旧車バイクや古い車の値段の
上がり具合には驚かされます。
これはその時の流れですから、
抗いようもありません。
ベース車両を手に入れ、
整備やチューニングにまわせた費用が、
今ではベース車両を手に入れるために
消えていきます。
ですが良いこともあり、他にも
もっと買える値段で良いものがないか
探すようになります。
昔から変わらず旧車バイクの人気車種で
あったカワサキZ系ですが、
以前なら車種によりかなり値段の違いがあり、
FX750などかなり安く買えていた車種も
あったのですが、
今ではそんなこともあったかなという感じで、
すべての車種が高くなってしまっています。
それほどカワサキZ系の普遍的価値を
認めた方が多いという事でしょう。
私も長くZ系を取り扱ってきたのでその
魅力は良く解っているつもりです。
それは、バイクらしいスタイル、
エンジンも内部に不自然なつくりの箇所がなく、
整備もチューニングもしやすい。
しかもこれぞエンジンという、らしい外観。
特に日本の道に合っていると思う、
旋回が楽しい車体回りのスペック。
それを知った上で、フルチューンの
車両からノーマルに近い車体も数多く作業を
させていただきました。
それら車両自体の魅力にプラスして
価格を引き上げているのはその認知度です。
Zが販売されてから長く、しかも数多く
繰り返し常にマスコミに取り上げられて
きました。
つまり知っている人が多いからこそ
人気があるという面もあります。
今すでにこのバイクを所有されている方は
実に運の良い方です。
ですが私がここ10年くらい感じるのは
それ以外に、乗っても、見ても、
良い旧車バイクはあるという事です。
確かにZほどにエンジンは頑丈ではなく、
自分好みに仕上げようと思っても、
アフターパーツも多くはないかもしれません。
ただ、大きく早く世の中がかわっています。
昨日までの常識だけでは損をしてしまいます。
特に正しい正しくないにかかわらず、
情報量自体はほんの10年前と比べても
全く違い大変な量です。
その中でカワサキZ以外のバイクの
マニアックな部品も知ることができるように
なっていますし、
純正部品が販売終了になると
新たに専門店などで作られ、私達もそれを
購入できるようになっています。
また、以前に比べれば速さを
追求する方は減り、車両を傷めずに
長く乗れ、楽しさ、そのスタイルを
大きく変えないで乗りたいという方が
増えました。
これは現在の技術で、
圧倒的に速いバイクはお金を払えば
すぐに手に入るようになったのも
あると思います。
もちろん旧車でサーキットなどを
思い切り走るという事は今でも行われて
いますが、それは究極の贅沢と
言えると思います。
長く旧車バイクの王様として扱われ、
今と違ってバイク雑誌が情報の中心
であった時代では、
カワサキZの特集時とそれ以外の
バイクでは売れる量も違っていたと思います。
Z系に関しては皆さんが知る機会に
多く恵まれたこと、
実際に良いZを所有して見れば
その期待を裏切らない魅力が今、
その高い価格となっているわけです。
ですが30年にわたり旧車バイクの整備、
レストア、チューニングの仕事に
関わってきた私は、カワサキZ系だけでなく、
その他の車種にも多く魅力があることに
気付くことができました。
そのほとんどはお客様からの仕事の依頼が
きっかけですが、その他にも信頼できる
ショップさんからの実際に自身が行った
経験からの情報などを教えたいただくことも
あります。
頭を硬くし、殻に閉じこもると損をすること
ばかりです。
それこそ、鉄パイプフレームのどのバイクも
エンジン、車体、電装系をきちんと整備し、
その上で外観を仕上げると、
どのバイクも魅力があるバイクばかりなのです。
元々私が猛烈なカワサキZ好きですから、
それ以外の車種に強い関心があったかといえば
そうとは言えないと思います。
ですが、Zを購入していただき
考え方も柔軟なお客様から
2台目として違うものに乗ってみたい
という形で仕事が舞い込むことが増え、
当社としても2台目なら普段取り扱っていない
車種でもお引き受けするか、
という形で他の車種も取り扱うようになります。
その中で私がいろんな気づきが合った
わけです。カワサキZ系以外にも
魅力的なバイクはあるじゃないか、と。
それにプラスして、使用する部品の
組み合わせでも大きく乗った時の印象が
変わります。
例えば排気量、
1100ccぐらいのものと1200cc
のものでは、音も乗った時の印象も
他の使用する部品が全く同じでも変わります。
ぜひ数台持たれる時は、排気量の
大きい物と小さい物を持ってください。
どちらが良いではなくどちらも面白いので。
またホイールやブレーキ、
シートなどのライディングポジションを
換えても別のバイクのように違います。
また当社ではエンジンの仕様により
マフラーの構造を変えたりしますが、
それでも変わってきます。
つまり一台を長く乗っていたり、
多くの費用をつぎ込んで手を加えていても
全てを知っている、という事には
ならないわけです。
そして車種が違えば同じメーカーの
部品を使って手を加えても
乗った時の印象は大きく変わります。
これが旧車バイクの面白さの一つで
世界に唯一の自分だけのバイクに
することができる。
年齢を重ねることにより、私も
すこし回りの意見を聞く耳も出てきたのも
あるかもしれません。
カワサキZ以外の車種に注文をいただいて、
頑張って試行錯誤しながらレストアをする。
完成するとまず、スタイル面で
その良さに気付く。カッコが全然
いままでと違って見える。
なぜその良さが解らなかったのかと言えば、
古くなることにより各部品の見た目が
劣化して主張がなくなり印象として
メリハリがない状態になっているから。
車体全体が一体化してしまっているのです。
メッキは光り輝き、黒の部分は黒く、
つやのある部分はつやのある状態、
半艶の部分は半艶であってこそ
本来の姿形が解ります。
それぞれの部品がここにあると主張する
状態がレストア後の本来の姿です。
中古になる、劣化するとは全体が
一体化しそれぞれの部品の主張が
弱っていくことです。
各部品がきちんと主張する状態に
戻すことにより、
カワサキZ系以外も本当のカッコよさを
知ることができた。
そして同時にエンジンと足回りの
整備をする。
エンジンをオーバーホールして、
元々の性能や音を取り戻す。
足回りも必要な部分はベアリング、
ブッシュ交換、フロントフォークの
インナーチューブを再メッキなど
オーバーホールして、
本来のハンドリングを取り戻す。
その中で、今まで良いイメージではなかった
バイクが、まるで別のバイクのように
見た目も走りも感じるようになったわけです。
全ての古いバイクが好きなわけでは
ありませんが、ホンダさんの旧車バイクの
見方も大きく変わりました。
旧車のカワサキとスズキは明らかに
構造的に似ている部分がありますが、
ホンダのCB750Fなどになると
あきらかにエンジン構造が複雑、
なんでこんなになってんだろという
思いがあったのです。
ところが、エンジン作業の面倒な
事には目をつぶり、
エンジンにコスワースピストンを使って
オーバーホールして、キャブレターを交換。
マフラーを自分で作って、車体の
アンチノーズダイブ機構など一部
スタンダードでないつくりの箇所を
変更して乗った時、本来の魅力に
気付きます。
軽快に走れ、音もよく、スタイルは
さわやかで上品。
カワサキ車とはまた違う良さが
あったわけです。
20代の時はカワサキ車とホンダ車を
同時に持つ意味が解りませんでしたが、
今ではぜひ試してみてくださいと言います。
それぞれに良さがあります。
その良さにあらためて気付いた時、
まだCB750Fのベース車両はわずか
30万円で良いものが買えていました。
私は今、この仕事をしてきて
本当に良かったと感じています。
カワサキZ以外の旧車バイクの良さも
知る経験ができ、皆さんにもお勧めする
事ができるようになったので。
それは実際に整備の経験を重ね、
試行錯誤し、本来の魅力を
知っていただける旧車バイクが
納品できるようになったからです。
私は整備されていない旧車バイクを
ただ売ることには魅力を感じません。
例に挙げているCBも値段が上がって
きています。
ニンジャもそのままで軽微な整備で
乗れる状態のものはほぼ絶滅状態ですが、
レストアして乗るには今はお買い得な
タイミングです。
Zは魅力的なバイクです。
ですがそれだけにとらわれず、
ぜひ他の物にも目を向けてみてください。
本当に面白いバイクが沢山ありますよ。
文章が長くなってしまい、
多少変なところもあるかもしれませんが
見直す時間が惜しいのでご容赦を。
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