王様バイク以外の話

日記

旧車バイクはフルレストア作業が施された
カワサキZ1、Z1000MK2など、いわゆる王様の
ようなバイクがあります。

これ等のバイクだけではありませんが、
古いバイクは価格が高騰し、
王様フルレストア車は簡単に手が出せないように
なってしまいました。
写真のようなきちんとしたフルレストア車を
今手に入れるのはとても難しくなっています。

そのせいでこれらのバイクは余計に
本来整備すべき箇所に費用がかけられず、
売れやすくなるような上っ面の部分をきれいにしたり
整備に詳しくない方にウケる箇所の整備メニュー、
つまりたいして効果がなくむしろ悪くなったりすることに
費用が使われたりしたダメバイクが
世の中を循環しています。

当然そのようなまともに整備されていない
王様バイクには手を出さないほうが良いのです。

たいして好きでない方で資金面で余裕がある方に
買われたりすることも多いですから、
回りの雰囲気で購入し、飽きたりすれば
たいして乗ることもせず手放してしまう方もいます。

ですがそれら王様バイクでなくても、
回りをよく見渡してみれば他にも
今の技術で整備やチューニングすると
かなりよい古いバイクがけっこうあるのです。

オリンピックで金メダルの選手は覚えていても
銀メダルの人は忘れていたりしますよね。
世界の2番、3番、そして国の代表選手という事でも
すごいことです。

元々特に私が古いバイクでもっとも良いと
思うところは低速から中速域で走っていても
味わいがあり楽しい所です。

つまりその辺の交差点を曲がっても、
信号からのスタートでも運転して楽しい。

そこらへんでいうと、まだ約20年前の
SC57のCBR1000RRのノーマル車に
(マフラー交換とフルパワー化のみ)
そういう低速域での味はない。

つまり街中を移動する最中や、
のんびり走っている時は運転して楽しさがない。
かといって街中で爆走するわけには
いきませんよね。
せいぜいシフトダウン時にブリッピングして
その鋭いレスポンスを楽しむぐらい。
特別なバイクに乗っているのはこの時感じます。

ある程度スピードをださないと
バイク本来の味を楽しめない。
スペックはすごいのですが、あまりにも
その実力が使えない状況では
このバイクは楽しめない。

実際に運転するとよく解ることです。

ですから、乗ってすぐよりも
徐々に体がなじんでから楽しめるバイクですね。
そこらへんがエンジン始動から乗ってすぐに
楽しみが始まる旧車バイクと違います。

またはっきり書きますが、
この手のバイクもこの車種にノウハウのある
一流の方がセッティングし、
必要な部分に手を加えると
めちゃくちゃいいバイクに仕上がります。
そんなに費用も掛かりません。

当社は古いバイク屋なので
その辺の新しめのバイクのノウハウと
扱う腕はないのです。
いいもの(状態)かどうかは解りますけどね。

では味とはどうやって出来上がるものなのか
という事ですが、これは人により
出来上がってくる、仕上げるものだと思います。

つまり設計時にこういう味にしようと言って
出来上がるものではないような気がするんです。

そうではなくそのバイクが設計された時の
色々な制限、技術の中で結果的に
出来上がったものに、
最終的に人がセッティングや部品の変更など
することによって味が出てくる。

どこかの一点が剛性が高いから味が出る
というわけではなく、多くの部品の組み合わせ、
調整で味が決まります。

古いバイクでもキャブの調子が悪かったり、
負圧キャブだったり、
圧縮の低すぎるピストン、
バネレートが合っていないスプリング、
抜けの悪いマフラー、
その他電装系の劣化、消耗品が
適切に交換されていないなど。

これらがせっかく良いものでも
味をなくしてしまうわけです。
それをそのバイクそのものだと決めつけて
いるのです。
本当に食わず嫌いでもったいない。
美味しいものありますよ。

料理でも良い素材があればそれをより
おいしく食べられるように
腕の良いシェフがいれば調理しますよね。

上手く調理できていない
味がない状態のものをそのバイクの実力、
魅力だと思っている方がほとんどなのです。

それは乗っても楽しくないしもったいない。

で、その味決めしているのは
当社でいえば責任者の私です。
使用する部品、出荷時の調整を決めているのは
私ですから。

そこで調子の悪い、
ガソリンがエンジン内にじゃぶじゃぶ流れて
しまっているようなキャブを再使用してと
言われても。
(抜いたオイルにガソリンが混じっていませんか?)
お金を支払ってわざわざまずい料理を出せと
言われているのと同じですから、
お客さんとバイクの事を考えれば
まともな人なら断るでしょ。

バイク屋でも規模が大きくなると
一人の方が味きめをせず
何人もいるそれぞれ担当した人が
それぞれの基準で部品の手配や調整をして、
まるでまとまりのないバイクが納品されたりします。

例を挙げると、支店が何店舗もあり
それぞれの店でチューニングやレストア
作業をすれば、仕上がり、味にばらつきが
でるのが誰にでも想像できると思います。

本来、大規模な店でも大掛かりな作業をするなら
どこかの1つの店舗で集中して作業、
実際に走行テスト、調整して出荷します。
それなら味付けの部分に一本の筋が
通ってお客さん希望のものが手に入ります。

これはメーカーのような大規模な会社
でも同じです。

車やバイクが形になり
最終的に走って味付けをする段階で、
担当が変わってしまったり、
年齢を重ね引退される時に考え方などが
(メーカーがどの部分を大事にしているか)
引継ぎをされていなければ
新たに出てきたバイクや車は
私たちが期待するものとは違ってきて
当たり前です。

ホンダにはホンダらしさ、
カワサキにはカワサキらしさ、
スズキにはスズキらしさを求めて購入します。

そしてタサキチューニングの車両には
タサキチューニングの味がします。

初めてバイクを購入する方には
それらの味の違いが解らないので
最初から自分好みのバイクを手に入れるのは
難しいですよね。

そういう時は私に聞いてもらえれば
古いバイクなら大体答えられます。

したがってカワサキ車をホンダ車のような
味付けをしないことが大切です。
それぞれのメーカーの良い部分があるからです。

当社は?
当社の味付けは私が決めます。

どこの部品を交換し、調整はどうするのかです。
入庫した時点でどこをどのように整備したり
チューニングするかをしっかり考えます。

そして大きな整備の後は必ず試乗し確認します。
そして思ったようになっていなければ
調整を繰り返します。

王様バイクの良さは確かにあり
私もとても良く解っています。
ですが多くのメディアで取り上げられ
持ち上げられ、過剰になっている部分も
多くあります。

王様バイク以外の回りの古いバイクも
きちんと整備やチューニングやレストアを
することによって、
本来の味を楽しむことができるようになります。

その費用は王様バイクほどには高くないのですが
それでもそれなりにはします。
大体今の段階では王様の半値ぐらいですね。

なぜそれなりの金額になるかといえば
使用する部品の値段は変わらず、
手間も変わらず、そういうバイクにも
本来の価値が解っている方が少なからずいて、
それなりの車両価格が形成されているからです。
つまりただではない。

ですがいったん手に入れると、
王様バイクよりずっと手放す方が少ないのです。
CB、GPZ900R、空冷GPZ、GSなどなど。

もっと王様以外のバイクにも
目を向けてみるのはどうでしょうか?
今当社で持っている古いバイクも
良い味のバイクばかりで、しかも
状態も良くミッションなどは新車の様です。
今度そのミッションは紹介したいと思います。

そういう意味ではCBX1000を
高くない時に手に入れていた方なんかは、
自分の価値観で所有されていて本当に素晴らしいですね。
私も長くこのバイクについては誤解していました。

このバイクはフレームにダウンチューブ
(エンジン下側を通るフレーム)
もないタイプで、CB-F系よりも構造的に
フレーム剛性の面では劣るのですが、
きちんと整備してチューニングすると
味よしの唯一無二のバイクになります。
整備する側はいろいろと大変なのですが。



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