優れた才能を持ったスポーツ選手でも
持っているものを出し切れない人が多くいます。
これは古いバイクにも当てはまることで、
元々持っているポテンシャルは素晴らしいのに
全くそれが発揮できていないバイクが
多くあります。
それはそれで古いからと
あきらめてしまう方もいるでしょうが、
限られた予算の中でもできるだけ
そのバイクの良い部分を
引き出したいと思っています。
今私の仕事で何が面白いかと言えば
それをうまく発揮させることができた時ですね。
これは加速、曲がる、止まるの走りの面だけでなく
見た目の方でも本来のポテンシャルというものがあります。
ではまずは走りの面から。
古いバイクは生まれてから何十年も
経っているわけですから
整備してなければ本来の能力が発揮できて
いなくても当たり前だと思います。
その状態で乗って、こんなバイクなんだ、
こんな程度なんだと思ってほしくない。
以前から繰り返し書いていますが、
それは走行距離の少ないもの物でも同じこと。
定期的に走って距離が進んでいるものの方が
むしろ良いなんてこともざらにあります。
低走行車の良いところは機械的に
消耗が少ないことでそれはとても良いことです。
ですが全ての部分が好調を維持しているわけでは
ありません。
むしろ錆が部分的に進行していたり、
動きがしぶくなっていたり、
ゴム部品の硬化が進んでいたりします。
本来の調子を取り戻すにはそのバイクごとに
整備メニューを考え、作業することが必要です。
バイクが入庫し、各部をチェックしてみると
本来の調子を発揮できていない原因が解ります。
まずはノーマルの調子のよい物に比べてどうなのかと
いう点がまず一つ。
そしてノーマルの状態に比べてどうこうではなく
フレームやエンジンなど、本来はもっと走れる才能が
あるのにそれに対して足を引っ張っている
箇所があるかないかをみます。
つまりチューニング、改良作業で
本来のポテンシャルを無理なく引き出す作業です。
これは長くチューニングの作業をしているので
これぐらいは走るはずだということが
ある程度のところまで経験で解ります。
もちろんすべて解るはずもなく
最後は組み上げて乗ってからの話になるのですが。
もちろんそれも過去に取り扱った車種であれば
そのポテンシャルは把握できています。
車種によってはノーマルのままだと
著しくポテンシャルを削がれていることも
あるわけです。
改良することによって
実際に乗っての扱いやすさも向上するので
それはもったいない。
勘違いされることが多いのは
チューニングによって
バイクに無理をさせて耐久性を落としたり
維持費が大きく上がってしまうと思っている
人がいることですね。
つまりノーマルの状態が一番負担が少なく
優れており安心できると。
そうではありません。
元々持っているポテンシャル、
よい所を発揮できるようにするだけです。
例を挙げると、
古いバイクのキャブレターは口径が小さく、
かつ、調子が崩れているものがとても多い。
つまりエンジンが欲しがる適切な混合気を
与えることが出来ない状態になっている
ということです。
物によっては、
じゃぶじゃぶガソリンがエンジン内に
入ってしまっているものもあります。
オイルを抜いた時に妙にさらさらだったり、
においが変だったりします。
オイルをガソリンで希釈すれば
エンジンにとって良いことは一つもない。
古い時代のキャブレターは口径を大きくすると
低中開度、低中回転域で扱いにくくなって
とても乗っていられないものばかりでした。
それが現代のキャブレターは口径が大きくても
マフラーとの関係が良ければ扱いにくくなることなく
乗れるようになっています。
それでも口径の大きさには限界がありますが、
現代のキャブは高性能で、控えめな口径でも
純正の口径よりは大きくなります。
しかも張り付きなどもおきず、アクセルも軽いまま。
マフラーも古い時代のものは
消音する技術が低い時代ですから、
静かにするには容量が大きくなったり
(すぐに10キロ20キロと重くなる)
詰め物や内部を複雑にしてフン詰まりになり
エンジンの足を引っ張っているだけでなく
調子も悪くなりやすい。
特に排気量の大きいバイクですね。
その分出力は大きいのに、音の大きさは
小さい排気量のものと同じレベルまで
抑えなくてはいけないからです。
この2つだけをとっても
現代の高性能キャブレターが
エンジンが欲しがる混合気を与えているだけ、
優れたマフラーが抜けて欲しい排気を
スムーズに排気しているだけです。
つまりエンジンの負担になるようなことは
何もない。壊れる要素が増えるのではなく
エンジンの望む回りの環境を整えているだけです。
人間だって、本来の力を発揮するには
環境を整えなくてはいけません。
良い食事がとれる、良い睡眠がとれる。
暑いなら涼しく、寒いなら暖かく。
古いバイクでこれらの作業がはまった時には、
今までには見せてくれなかった面を
多く見せてくれるようになります。
気持ちよく始動して、スムーズに吹け上がり、
思うように加速してくれ、
そして音も良い。
調子が悪くなることも少ない。
維持費も安く済み、現代のバイクと
多く違わない。
そして見た目の方は。
新しい物でも古い物でも、
汚れたいてり、劣化していれば
本来の形、デザインを楽しめない。
やっぱり見た目、美しさは大切です。
乗ってない時は見た目だけですから。
どんなに美しいデザインであっても
埃をかぶっていては、メリハリがなく
それぞれの部品が主張しなくなる。
これはボルト1本でも。
かといってすべての古いバイクを
全部ばらしてレストアするには
費用と時間がかかりすぎる。
それぞれのバイクの状態から
費用対効果が高いところから整備、
レストアをする。
割と地味な感じのバイクでも
綺麗になることで別のバイクのように
見違えることが良くあります。
現代のバイクとは使われている部品、
材質が違うことが多いので、
綺麗にすることによっての主張の強さが
まるで違うからです。
樹脂の部品を金属風に見せたものと、
本物のアルミ、鉄の部品にメッキでは
直接見た時の質感、印象がまるで違います。
どうです?
ポテンシャルを発揮できている古いバイクに
乗ってみたくなりませんか。
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