古いバイクの百点を知る

古いバイクを責任をもって
整備や販売するときには、

そのバイクに、どこまで整備を
する必要があるのかをきちんと判断し
実際に行動できなければなりません。

その判断を間違えずにするには
そのバイクの完璧、100点の状態、
(この後説明していますが、
実際には100点のものが解ると
いうこと自体が難しい)

少なくても90点以上の状態を知る
必要があると思います。

90点~100点を知らない人から
物を買えば
失敗する。

レーサーなどを作る場合は
また話が別になりますが、
これから状態の良い古いバイクを
失敗しないで買いたい、
すでに所有されている方なら
これからトラブルなく乗り、楽しみたい、
という当たり前の希望を叶えるために、
私たちにとってこれはとても重要な
ことです。

この百点、基準になるのは、
新車で発売された純正そのままの状態と、
フルレストアされた状態です。

昔、新車で販売された状態というのは
はっきりとした基準になります。
つまりメーカー出荷時の状態、
これが百点の状態。
その新車時の100点は、状態、程度を
言っているだけなので100点だから
良いバイクと言っているわけでは
ありません。

私がバイクの仕入れをするときには
これ基準で仕入れます。

つまりどこがどれだけ傷んでいるかを
外観からできるだけ推測し、
なるべく状態を把握した上で仕入れる。
当たり前のことを書いてますが
これが40年も50年も前のものが相手ですから
できるだけ購入価格も抑えたいので、
これが実に難しい。
経験があり、慣れている私が難しいのですから
素人にはもっと難しいことになります。

もちろん当時の技術は現代に
大きく劣りますから今の技術と
比べるのではなく当時の新車状態から
比べてみて何点かと
なります。
そしてできるだけ修理する箇所が
少なくて済み値段も高くないものを
仕入れる。

先ほど100点のものは解りにくいと
書きましたが、
例えば1972年式Z1、
つまり50年近くも前に販売された
私と同じ歳のZ1の場合で、
明確にはっきり100点の状態が
解るというのは、記録、記憶の面でも
難しいと思います。

人の記憶はあいまいですし、
都合の良いように書き換わったりします。
写真など記録があっても、
ないよりはるかにいいのですが
50年も前になれば鮮明でなく
あいまいで怪しいものです。

また当時の技術では一台一台の
品質のばらつきもかなりありますし、
1台のすべてを知っていても
他に販売されたものがすべて
解ったことにはならない。

また、車両に問題がある部分には
生産
されながら随時改良、変更を
されていますから、

この年式のこのバイクはこれが100点と
言い切るには無理があり、

およそ90点以上解れば正解と言えると
思います。

当然私が生まれたときぐらいに
Z1がカワサキから
発売されたわけですから、
当時直接見たわけではないのですが、
長くこの仕事をしているうちに
その90点は解るようになっています。

問題はもう一つの基準、
フルレストア車の100点です。
なぜフルレストア車の100点が基準に
できるかと言えば、
今、ベースになったその古いバイクを
すべてばらして確認、
必要なすべての作業を、
見た目、機能面両方で最大限の努力で
行って、結果が出ている(はず)
だからです。

つまり、Z1で言えば70年代当時の
新車でなく、

現在、今2019年版の新車ということです。
だから基準にできる。

ですが問題は、現在のフルレストア車の
品質は、
70年代に販売されていた
カワサキから出荷された直後の新車のように

誰もが納得できるはっきりとした
明確なものでは
ありません。

つまり
「このバイク、バイク屋がフルレストア車と
言っていたものを買ったんだ」

という、
言ったもん勝ち的なあいまいなもの

なのです。

だからフルレストア済み
と書かれたバイクがゴロゴロ
出てくる。
そんなもんまともなエンジンOHを
できる人がとても少ない中、
大量に作れるわけない。

結果フルレストア車なはずなのに、
ばらしてみると悲惨なところが
たくさんあったり調子が悪かったり
するのです。

つまり手抜き、あるいは間違った作業。

程度の悪いバイクを引っ張ってきて、
ばらしてテキトーに色を塗り、
品質の低い新品部品をどこにでもあるような
ねじで組み付けるやっつけ仕事で、
あっという間に時間も手間もかからず完成。
それをフルレストア車などと言う。
ですがそれはフルレストア車ではない!

当社のように予算を考えながらも、
今準備できる最善の部品に
こだわり、
その部品を使う理由を考え、
適切な加工をして、
オーナーさんの意向を聞きつつ
時間をかけ丁寧に組み付ける。

他の仕事を一切せずに、
当社のように専門店ですべての
段取りが整っていたとしても、

つきっきりで2人で作業して1台当たり
3~4か月かかり、年に3台くらいしか
製作できない。売り上げも大したことない。
だがやりがいがあり、好きだから
やっている。

完成品は古いバイクの本来の魅力を
感じることができ、20年も独立してから
経っているのでそれなりの台数は
オーナーさんのもとに送り出しては
いるけれど、いまだに出来上がれば
こんなにカッコよかったかと
感動する。

本気でやっているのならどこの店も
これぐらいの生産台数になるはず。
たくさん人を雇っても、
きちんと判断ができ、
口だけでなく実際に作業できる人は
ほとんどいないから。

ほかの業種でもどこの世界でも
同じですよね。

いろいろ言うなら、
実際に出来上がったもの、
実際に組み付ける
内外すべての
部品を見せて説明してほしい。

当社は100%見せられる。

まともな物は、なぜそんな金額になり、
時間がかかるのか、機械に詳しくない人が
聞いても
納得できる話になる。
それが予算内で買えるかどうかは
また別の話です。良いものの
基準は同じです。

このフルレストア車の100点
判断は難しい。

だからこそ、店のしていること、
考え方を良く知る必要があるのです。
400万だして自称フルレストア車
安整備、安ペンキレストア車を
だまされて買うのか、
500万円出して、本物のフルレストア車を
買うのか。選ぶのは自分自身です。
そこまで出したくない時は
フルレストア車でなく、
程度の良いものをベースに整備した
バイクを買うのが良い。

これは実例を紹介する予定があります。

また逆にあきらめたり、今のバイクを
買うのも
一つの手です。
ですがダメなものは買ってはいけない。

ダメなフルレストア車を基準に物事を
考るのではなく、
本物のフルレストア車と
販売された当時の新車をまず基準に
すべきです。

GPZ900Rなどであれば、
空冷エンジンものより
新しいので販売当時の新車基準の判断で
間違いなく良いものが買えます。

このように100点を知らなけらば
ならないのは
ベースになる車両を
仕入れるときだけでなく、
これから行う整備作業の
基準にも
なるからです。

古いバイクの場合、
どんなに程度が良くても

そのまま乗れることは100%ない。
絶対にない。
それが乗れるというのなら、
基準が低~いから。

いわゆるいいものを知る。
昔か家庭によっては親御さんが
子供に小さいころから
いいものを知らんと、といろいろ
経験させますよね。

その基準は本物のフルレストア車。
きちんと作業が行われた場合、
見た目はどのようになるのか、
乗ってみたらどうなるのか。

それを元にして、
作業終了時に店やオーナーさんの
求める状態やレベルと
違っていれば
整備などが必要になります。

購入された方がレストア車の希望でなく
きちんとした整備車両をお望みなら、
フルレストア車に乗って走らせた時の走りを
基準に考える。

その現在の状態を、
外からすぐ見える部分だけでなく、
見えない部分も把握して
(それには当然、判断できるように
分解して
部品単体の状態にしてから掃除し、
状態把握ができるようにすること)
それにプラス、過去の経験、データから
これから起こることを推測して
整備をします。

いわゆる予防整備です。

今とりあえず走れるからよい、
安い方がいいという考えの方も
いるかもしれませんし、

それは人それぞれ、自由です。

ですが当社では、
購入して何年間も、トラブルの数は
現在
売られている新車のバイクたちと
同等になるようにして売る、
つまり、ほとんど何も起きないようにして
販売する。

という考え方です。
これには相当ノウハウがいります。
ただ買ってきた部品を組み付けても
そうはなりません。

私がしょっちゅう故障したり、
バイクを買う、消耗品を交換する
以外に計算外のお金を
使ったり
するのが好きではない。
調子が悪いことを買ったところに
連絡し、治してもらうのも面倒くさい。

その都度余計な時間も取られる。

自分がそういう考え方なので、
それを基準に作業する。
また考え方が似ている人のために働く。

昨日の夜は整備コースで販売した
Z900の純正リヤショックを仕事が
終わってから1時間掃除しました。
子供を迎えに行くのが
ギリギリになってしまいましたが、
他の整備や部分レストアした個所と
バランスがとれ
全く印象が変わりました。

このリヤショックはクロームメッキですが
今回車体がノーマルのスタイルなので
カワサキがここをメッキ仕上げにした
センスが素晴らしいと、
当時そういうバイクが
多かったにしても
いまさらながら思います

元々状態が良かったから再使用なのですが。
私はこういうことに時間を使いたい。

予防整備をしっかりしておく方が、
結果かかる費用は少なくて済み、
楽しめる時間が増え、
嫌な思いや、面倒なことが減り
そして不思議ですが良い人、良い会社など
の出会いが増える。

きっかけはそう、
綺麗なバイク乗ってますね、
とか
良いバイクに乗ってますね、

みたいなもんです。
今売られていて、お金を払い、
1か月も待てば手に入る物とは違い、
良い店を探すのも大変、
通常より長い時間待って、
納品される。

その良いバイクを見たり、
良いバイクが話題になることにより、

その本質的なものの良さ、価値が
見抜ける人が声をかけてきたり、
興味を持ってくれる、
そういう人が多くはないが確実にいる、
そういうことだと思います。

もちろん知らない人と話すのが苦手
という人もいるでしょう。

ですが、私も部品が欠品で入手できない時
などに分けてもらったり、

情報をいただいたりすることがあります。
本当に困ったときに、古いバイクは
横のつながりが
とても大切です。
困ったときはお互い様。
先日も以前部品を分けていただいた方の
Z1100Rの欠品のエンブレムを

修理しました。

悪いものしか知らない人が
良いものを作れるわけありません。
当たり前の話ではありますが、
人のことには気が回っても、
肝心の自分のことになると、

意外に忘れていたりするものです。

ここの基準がずれていたり
低い人が、まともな整備したり
良い品質の古いバイクを販売できる
はずはないのです。
そしてその大事なまともな基準を
生かして整備や、チューニング、
レストアメニューを決める。

先ほど書いたように当社では
購入して何年間も、トラブルの数は
現在売られている新車のバイクたちと
同じ程度となるようにして売る、
つまり、ほとんど何も起きないことを
目標に整備します。
文にすると簡単ですが、現場では
時間もお金も技術も必要で
なおかつ忍耐もいるので大変です。
後、少し高めの目標と
変化を恐れないことでしょうか。
話がずれていますが。

このメニューを決める時には、
単に感覚などではなく、

今まで実際に納品後に得た経験、
実際にトラブルが起きたというような
マイナスの事例を防ぐメニューと、

フィーリングが良い、
楽しかった、乗りやすいなど、
さらに納品後にお客さんが
どこに手を加えたくなるか、
実際に加えて最初からしておけばよかったと
報告されたものなど、
これらを予算を考え、なるべく費用を
抑えつつ、
最大限に効果が出るように
段取り、メニューを決めます。

さらに大事なのは
整備やチューニング、
レストアはなんでもすれば
いいってものではない。

一見いろんな方法が自由に選べるような
感じがしますが、実際はそうではなく
正しい方法、守らなくてはいけない方法、
手順というものがあり、

新しい技術でも
そこをきちんと守らないと
まともに走らなくなったり
かけたお金がすべて無駄になることがあります。
私にかかわった人には
これは絶対に避けなくてはいけない。
そう思っています。

1か月ほど更新の間が空きましたが、
写真のZ900(整備後販売コース)
の作業をしていたためです。

なかなか時間が取れないので、
ちょっとしたことをインスタグラムで
紹介しています。
タサキチューニングで検索していただければ、
すぐにでます。

 

 

 

 

 

 

 

 

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