニングを行うかは、
どうせ調べても、聞いても
解らないからと全く調べもせずに
とりあえず値段を聞く。
それでは騙されるでしょう。

何も下調べせず、いきなり
店に電話やメールをして
値段と、
他の店と何で金額が違うのか
など聞いてくる人は

ボロを高いお金で買う人、
あるいは安物買いの銭失いする人、
つまり騙される人が多い。

そんなもん、当社のように
フルレストア車なら1台2000枚にも
写真が撮れるほど作業が多いのに
まともに答えようとしても一言で
答えられるわけがない。
まとめきれない。
見たい人言ってください。
送りますよ。

いきなり店に問合せしても、
店、あるいは個人売買でも
売る側は売りたいわけですから、
問われれば売る側にとって
都合の良いことをまず話す。
ノーマルは面白くないから
買わないほうが良いなんてことは
言わないと思います

そうではなくて、
今であればネットで調べられる
わけですから、

どのようなバイクを過去、今でも良い、
を売っているのか、

具体的にどのような整備や、修理を
行ってきたのか、まず実績を調べる。
買いたい店で、そういう情報が
全く見つからなかったら?
私ならリスクが高いので他で買います。

売っているバイクが多めに
紹介されていれば
それをよく見れば店(経営者)の
考え、方向性がはっきり解ります。
1台でなく何台も見てください。

状態の良い物だけを売りたいのか、
売れればボロでもなんでも儲かれば
何でも売りたい店なのか、
大体の傾向というものが必ずあります。

調べだしたら悪口なんかも書かれている
ことを発見することもあるでしょう。
これは嘘の情報も多いので
良いと思っている気になる店なら
最初無視しても構わない。

私含め人それぞれ価値観、正解
と感じる部分が違い、それぞれに
言い分があります。
見る方向によって正解が違うので
多少は悪口なんかがあっても
構いません。
もちろんよっぽど多ければ
避けた方が良いとは思いますけれど。

店の発信がツイッターでも、
ブログでも、フェィスブックでも、
発信が1件、
2件だけだと
店側の都合の良い
ところのみを
抜き取って発信ということもありますが、

これが長く、たくさん続いているもので
あれば、
その店や、経営者の考え方、
実際販売したもの、作業実例、
これらの点で発信されたものが
線になって、どういう店か、好み、
得意分野、考え方、

まともなものを扱っているのかが
ほとんどわかります。

点で見るから判断を誤る。
ずらずらっと、連続で見てみるのです。
これを店に問合せする前に
調べる。とにかく問い合わせ前に
情報収集、
下調べすることが重要。

このぐらいの手間を惜しみ、
いきなり電話をして
いくらですか?
他の店と何で金額が違うのですか?
と聞いたところで何が解りますか。
店に都合の良いことだけ言われる。
そこで見た目が好みで
金額が変える範囲であれば買う。
そら、騙されます。
売るプロなのですから。

事前に調べておけば、
話の内容も理解できる。
直接店に行って調べたことと
内容があっているか確認できれば
なお確実。

ただ来店するときは事前に連絡を。
良い店はやることが多く、
時間がなく、忙しいのです。
当社もいきなり来店される時が
ありますが、
それで契約に至った人はいません。
それが解っていても、時間的に
どうにもならない時以外は
きちんと対応していますが。

まずはスマホで先ほど書いたことを
知らべ、可能ならパソコン、iPadでも
良いのでできるだけ
大きめの写真、
画像など車両を見比べて
ください。
大概のこと、解りますよ。
動画より、写真の方が騙されにくい
です。

バイクや車は高い買い物です。
それぐらい調べても良いのでは。

 

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