Z1エンジンオーバーホール

日記

先日写真のZ1、車両持ち込みでエンジンオーバーホールと車体の一部整備作業を行ったのですが、その完成後の走行テストを数回に分けて行いました。

まずは近場で10キロ程度走って調整し、その後、日を改めて高速道路を走ります。その後再度下道を数十キロ走って確認し問題なければ終了となります。

近場に住んでいるお客様であればすぐに来店できるので、50キロ~100キロ程度で高速道路は走らずに終了することもありますが、当社は遠方のお客様も多いので、大体トータルで200キロ位走ることが多くなります。

今回もやや遠方のお客様でしたのでそれぐらい走ったのですが、今回も距離を走って確認して良かったと思う出来事がありました。

それは高速道路で結構走ってから、ヘッドのメクラ部分からの微量のオイルにじみが出てきたことです。

エンジンのヘッド部分3枚の写真は、そのオイルにじみが出た写真、新たに圧入する部品を作って圧入後、その後色を塗った後です。

この部分はメーカーで製造されており、エンジンのオーバーホールをする時にも本来分解しなくてよい所なのですが、10年に一度くらい起きる稀なケースです。

ここは漏れが出ないかエンジンを分解したときにチェックするのですが、その時は漏れなど生じないことが多く、エンジンが完成後に走行テストである程度距離を走ってエンジンが暖まり、またオイルの圧が連続でかかった時に出てくる時があります。

つまり、チョイノリのテストでは漏れは生じないので、運が悪ければ納品後に出てきてしまう可能性があるわけです。

遠方にお住いのお客様であれば、この修理はそれなりに難しい修理ですから近くの店で簡単に治すというわけにはいかない為面倒なことになります。このトラブルは今まで当社ではZ1以外では起こったことがなく、先ほど書いたように稀なケースなのですが。Z1はZ系初期のモデルだから、という事はあるでしょう。

長い距離の走行テストをすることで発見することができ、納品前に無事修理もできたのですが、仕上がった状態から修理するのはなかなか気を使います。傷を入れられないし、ゴミをエンジン内(この部分はオイルの通路です)にも入れられないし、納期も再度分解するほど時間的余裕がないからです。

このZ1は車体も今まで大変雑な作業をされてきたようで、タサキチューニングに初めて入庫したときには、走れてはいるものの、いつものように本来のZ1の調子とは程遠い状態でした。

エンジンの力がないのはもちろん、車体の方も曲がりにくく、乗りにくい。
またマフラーの状態もとても悪かったのです。クラッチの操作もしにくく、点火系も問題がある。CRキャブレターは入庫時からついており、これは壊れていませんでした。さすが頑丈なCR。

エンジンオーバーホールとオイルクーラー取り付けなどそれに必要な費用は決まっているため、それ以外にお客様にできるだけ頑張っていただいて用意できる予算をズバリ聞き、その予算内でできるだけのことをすることにしました。

ステムベアリングの交換や、フォークの分解整備、CRキャブレターの全分解オーリング交換、ブレーキの分解整備、ケーブル類の交換、クラッチレバーASSYとクラッチレリーズ交換、点火系をフルトラ化。

イグニッションコイル、キャップの交換、ライディングステップのバー交換(片側位置調整の加工)、曲がっていた側のステップのステーを交換、フューエルコックの交換。ステム回りとキャリパーは車体に合わせてバッキバキに仕上げるのではなく、やや控えめにレストアしました。フロントのブレーキマスターシリンダーも交換し、ブレーキホースを作り直しました。

そしてマフラーの交換。マフラーの方は当社製をつけるほど予算は確保できない為、他社製のもの。これは確か3~4万円ぐらいのものですが、この値段としては充分に良いものです。よくこの値段で作れるなと感心します。
フロントフェンダーとのすき間がやや狭いので、足回りがノーマルでないとだめかもしれませんが。もっと高くてもいまいちな商品もありますから、とりあえずという事であればお勧めです。音も悪くありません。少し静か目ですが、ぬけが悪いこともありません。

その他細かい部分もいろいろしました。キリがないのでこれは端折ります。

ただはっきりと言えるのは過去の作業の悪さ。とにかく壊されており、ばらすたびに悪い箇所が出てきます。予算に限りがあり、走れるようにするために絶対に治さないといけないところが沢山ありましたから、ばらしたところで優先順位の低い所はそのままとし(大体治しましたが)できる限りのことは行いました。はっきりいって追加20万円ぐらい請求したいところですが、最初に金額をお約束していたので。

結果としては入庫したときのことを忘れる位乗り易く、良く走るようになりました。

後、機能的にした方がよい所は、硬すぎて全く動かないリヤショックを変えること、少しフロントのブレーキにジャダーがでるのでディスクを交換すること。
ただフロントは走っているうちに良くなる可能性も少しあります。後メーター回りも治したい。あれもこれもしたい。やっぱりいろいろあるな。

納品後は距離を走ってブレーキもかけて、お客様がフロントフォークが動くようにすること、Z1系のフロントフォークは分解整備後は一旦動きが渋くなるので。ただこれはこのバイクのシートのあんこが抜いてあるのに、ハンドルはやや高いハンドルですから、普通に走っている時に前の荷重が少し足りない感じになっているせいもあります。

元々この高さのハンドル、あるいはZ1の純正の高さのハンドルはグリップの位置が高いのであんこ抜きせずに本来シートは純正形状のままの方が良いのです。シートが低くてハンドルが高いと前の荷重が足りなくなるので、余計ぴょこぴょこなります。大きめにアクセルを開ける時に伏せないといけないの面倒。オーバーホール仕様でも純正のエンジンそのままとは加速が違いますから。フォークの動きにくいのは距離を走ることにより、自然ともっとましになります。

このZ1を見ていると、ぱっと見こういうZが良く売られているなという見た目です。Zが欲しくて予算がない時に騙される典型的な形なのですね。

もちろんそれは見た目だけで、このZはエンジンを筆頭にそれらとは全く違う走りをします。皆さん騙されないように中身のあるバイクを買いましょう。やっぱりリヤショック換えたかった。まあリヤショックは部品が買えればすぐに交換できる箇所なので。ただし見た目だけで選ばず、動くやつを買う必要があります。まともな人間が言うアドバイスは聞く方がお得です。

きちんと結果の出ているフルレストア車両が作れる人間は、予算がどうしても限られてくる購入後の整備でも、本当に有効で結果が出る所に集中的に予算を使うことができるものです。

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