私が作業している傍らで、Z1000、Z1000R2、GPZ1100を組みたてするための最終準備作業が行われています。そして沖縄の方のZ1や、CBX1000の車体のレストアも。のんびりとしたイメージを持たれやすいレストアですが、1分1秒を争うように毎日必死の作業です。コロナでもありますから、不要な来店はご勘弁を。
ニンジャのエンジンの組み立てをしなければいけないのですが、塗装が終わっていないため、それが終わるまで私はZ1を2台、Z900を1台ヘッドの作業を行っています。今はポートと燃焼室のカーボン落としを行っています。同時に2台はガイド交換を行います。
カーボン落としは重労働で、同時にポート内はでこぼこが多いので、それも修正します。
同時に3台行うととても良く解るのはそのばらつき具合。同じZ系でも1台1台ポートも、燃焼室も形、状態が結構違います。特にポート。純正そのままで手を加えなければ、それは乗った時にいまいちなエンジン、普通のエンジン、割と好調なエンジンと違いがあって当たり前です。
これらばらつきをそのまま、ただカーボンを落とすだけで作業を終わらせると、他の部分の品質が同じであってもエンジンができあがった時には、結局いまいち、普通、好調なエンジンと、オーバーホール後もそのまま同じ結果になってしまうということです。
それを防ぐにはどうしたらいいかと言えば、そのばらつきの部分を修正すること、また量産車ではできない改良を加え、本当の意味での調子の良いエンジンに仕上げます。
そのためにはどこをどのように作業すればよいかを知っていなければいけませんし、知っているだけでなく実際に作業できる技術を持つことと環境を整えないといけません。
当社のエンジンはすべてのエンジンに良い結果が出るよう手順を踏んで作業しています。古いバイクの場合、入庫した時点でそのメーカーで作られたばらつき以外に、過去の整備、誤った乗り方で傷んでいるものがとても多いので、入り口の品質はバラバラで、それでも出口の品質を一定に高く保つのはとても大変です。
昨日カタナ1100(販売車両で整備コース)を手に入れたブログで書きましたが、このバイクに限らず、ノーマルのバイクは面白くないものが多い。ずいぶん前にヤマハのTX500か750のエンジンオーバーホールをバイク屋さんに頼まれて1台だけ行ったことがあります。このバイクはノーマルでもさわやかで面白かった。数値上の早い、遅いだけでその面白さが測れないことがこのことから解ります。
何度も面白くないバイクについては書いていますが、理由はバイクを操作したときに、それに対して反応が鈍い、あるいは遅れるものは面白くないと感じます。
バイクであればアクセルを開ける閉じる、荷重の移動と、ブレーキングが大きな要素ですが、それに対して忠実に反応すれば、それがたとえ小さなバイクであっても面白いわけです。
それに加え音なども重要な要素だと思います。
私は4発、6発のこの音が好きで、それもあって必要な場合は自分でマフラーを作ります。
その反応を正しくするために、タサキチューニングでは純正そのままの状態から必要な分だけ手を加えます。
アクセルの開ける閉じるにきちんと反応を得るには、適切な圧縮のある調子の良いエンジン、調子の良いキャブレターと、良いマフラーが必要で、点火系もあまり余計な制御が入らない物の方が、反応はダイレクトで面白いですね。
ブレーキも効きが鋭すぎても、鈍くてもダメで、ある程度予算は必要ですが、20年前に比べればずいぶんと安くて良いものが入手できるようになりました。特にラジアルポンプのマスターシリンダーが高性能でしかも安く、大変良いものです。
車体の方はバネ下が重くならないようにすれば、結果良く走ります。後は姿勢です。ノーマルを基準に乗りながら調整すれば乗りにくくはなりません。どうしてもうまくいかない場合は軽いホイールで好結果を得られることが多いです。
スポークホイールはノーマルのリム幅、径を変えなければほとんどのバイクはきちんと走ります。
カタナは加えてセパレートハンドルで、手からの入力が弱くなります。元になったバイクはGSですから、それはアップハンドル。ですからハンドルからの入力が弱くても反応するように車体を作る方が面白くなるわけです。
加えてヘッドはGSの2バルブから4バルブに変わっています。4バルブの方が高性能と言われますが、その分ヘッド回りは重くなります。ですからそれも考えて、エンジンも車体も作るほうが良い。
車体もスイングアームが特に弱い印象で、少しスピードを出すとヨレヨレします。
つまりやみくもに改造したり、逆に弱点をそのままにするのではなく、適切に手を加えることにより、あのスタイルのまま楽しく走れるバイクに仕上げます。
先日販売したCB750Fも同じで、750Fはまた弱点が違います。それにも適切に手を加えれば、Fもあのスタイルを生かしたまま楽しく走れるバイクに生まれ変わります。
やっぱり何台作ってもこのころのバイクは面白い物ばかりです。
ですが変更するにしても、この頃のバイクのスタイルは好きなので、できるだけイメージが壊れないように常に考えて作業しています。ローソンをZRX1200の様ににはしたくないですし、逆にZRX1200をローソンにする必要もないと思います。それぞれ良いバイクで、それぞれの個性を大切にして、良さを引き出したいのです。
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