新しいバイクと古いバイクの線引きはどこか?
これは人それぞれ考えが違うと思いますが、
私の中での線引きはいくつかあります。
エンジンでいえば空冷エンジンと水冷エンジン。
そしてキャブレター車とインジェクション車。
車体側でいえば、鉄フレーム車と、アルミフレーム
などのそれ以外の物。
こんな感じで、全てこの条件が重ならないと
古いバイクとは言えないなんて
頭の固いことは思いません。
ただどんなバイクに乗っても、
100%自分に合っているものなどは
存在しないので、もっとここをこうすれば
良くなる、愉しくなるという部分に
手を加え難い、あるいはできないということが
新しい乗り物全般に対し言えると思います。
こうしたい、ああしたいが
バイクのオーナーさんそれぞれにあって、
(あってほしいと願っています)
メーカーが作ったそのままが全て
素晴らしいなんて事があるはずもなく、
新しいバイクで自分にあった物を一生探し続けて
次から次へと買い続け、結局見つからない、
なんてこともあるでしょう。
お金が余っており
色々買うのが趣味というのであれば
それでも良いと思うのですが、
今までいろんな人を見てきましたが、
そういう方は一気に熱くなり、冷めたりして
バイクから離れていくことが多いですね。
本当の意味でのバイクを操ることの
楽しさを理解できないまま。
そういう人はスペックだけで一つも思うように
加速しないエンジンに、それに合わせた
足回りで喜んでいる。
私は時間がないので巻きこまないで欲しい。
たくさん乗りかえるにしても、
中心にあるバイクだけは多少苦しくなっても
残しておくのがお勧めです。
古いバイクや車は手放すと後では
なかなか買えないものです。
バイクはスペースもあまりとりませんし、
その点でも有利。
購入前にチョイ乗りでは良く感じた物が
所有してみると思ったほど自分にあっては
いなかった、ということもよくあります。
人によって体格も違い、乗り方も違い、
感じるもの、気になる部分も違います。
たくさん乗り換えるのではなく
気にいったバイクを自分にあった物に
変えていくという考え方はどうでしょうか。
日本の古いバイクは日本の道に合った
バイクになっています。
いまでこそ海外に売ることを中心に考えた
物なんて当たり前の話ですが、
70年代のバイクは世界で売りたいと思っていても
今の様にたくさん情報は入手できませんし、
テストも日本で走って行うことがメインになります。
その結果自然と日本の道に適したバイクになってます。
だから現代の交通事情や、オーナーさんの
使い方に合わせて上手に手を加えたり、改良すると
今でも日本の道を走るの楽しいのです。
この手を加えていく時に大切なのが、
一定のレベルに達したら、
どちらの方向に進んでいくかを明確に決める、
ということです。
古いバイクはたとえ排気量が大きいバイクでも
ノーマルであればエンジンの力はそれほどでもなく、
車体、足回りもその力に合わせた程度で、
改善できる部分がたくさんあります。
また古いバイクは今までの整備がダメなものが
ほとんどだったり、全く整備がされていないものも
あります。
その必要な改善、整備を正しく行えば、
(これができる人が少ないのですが)
ある一定のレベルまでは高速の安定性も、
旋回などの機動性も同時に向上します。
この時点は足回りもノーマルに近いものと
自然となるでしょう。
足回りは換えてもホイール、リヤショック
ぐらいでしょうか。
ところがその一定のレベルを超えたところからは
どちらに進むかをはっきりと決めないかぎり、
ろくなバイクにはなりません。
これは充分に経験、ノウハウのある店と
相談して決めるのが一番良い方法です。
これは古いバイクに限らずだと思うのですが、
特に鉄のパイプフレームのバイクはそうで、
一石二鳥は無理です。
こうしたい、こういう部分での走りを
優先したいとはっきりイメージできれば
それに向けて良いバイクにできます。
先ほど書いたバイクにとっての一石二鳥とは何か、
はっきりさせないといけないイメージは
これは主に高速の安定性と、
(高速道路だけを言っているわけではない)
旋回の機動性、どちらをとるかです。
エンジンもそれにより、どうするかが
変わってきます。
先ほど書いたようにノーマルに近い
ある一定のレベルまではどちらも良くなります。
ところがそのレベルを超えるとなれば、
そのどちらをとるか決めなければ
出来上がる物は、どちらもダメな
すべてが中途半端なものになります。
乗り心地が良いスポーツカー。
柔らかいスプリングに可変タイプのダンパー、
柔らかいブッシュ、笑ってしまいます。
レートの高いスプリングに高性能のダンパー。
普通に乗っていて問題ないレベルの
乗り心地なら解りますが。
新しいバイクも車も
高速の安定性と、旋回の機動性、
どちらをとるかがはっきりせず、中途半端で
ダメになっている物があります。
最新の技術をもってしても、
両方良い物は難しいのです。
速いのは速いが大切な接地感などが
伝わってこないなど。
ましてや鉄フレームの空冷バイクで、
両方得たいなど上手くいくわけがありません。
店選びの際にここの部分を
見極める必要があります。
その店がどれぐらいの負荷や、速度、
どのような場所を走ることに力を入れているのか。
最後にそのバイクがどのように仕上がるかは
人次第です。
その仕上げの部分で、しっかりとした着地点が
定められていなければ、出来上がる物は
ピントがさだまらない、ただお金だけがかかった
乗ってもつまらないものになります。
飾るだけではない、走ってナンボとは
着地点がここだとはっきり決めて、
回りに惑わされずそこに向けて作り込む
ことだと思います。
そのピントが自分と合う店を選ぶ。
今は情報がたくさん手に入りますが、
今までのお付き合いがあるからと
不得手なことをさせてもあなたのバイクは
煮詰められた良いバイクにはならないのです。
どこの店でもホームページや、
あるいは直接来店しても良いと思いますが、
納品されたバイク、どのような作業を
しているか調べれば、
どこにピントを合わせているのか、
大概解るものです。
古いバイクや車で、
どこにピントを合わせているかが
解らない店なら私なら注文などしません。
上手くいかないのが頼む前から
解っているので。
話は変わって、バルブガイド交換に
ついて書きます。
当社に入ってくるエンジンでも
他店で行われたバルブガイド交換作業では、
とてもミスが多く、どのようなミスなのか
紹介します。
ヘッドのバルブガイドをヘッドを傷めないように
抜いた後、穴の内径を測定し、その穴に合わせた
バルブガイドを注文します。
写真が当社で入れているバルブガイドですが、
カワサキZ系で使うもので、
写真の物は12.06mmを5本、
12.08~09mmの物が3本になってます。
このガイドはツバつきでこれがストッパーに
なっており、これがとても優れたところです。
理由は後で説明します。
さらに溝が2本入っているのは
オイル下がり対策で、ここに液体パッキンを
塗ってからヘッドに圧入するようになっています。
この関係で最後に通すリーマは通常より
0.01mm大きい物を使っています。
もっと大きいサイズの物も販売されており、
12.12mm、そしてそれ以上の特殊サイズも
あり、通常使いませんが、特に問題があった時用に
極端に大きい物がもう一種類あります。
ヘッドのガイドを抜いた穴の径には
バラつきがありますから、それにあった
バルブガイドをそれぞれに圧入する必要が
ありますから、購入したバルブガイド外径を
マイクロメーターで測定します。
バルブガイドに数値が書いた写真、
これは実際に測定した数値を記入したものです。
ガイドを抜いたヘッド側の穴8つにそれぞれ
適切なサイズのバルブガイドがあれば
そこに圧入します。
この時ガイドが大きすぎれば、
あとでヘッドにクラックが入ったりします。
あまりありませんが、ガイドの薄い部分に
ヒビが入ることもあります。
純正のまま後で交換などされていないものでも
数は少ないですがヘッド側に軽くクラックが
入っている物はあります。
表面の方の少しだけであれば
問題ありません。
今回紹介の物は12.061~
12.064の物5本はそのまま使えました。
残りの3本12.094~097の3本は
旋盤で加工してサイズを小さくします。
今回は12.07~075に加工しました。
これはもともとこのサイズが販売されていないため
大きい物を小さくして、適切なサイズにしてから
ヘッド側に圧入します。
良くあるガイド交換のミスで見るのは、
この入れるガイドのサイズが太すぎて、
大きなクラックが、ヘッド側に入って
しまっているものです。
あまりにひどければヘッドを交換する
羽目になります。
圧入するバルブガイドのサイズをいくつに
するかはとても大切なことなので、
そこを雑にしてはいけません。
ガイドが4本づつ並んでおり、
ガイド先端部にIN1~4、EX1~4
と書いているこの写真はヘッド側の、どの位置に
入れるか決まり、それを書いている物です。
次のバルブガイドを立てた写真は
圧入直前の溝に液体パッキンを塗り、
オイルを一部に塗った圧入直前の写真です。
ヘッド側のEXの1番写真、これが圧入前。
この時すでにヘッドは暖められ、
膨張しており、圧入時の穴の径は
広がった状態になっています。
次の写真が圧入後。これはすでに冷えた状態で
余分な液体パッキンはすでに取り除いてあります。
次の茶色の1本だけ写っているバルブガイドは
純正のバルブガイドです。
矢印のところにクリップがついており
圧入時にこれ以上は入らないように
ストッパーになっているのですが、
良く見かけるのはこのクリップを越えて
さらにガイドを深く打ち込んでいるものです。
ひどい物はバルブステムシールが
きちんと取り付けられないほどに、
深く打ち込んでいるものも、見たことがあります。
あり得ないミスです。
これはハンマーで打ちこんで
バルブガイドをヘッドに圧入していくのですが、
感覚で行うため、すでにこのクリップの位置まで
来ているのにそれが解らずこのストッパーを越えて
打ち込んでしまっているのです。
これは大袈裟ではなく本当に多いです。
このようなことが起きないように
なっているのが使っているバルブガイドで、
このガイドはツバがはっきり出ているので
そこの部分で明確にストッパーまで圧入されたのが
解ります。
ですのでミスをしないようにできています。
まとめると、
バルブガイド交換は入れるサイズが大切で、
ヘッドの抜いた穴径に対し、大きすぎず
小さすぎずの物をつかう。
なければ加工して、ちょうど良いサイズにして
使用する。(手間がかかる作業)
ガイドを打ち込みすぎないようにする。
当社が使っているような様な対策品を
使うのが一番良いと思います。
打ち込みすぎた写真も紹介したかったののですが、
見つからなかったため、これは見つかったら
また紹介したいと思います。
バルブガイド交換をわけのわからないところに
依頼するのは大変危険です。
良く良く依頼先は考えましょう。
またバルブガイド交換を行ったら、
バルブシートカットすり合わせ作業は
必須です。
これも店により大きく品質に差があります。
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