これがカワサキZの実態!文長いですよ。

今日は、FX750の製作模様はお休みし、
別の事例をご紹介します。
長くなっていますが、写真などの説明は
下の方にあります。
以前から、Zを購入する際の
ベース車両について書いてきました。
当社の販売するために使うベース車両は、
かなりランクの高いものを使っています。
通常のお店なら極上、調子いいです!
みたいな説明で売られているようなものも、
当社ではただのベース車両です。
とにかく人気があり、あちこち分解されダメ整備や
改造をされやすい車種のカワサキZ系は、
全バラしてこの目で各部を確認しないと信用
できません。
人の言う調子いいよ、綺麗でしょは、ひとそれぞれ。
今までの経験値からいわれることですから、
本当の意味での調子良いを経験したことのない人に、
良いものは解りません。
また新車時のタイヤがついていたりして、
変な整備もされていないようでも、
とにかく分解して整備すべきだと思います。
外観の錆びなどは少なくても、乗っていなくて
ゴムは硬化し、部品は固着、エンジン内部は
錆びだらけの場合もありますから。
この辺は数をこなして実際に作業した人でないと
解らないことですし、1台、2台程度バラした
経験があるぐらいでは、確率的に本当のところは
知りえません。
当社で旧車バイクを販売する場合、
予算(販売価格)に合わせた車両を製作する
前提とはいえ、当社ではその予算の中で
最大限良いものをと考えています。
そう考えると、仮に最初予算が足りず一度に希望の
仕様まで持っていけなかったとしても、
先々無駄に費用を払うことなく追加で作業できれば、
長く持っているうちに最終的には希望のレベルまで
いける車両でなければいけません。
途中でダメと解って乗り換えはきつい。
最初詳しいことは分からず、程度の悪いものを購入し、
とりあえずの目先の修理、走るようにはなったとしても、
乗って行くうちにもっと調子良く乗りたい、
綺麗にして乗りたいと思う気持ちが出てきて
当たり前だと思います。
その時にきちんとしようとすると、
あちこち欠品の部品や大物部品に問題があったり、
最悪はフレームに大きな問題があることなどを
購入後に発見したりすると最悪です。
欠品部品は持っていなければ探すのが大変、
それらが運よく見つかってもたくさんお金が
かかります。
欠品の部品は見つかるまで時間がかかることも多く、
予定外に納期は伸び、修理費用もどんどんかさみます。
あるいはそこまでいかず、直すことが可能だとして、
それでも通常のレストアや、オーバーホールでは、
修理や交換しなくていいところも作業、交換となれば
費用がかかりすぎます。
一度購入したのに、乗り換えた方が安づくと
いうようなことは避けなければいけません。
そこで今回ご紹介するのは、お客様持ち込みの車両で、
カワサキZ1-R。
一度数年前に点検で入庫していただいて、
今回レストア、オーバーホールで御注文いただいてます。
このZ1-Rのフレームまで全バラでレストアを施す
車両のエンジン分解です。
すべてばらした後にきちんと直せるのは
確認できていますが、とても作業量が多く
なりそうです。
この車両は、クランクケースやヘッドなど
大物部品は大丈夫だったので特別追加費用は
いただかないで作業します。
当社の在庫部品でまかなえたり、修理自体も
自社でできる部分なので、というところです。
ですが、普通のお店では修理できないでしょうし、
(あるいは修理したと言って直ってはいない)
直せても専門店でなく部品などその都度買っていては、
金額がとても高くなるでしょう。
当社では一式いくらですから。
こう言っては何ですが旧車のエンジンオーバーホール、
車体のレストアで、いちいち細かい部品までの
見積り書製作などは、無駄な時間だと思います。
なぜなら、程度の良いものでさえ、バラして
ブラストしたり、洗浄したりして作業が進んでくると
細かい悪い部分がどんどん出てきます。
その都度お客様にいくら追加になります。
なんて言っていたら一体いくらになるのでしょうか。
その時間も無駄です。作業すべきことは
山ほどあり、しなければいけないことであれば、
絶対にしなくてはいけないのですから、
そんなことはコミコミにしてどんどん作業して、
気持ちよくオーナーさんに乗ってもらえば良い。
私はそう思います。
こまごまとした見積書を出してと、一度も言われた
ことはありませんが、大きなことで、こことここは
こうします。こういう部品使います。
(特に見えない箇所は)
でよいのではないかと思っています。
当社の場合は作業内容は詳しく1000枚程度
写真に撮っていますので、もしどうなっているんだろ
という箇所があればそちらで確認できますし。
大きく話がそれました。すいません。
今回のお客様は運よく、直せるギリギリです。
ですが、以前このお客様にこのバイクを売った方に対し、
解って売っているのなら、私は憤りを感じます。
旧車バイクのように普通の人の知識が通用しない
商品で、ここまで壊れて(壊して)いるものを
売ってはいけない、そう思います。
今回なぜこのエンジンを紹介するのかといえば、
このぐらいのものは普通に流通していると
考えた方が良いからです。
当社でベース車両を購入する際には、
状態を吟味します。
ですので今回紹介するような、多くの広い範囲で
問題があるものはありません。
もしプロなのに仮に悪いものをミスで買ってしまったら、
別のベース車両を再度買いなおすでしょう。
繰り返しますがこのエンジンは特別運悪く、
購入したものではありません。
このぐらいのもの、いやもっとひどいものが
ゴロゴロあります。
今回このバイクのオーナーさんも要所のみ
オーダーいただき任せていただいたので、
正面から向き合って問題を解決して、
良いものにしたいと思います。
納車は来年かな。まずいと思います。
納期が早くなるよう努力します。
前置きが長くなりましたが、本編です。
DSC03091.JPG
作業スペースの関係で、
とりあえずヘッドまで降ろしたところ。
ヘッドも問題ありますが、ちょっと後で紹介。
DSC03093.JPG
こちらから見ると問題ないようですが、
アイドラーギヤの横の黒いゴムのダンパーを
見ておいてください。
DSC03092.JPG
本来ゴムのダンパーが付いている部分に
なぜかその辺で拾ってきたような四角い
金属の部品を入れてあります。
DSC03094.JPG
降ろしたヘッド、バルブまわりも外して
あります。
DSC03096.JPG
これは機能的には大きな問題にはなりませんが、
シムを外したりするのにつけたのでしょうか、
大きな傷があります。
なぜここに大きな傷があるのかは後で解ります。
ここまで大きなものは珍しいですが、
傷つけてあるものはここ数年多く見るように
なりました。
DSC03097.JPG
反対側も同様。
加えてカムプラグの部分も傷が入ってます。
なぜカムプラグ部にこんな傷が入るかは
今一つ解りません。
DSC03101.JPG
ヘッドを下から見たところ。
DSC03102.JPG
マフラースタッドボルト周辺に、
大きな傷がつけられています。
傷部分は汚れているのでかなり前に
つけられた傷と解ります。
この部分は外に出る部分なので問題ありませんが、
雑に扱われた証拠みたいなものです。
DSC03103.JPG
ここにも傷が入っています。
もともと修整面研を行う予定でしたが、
ここら辺の傷はオイル漏れにつながるので、
修整面研して綺麗に傷をなくします。
DSC03104.JPG
修整面研を行うだけの寸法的余裕があるか、
簡単に測定。これを測ると、いままで面研事態は
行われていないことが解ったので、
修整の面研ができそうです。
0.1mmぐらいで傷を落とせればよいのですが、
もう少し必要だと思います。
でもこれぐらいであればガスケットの厚みも
換え、調整するので圧縮比の方は大丈夫です。
DSC03117.JPG
タコメーターギヤ取り付け部の、
M6×1の取り付けねじ周辺のクラック。
充分に肉厚があるので、普通割れるような
箇所ではないのですが。
なぜここが割れるのだろう、不思議です。
おそらく社外品の、タコメータギヤのガイドを
入れるときにヘボったのだと思います。
この部分はすべて削り落して溶接して盛って、
形を削りだしてネジを切って修理します。
この部分だけの修理で1日近くかかるかもしれません。
DSC03150.JPG
変な当たりの付いたアウターシム。
怪しい・・・
DSC03151.JPG
横にして厚さをみると異様に厚い!
実はこのシム純正品ではなく、その辺の丸棒から
旋盤で作られているようです。
このシムをはめたり外したりするのに
ヘッドに先ほどの傷を入れたのでしょう。
DSC03152.JPG
作られたシムは材質的にも、つくり的にも
問題がありこんな変な当たりがついています。
生で見ると傷がもっと生々しいです。
さらに、
DSC03577.JPG
なんと1枚のシムでは足りない部分に、
薄いものと厚いもの2枚シムを重ねてある
部分もありました。ひどすぎます。
DSC03154.JPG
当然このシムに組み合わされるカムシャフトも、
DSC03153.JPG
DSC03371.JPG
変な当たり(傷がついてます)が付き、
使用不可能です。
当社で代わりの程度の良い中古カムに交換します。
DSC03149.JPG
これらシム、カムまわりをダメにした原因はこれ。
DSC03148.JPG
スズキの径の大きいバルブに変えられています。
これの長さが足りず、シムの厚さが足りなくなり、
手作りされたようです。
こんな風に他の部分に手を加えず、
バルブだけ大きなものに変えても
エンジン出力は向上しません。
ヘッドだけみても、ポート系、スロート部分の拡大、
バルブとバルブシートの当たり位置も、
その大きいバルブに合わせた適切な位置に
しなくては意味がありません。
まさに改悪の典型です。
DSC03276.JPG
幸い、バルブを追い込むシートカット加工は
されていないようなので、バルブを純正に変更、
ヘッド回りをオーバーホールすればなおせます。
良かった。もし追い込みの加工がされていたら
さらに大ごとになります。
ちなみにこの変な改造されていたのは、
IN側のみで、EX側はノーマルでした。
ですが、カムはEX側も念のために換えます。
DSC03156.JPG
DSC03157.JPG
エンジンを降ろして、さらに分解します。
DSC03301.JPG
ここから注目していただきたいのはボルト類です。
もし旧車バイクを購入するなら、このボルトに
注目してください。
改造されたZをコンプリート車両で買う場合、
ボルト類は変更されているものが多いですが、
いろんな種類のものがバラバラに適当に付けられている
印象の車両で、程度の良いものはありません。
当社でレストアベースの車両を買うときは、
逆に、純正に近い形のものを探して買いますが、
その場合は、純正のボルトが主要な部分にきちんと
ついているかも、重要なチェックポイントです。
いままで純正のボルトがきちんとついているもので、
状態の悪かったものは一台もありません。
ですから自分で旧車バイクを購入する際には
ぜひ確認してほしいと思います。
ただ、ついているボルトが純正のものかどうかを
見分けるのは少しかじったくらいの知識では
難しいかもしれません。
同じ車種でもすべて同じではなく、
いろいろあります。
DSC03301.JPG
クランクケースのボルト。
右側はあきらかに換えられていますし、
左側はこんなところには本来入っては
いないはずのワッシャが入っています。
変です。
DSC03302.JPG
セルモーター下のこの部分のボルトは
1本も純正モノがついていません。
後ろに見えるジェネレーターの配線も変です。
DSC03303.JPG
ピンボケですが、ここもまともなボルトは
ありません。
痛んでいるか、拾ってきたようなボルトです。
DSC03304.JPG
ここも同様です。痛んでます。
DSC03306.JPG
チェンジカバーを外したところ。
壊れてます。ギヤチェンジのドラムのピンカバー
は割れ、真ん中のボルトは緩んでダメになってます。
在庫品を出してシフドドラムASSYで
交換します。
このせいでギヤチェンジのシフトレバー(欠品)
もガタが大きくなりダメになっています。
交換です。
DSC03307.JPG
先ほどのギヤチェンジのドラムのピンカバーを
外したところ。ネジもダメになってます。
緩んで暴れたのでしょう。
DSC03354.JPG
次はスタータークラッチまわりです。
スターターギヤもたくさん傷が入って
要交換ですが、これは結構悪いものも多いので
このバイクに限って悪いというわけではありませんが、
裏返すと、
DSC03309.JPG
ギヤにダンパーが噛みこんでいて取れません。
通常はひっついているだけで、すぐにとれるのですが、
組み方が悪く壊れています。
ギヤとダンパーも交換します。
ダンパーも欠品です。
DSC03312.JPG
先ほどのギヤにはまるワッシャ。
この部品には表裏があるのですが、
間違って逆に組まれていて、そのせいで
ワッシャ中央に変な傷が入っています。
写真では解りませんが間違って組まれたせいで、
変な反りが出ていてこれも交換です。
DSC03311.JPG
ジェネレーターのローター。
高い部品なのでこれは使えるといいな、
と思っていたのですが、
DSC03689.JPG
裏がえすと、ガタが出ていて
交換しなくてはいけません。
この部品はZ1のものと似ていますが、
別ものなので(厚みなどが違う)在庫が乏しく
できれば使えて欲しかったのですが。残念。
持ってて良かった。
DSC03310.JPG
先ほどのローターを締め付けるボルト。
このエンジンは本来、ここにはワッシャは
入れないで組み付けなのですが、
間違ってます。
ちなみに先ほど説明したジェネレーターの
ローターの裏に銅ワッシャが入るのですが、
そこは部品が入ってませんでした。
余計なことはするけど、しなければいけない
ことはされていない。ダメ整備士の典型です。
DSC03313.JPG
エンジン右側に移動し、キックシャフト回り。
ここもボルトはバラバラ。
DSC03315.JPG
クラッチハウジングまわり。
中央の大きなナットが壊されています。
DSC03318.JPG
ナットを外したところ。
かしめたかったのでしょうか。
緩めたかったのでしょうか。
どちらにしてもこんなことする必要は
一切ありません。
DSC03319.JPG
ここまできたらクランクケースを割ります。
ボルトを緩めると、
DSC03320.JPG
たったこれだけで緩め終わってしまいました。
ものの2mmぐらいしか締まってなかったようです。
ボルトが折れる感触はなかったのですが。
DSC03321.JPG
ボルトが短いです。
DSC03322.JPG
いまいち理由が解りませんが、
短くなっているのを承知で軽く締めていたようです。
端の部分をなでた跡があります。
全く理解できません。
DSC03323.JPG
クランクケース上側のボルトを外し、
ひっくり返したところ。ボルトが変です。
DSC03324.JPG
ボルトがありません。
このグジャグジャしているのは液体パッキンです。
ひどいです。
DSC03325.JPG
もう1本の方もわけのわからないもの
ついてます。
DSC03326.JPG
ここのボルトも付いていません。
DSC03327.JPG
オイルパンのボルトが折れたまま
になってます。
DSC03328.JPG
クランクシャフトまわりのボルトも
違うものがついています。
DSC03330.JPG
同じくクランクシャフトまわりのM8の
ボルトを外したもの。
クランク形状になっており、
折れる寸前なのが解ります。
DSC03333.JPG
DSC03334.JPG
DSC03335.JPG
DSC03336.JPG
ボルトを緩めているときに折れた箇所と
もともと折れていて、ボルトの途中から
頭の部分がなかったところです。
こうなってました。
通常こんなにたくさん折れることはなく、
折れてもメーカーが組み付け時にネジロックを
塗っているボルトや、水分が多めに入っている
ところぐらいで、1、2本ぐらいです。
なぜこんなに折れまくるかといえば、
オーバートルクで締めているからです。
要は締めすぎ!なんです。
ここはトルクレンチを使って締めるところ
ですから普通あり得ません。
写真では小さすぎて解らないので紹介して
いませんが、エンジンの雌ネジが抜けかかって
いるものが相当数あります。
もしかすると70~80%ヘリサートを入れる
ことになるかもしれません。
ネジに限って言えばここまで全体的に
ひどいものは少ないです。
通常ヘッド部分のねじ山が異様に壊されていても、
クランクケース回りはそれほど壊されていない
ものです。
ましてやエンジン回りでボルトがついていないものは、
ほとんど見たことがありません。
DSC03344.JPG
横に少し見えるクランクシャフトも表面錆び
があります。
このぐらいの錆びは乗っていなかった期間があると、
出ている場合があります。
エンジン内だからといって不動状態で放置していると
ダメになってしまうこともあります。
DSC03345.JPG
ケース分解が終わりました。
DSC03337.JPG
ジェネレーターコイルは配線を変えてあるのは
良いのですが、根元の部分が大きく浮いていて
よく中の部品と干渉しなかったなと思います。
カバーの方はコイルに隠れて見えませんが、
割れを修理した跡があります。
今回コイルもカバーも交換します。
DSC03340.JPG
ハウジングは錆びが結構きついです。
DSC03389.JPG
ミッションの、本来入っていないところに
薄い変なワッシャが入っています。
DSC03390.JPG
ガタでも減らしたかったのか?
理解できません。
DSC03559.JPG
シフトフォークも削れて傷んでいます。
アンダーカット加工すればシフトフォークの
痛みは減らせます。
エンジンをかけた状態でニュートラルにして
サイドスタンドで車体を立てているとき、
時々、カラッカラッと引っかかるような音が
する時はこの部品が痛んでいることが多いです。
写真に写っているのは2本のみですが、
3本あり、3本とも交換します。
今回分解したもので、写真で紹介できるような
ものはこれだけなのですが、細かい部分などは
まだまだあります。
シリンダーも今回交換します。
今回のエンジンで、外観から状況が悪いと
判断できる部分が、大きく2つあります。
それは、使われているボルト類が、
純正品のものが全然なく、しかもバラバラで
あること、下側の部分は見えにくいので判断の
対象にはなりませんが、そうでないすぐに
見える部分だけでも判断できるので
購入時は気を付けてください。
さらにもう一つ、あちこち本来なら色が塗られて
いてはおかしい箇所に、黒の色が塗られていること。
これです。
ボルトの上から黒の色が塗られていたり、
セルモーターが黒く塗られていたり、
本来ならきちんと塗り分けされているはずの、
部品を外して塗ってあるべき個所が
そのままボロ隠しでそういう配慮なしで
上から色を塗られているもの。
こういう旧車バイク、とくにカワサキZ系、
J系、ローソン系は買わない方が良い。
今回のように直せる状態、
また直せる店に出合えればまだ良い方で、
現実にはこれは無理、費用がかかりすぎる
ということはかなりあります。
このブログを読んでいる皆様が、
どうかそのようなものをだまされて
買ったりしないようにと思い、
今回は特別うっとおしいぐらい長々書きました。
ボルトが変、いろんなとこがいっしょくたに
塗ってある。
そういうバイク、避けてください。
今回紹介したのはエンジンのみですが、
車体も手ごわいです。ですがこちらも直せます。
大丈夫です。
先のことになりますが、完成したら紹介します。
今はZ2エンジン組み立て中です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました