バイクの製作模様を約240枚の写真と解説で紹介しています。
神奈川県にお住まいの吉田様のZ1000Rはご依頼によりノーマルのスタイルをより多く残して製作しました。エンジンはコスワースピストンのオーバーホール仕様ですが、後日さらにヘッドチューニングしてもその他の部分に問題がでないように製作してあります。今回はマフラーもノーマルステップ用に製作しました。エンジンの能力をフルに引き出し、なおかつ空冷2バルブらしい力強い音が聞けます。ほとんどの方はこれ以上の出力は無用と答えると思います。
足周りもレストア、整備を徹底して行い最新のオーリンズ製リヤショックとミシュランのタイヤにより乗り心地もよくしかもノーマルの足周りにしてはとてもよく曲がります。私自身(田崎)も「ノーマルの足周りでもこんなに曲がるんだ」とR2本来の能力を見せてもらった感じがします。特に今回は吉田様が選択した高価なリヤショックの効果が大きいと思われます。
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エンジン、フレームの下地処理
エンジン組立
ヘッドガスケットです。コスワースピストンキットに付属している多層型メタル製です。熱伝導もよく社外品のピストンを使う場合は必需品です。 |
オイル通路がある端の部分のみオーリングが入るように穴を大きくして加工しています。言葉で書くと簡単ですが、バリはでるは切りくずが何枚か重ねてあるガスケットの間に残らない ようにしないといけないわでとても手間のかかる作業です。詳しくは田崎ブログへ |
色塗りが終わって、組み付け直前のヘッドです。 |
バルブステムシールを組みつけた画像です。 色塗り前に、燃焼室の若干の加工とカーボン落としと研磨、ポートのカーボン落とし、ガイド交換、バルブシートカットすり合わせなどを行っています。 |
ヘッドの組み立てです。 |
バルブを組み付け、バルブスプリング、リテーナーを組み付け、続いてスプリングコンプレッサーでバルブスプリングを縮めておいてコッターを組み付けます。 |
普通のディーラー自動車整備士時代より当然ビトーR&Dで教わった組みつけのほうが色々細かい部分まで考えて組み付けてます。もちろん時間もそのぶんかかります。 |
又あらかじめ各部品はクリアランスや消耗具合をチェックし、組み付け直前に必要な部分に給油やグリスアップしてから組みつけています。 |
バルブまわりの組みつけが終わり、ステムエンドをたたいてなじませた後、カムシャフトをかり組みしてある程度バルブクリアランスを調整しておきます。 |
こうしておくと万が一今までの作業でミスがあったとしてもそれを発見できますし、後で正規に組み付けるときに作業がスムーズに進みます。 |
カムシャフトのアップの画像です。この車輌についていたカムシャフトは程度が今ひとつだったので当社で在庫していた程度のよい純正カムシャフトに交換しました。軽く研磨してあります。 |
実際にカムを仮組みしたところです。 |
シックネスゲージですべてのバルブのクリアランスを測定、調整します。 キチンと組み付けると仮組みの状態よりクリアランスは狭くなることが多いので、正規のクリアランスよりやや広めに仮調整しておきます。 |
カムホルダーを載せてヘッドは完成です。いったんこの腰下が組みあがるまでこの状態でほこりが入らないようにしておいておきます。 |
クランクケースです。 シリンダー ライナーが入る4個の穴の部分はカワサキZ1~Z1000系まで機械によるケースボーリングを行っていますが、ローソン系、J系はもともと穴系が大きく少ししか拡大する必要がないためにサンドブラスト前にリューターで広げてあります。 |
加工時に確認はしてあるのですがクランクケースにシリンダーが問題なく入るか念のためもう1度確認ではめてみたところです。 |
アッパークランクケースに新品のスタッドボルトを組み付けたところです。よくクランクシャフトの位置決めのピン部が割れていますが、このエンジンは当然大丈夫です。 |
クランクケースをひっくり返します。 |
エンジンに使う新品のカムチェーンです。 |
クランクケースに必要なものを組み付けます。クラッチハウジングなどは後でも組みつけられますが、今回は先に組み付けています。 トランスミッションはアンダーカット加工済み、今回はお客さんが先々ヘッドをチューニングしてもギヤ抜けなどおきないように少しだけきつめに加工してあります。走っているうちに自然になります。 |
クランクシャフトのアップです。事前に曲がり、ねじれはチェックしてあり芯だしピン溶接してあります。状態が良いのでクランクシャフトはベアリングなどは交換していません。 |
ケースあわせ面に液体パッキンを必要な分だけ塗ってロアクランクケースを組み付けます。 あらかじめボルト類はサンドブラスト後に必要な物は交換や研磨を行った後に再メッキしてあります。液体パッキンをやたらたくさん塗ってしまうことで内部ではみ出た液体パッキンがとれてオイル通路を塞げば焼きつきなど大変なことになってしまいます。 |
ロアクランクケースを組み付けひっくり返し、上部のボルトを締めた後、次の作業に入ります。 |
スタークラッチの部品です。以前に整備した後がありましたが、迷いなくASSYで部品交換します。エンジンの調子がよくなるとスタークラッチには負担がかかり空回りしやすくなります。 |
同じくスタータクラッチの部品です。この部品はZ系、J系問わず、少し高い部品ですが毎回交換します。 |
特殊工具で固定して3本のキャップボルトを締め終わった状態です。ここのボルトは脱脂後ネジロック剤を塗って締め付けています。 |
スタータークラッチのダンパーの画像です。(カワサキの袋の上の部品)このダンパーは厚みが何種類かあり、この車輌は薄いものが付いていましたが適切な厚さのものではなかった為交換しました。 |
スターターギヤです。この部品は痛んでなければ高いので毎回交換しなくても良いですが今回は交換しています。 スタータークラッチ周りは部分的に変えてもよくならないことがあったり、寿命が短かくなったりたりします。この部分の整備が上手く出来ない会社は実力なしと考えてよいと思います。 |
スタータークラッチおよび発電部のローターが組み終わったところです。初期のものと違って強いトルクで締め付けられるようになっているので、通常の使用で緩むことはありません。 |
コスワースピストンです。1166ccとなります。長寿命、高耐久、高出力が魅力です。 |
シリンダーにピストンをひっくり返して入れているのはピストンリングの合口隙間を測る為にシリンダーライナーにリングをピストンで押し込んでいるからです。 |
ピストンリングの合口をシックネスゲージで測っているところです。ここの数値は使用するリングによって変わりますので凄く狭いから良い、広いから悪いということではなく、リングを作っているメーカーの基準値になっていれば良いということになります。 |
ピストン、シリンダークリアランス測定中。 |
ピストンリングをピストンに組み付けた後に、クランクシャフトにピストンを組んだ画像です。 |
クラッチハウジング、ハブまわりを組み付けたところ。 |
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シリンダーまで組み付けました。 |
先ほど加工したヘッドガスケットも組み付け済み。 |
組んでおいたヘッドを載せます。 |
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エンジン右側の点火系に関連する部分を組み付けます。まずベースになるカバー部分を組みます。 |
点火系部品を止めるボルトとナットです。今回は再メッキしています。 |
点火系部品組み付け。めったに緩みませんが、緩まないように組み付けます。念のため脱脂してネジロックをつけて組み付けています。 |
カムシャフト部分のメタルです。普通のバイクにはこの部品は付いていないので、Z系、J系ならではの部品です。16個も必要でそこそこ値段もするのですが、オーバーホールする際は新品に交換します。裏の部分は脱脂しておきます。 |
カムシャフトスプロケットを組み付けます。この部分も脱脂してネジロックをつけてから規定トルクで締めつけます。4本とも同様に行います。 |
ヘッド単体で仮の調整をしていたバルブクリアランスを再度キチンと調整します。 |
サービスマニュアルに書いている測定方法だけでなく、カムシャフトの角度を変えたりして何箇所か確認しつつキチンと調整します。 |
オーバーホールをする場合、新車のときと違って再使用する部品が必ずあるので、その都度考えて良いと思う方法で作業します。そうでないと変な音がでたり調子が今ひとつだったり良いエンジンに仕上がりません。 |
バルブクリアランスを測定し、シムを交換するための特殊工具を使ってシムを交換します。 |
ノーマルはアウターシム式なので交換は簡単です。微調整の為シムは多少削るときもあります。 |
バルブクリアランスの調整が終わりヘッドカバーまで組み付け終わったところです。バルブクリアランスはキチンと作業すると結構時間がかかります。 |
ミッションのチェンジ機構のカバーです。写真の穴が開いている部分にシールが入ります。 このシールはZ系、J系共にオイル漏れしやすいので当社では早めの定期交換をおすすめしています。 |
シールを入れたところです。 |
シールがつくミッションチェンジ機構のカバーです。場所的にはエンジンのフロントスプロケットの奥につきます。 |
先程のカバー内につくミッションチェンジ機構のリターンスプリングです。このスプリングは重要なパーツで、へたってくるとミッションの変速が出来なくなる場合があります。 |
チェンジ機構のアームです。この部品が悪くても上手く変速できない場合があります。このスプリングの真ん中、支点になる部分にクラックが大きく入っているものや、がたが大きいものもあります。そういう場合はアームごと交換します。 |
アームの後ろについている先程紹介した4巻きのスプリングは見えづらいですが、ミッションチェンジ機構とフロントスプロケットが付くエンジン出力部です。 |
先に シール交換しておいたカバーを組み付けたところです。カバー本体はサンドブラスト仕上げです。 |
オイルクーラーの取り出し部品です。ビトーR&D製です。 |
今回はオーナーさんの希望で色は青から黒に変更しました。 オイルプレッシャースイッチは今まで壊れたことがないので、接触部を磨いて導通不良を防ぎ、確認で内部プラスネジをまし締めする程度です。純正品です。 |
オイルクーラー取出しを下から見たところです。以前販売されていたものと違いアルミの削りだし+アルマイト仕上げになっています。このまま組み付けると場合によって電流が流れなくなるのでエンジンに接触する部分はアルマイトをペーパーで削ってあります。 |
オイルクーラー取出しをエンジンに組み付けたところです。 |
キャブレター、エンジンをつなぐインシュレーターです。社外品より高いですが品質がよく長持ちするので必ず純正品を使います。今回のエンジンはオーバーホール仕様なのでインシュレーターは加工なしです。 |
インシュレーターを組み付けたところです。今回は固定するボルトも黒色で再メッキしてあります。インシュレーターバンドは純正新品です。 |
オイルパン回りを組み付けるためにエンジンをひっくり返します。 |
オイルポンプです。オイルポンプも洗浄してメクラ部分は一度はずして脱脂、ネジロックをつけて組み付けます。 |
そのままでも緩んでトラブルになったなど聞いたことはないのですが、多少は緩んでいますので念のためです。Z1系初期のものはこのメクラはついていないものあります。 |
オイルポンプを取り付ける部分です。オーリングとノックピンを忘れずに組み付けます。 |
オイルポンプを組み付けたところです。 |
オイルフィルター回りです。純正品を使用し、この画像では見えませんがフィルター下のスプリング、よくなくなっているワッシャを忘れずに組み付けます。 |
オイルパンを組み付けたところです。オイルパンは以前、サンドブラストをした状態のままで組みつけていましたが、今は掃除しやすいようにややつやを落としたシルバーで塗装しています。この後エンジンをひっくり返し元に戻します。 |
発電部のコイルです。このバイクのコイル部分はとても状態が良くリード線のギボシのみ交換しました。 |
コイルのリード線の画像です。このバイクはまだ良い方で、もっと真っ黒に焼けているものも良く見ます。焼けたからといってすぐに充電しなくなってエンジンが止まったりすることはありませんが、当社では車検や走行距離などによってチェックしています。 |
今回もギボシ部分を交換しました。 |
先に組みつけておいたスタークラッチと発電部のローターの画像です。ここに組み付けます。 |
コイルを組み付けたカバーを取り付けたところです。エンジンの左側になります。この部分はよくオイル漏れしている車輌を見ますが、液体パッキンを適切に塗ってキチンと組めばガスケットが良くなったこともあってほとんどオイル 漏れすることはありません。 |
クラッチの部品です。 画像上のものがディスク、下のものがプレートです。 |
ディスクを組み付けたところです。 このあと車輌完成後にテストし食いつきが良すぎてやや引きずりがでたので、プレートのみブラストしていないものに変更しました。 |
クラッチスプリングです。純正新品を使用します。 |
カバーまで組み付けたところです。 |
完成したエンジンです。 |
フレーム、ホイールのレストア
色が塗り終わったフレームです。 |
大変苦労して残した純正のステッカーです。あまりに大変なのでもしこのステッカーが程度がよく残っていてフレームレストア後も残したいお客様がいれば別料金にてお引き受けとなります。 |
ホイールも純正の雰囲気をなるべく残してレストアしまた。 |
キャブレーターのレストア
樹脂パーツののレストア
樹脂物のレストアを行いました。 |
状態の良い物は丁寧に洗浄拭き取りのみとし、常態が悪いものと、雑にレストアされていたもののみ当社にてレストアしました。 |
また状況により毎回方法が変わってくるのでこの方法でというようなものがありません。車体やエンジンなどが綺麗になるのでこの部分だけ色がさめていたりはみっともないのです。 |
電気系統の製作
フロントフォークのレストア・組立
フロントフォークをバラした状態です。オリフィス(オイル通路)は少しだけダンピングが強くなるように加工してあります。 もちろん悪い部分があれば交換して組み付けます。アウターチューブはレストア済みで、組み付け後にステッカーを貼ります。インナチューブは良い状態でした。 |
組みつけが終わったフロントフォークです。ステッカーも貼ってあります。 |
細部のパーツのレストア・組み付け
ホイール回りの組み付け
エンジンの設置、パーツの組み立て
電気系統、細部パーツの組み付け
完成
完成です。 |
今回のご紹介している以外にもかなりの作業をしておりますが、画像を取りながらですとかなりの手間と時間をとられるため、これでもだいぶはしょって紹介しています。このバイクを製作するのも実際かなりの時間を費やしました。もし本当に旧車バイクの魅力をお知りになりたい方は車種にこだわるのもそうですが、できる限り整備とレストアの時間を確保することをおすすめします。
旧車バイクたちはオーナーさんの大切な人生をより豊かなものにしてくれます。
仕事終わりやツーリング終わりに一人で磨く時間。
早朝早く起きだしてひとっ走りする時間。
気のあった仲間とのツーリング。
乗るごとにしびれる迫力ある排気音。
手を加えていくほどに自分だけのものになっていく喜び。
当社はこれからも旧車オーナーさんがより誇りを持って所有していただけるバイクになるように努めてまいります。
このほかにもバイクの製作模様を以下からご覧いただけます。是非ご覧ください。
ご覧いただいた中で何か不明な点や気になることなどがあれば、ぜひメールにてお問い合わせ下さい。
これからも1人でも多くの方にこの旧車バイクの楽しさを知ってもらう手助けが出来たらと思います。
もし少しでも、古いバイク本来の楽しさを知るお手伝いが出来れば光栄です。
旧車バイクを、飾るだけでなく乗って楽しみましょう。