900ss 中古 個性の大切さ

日記

今日はちょっと長いです。
デスモドロミック、バイク好きの方なら
聞いたことがある言葉ではないでしょうか。

要は一般のエンジンで使われる強力な
バルブスプリングを使わないバルブの開閉機構で、
DUCATIでよく使われています。

今まで知らなかった方にも
解りやすい動画などないかと思って
調べたのですが、
良いものを見つけられなかったので
とりあえずどんなものかと思った方は
こちらを見てください。

DUCATIのデスモドロミック機構が良くわかるでしょう。でも新型の実車はカムは3つも有りません#DUCATI #ducatidesmodoromic #ドゥカティデスモドロミック #デスモドロミック機構 | By オートハウスアツFacebook
DUCATIのデスモドロミック機構が良くわかるでしょう。でも新型の実車はカムは3つも有りません#DUCATI #ducatidesmodoromic #ドゥカティデスモドロミック #デスモドロミック機構

普段取り扱っている900ssなどと同じでは
ないですが、機械的にバルブが開け閉め
されていることが解ると思います。
実際の空冷900ssでは補助的なスプリングが
ついていますがバルブを閉じるため
使用されているわけではありません。

当社ではエンジンオーバーホールの時、
ヘッド単体でカムシャフトまで組付け
仮のバルブクリアランスを調整します。

その時に通常のバルブスプリング付きの
ヘッドでは、IN側、EX側それぞれのカムシャフトを
治具でテコを使って人力で回すのですが、
それには結構な力が必要です。
治具なしで手で回せるような物では
ありません。

それに比べDUCATIのデスモドロミック機構がついた
ヘッドのカムを回すときには(ヘッド単体で)
治具など必要なくタイミングベルトがかかる
プーリーを手で握って回せば軽く回すことができます。

つまりバルブの開け閉めに対して
負担が少なくてエンジンの出力ロスを
減らすことが可能なわけですね。

実際にデスモドロミック機構のついた
調子の良いエンジンに接すれば
小気味よいレスポンスやレッドゾーン
ギリギリまで回していくことに抵抗が
少ないことを感じることができます。

詳しい数値は解りませんが、エンジン出力比も
数%ロスを減らせると聞いています。
理屈ではそういう優れたところがあると
いうことを今書いていますが
実はそれが言いたいわけではなく、
その個性の部分を知ってもらいたいわけです。

今は通常のエンジンで使われるバルブスプリングの
性能も大きく上がって、その性能差は小さくなって
いると思われるからです。

最近多く750ccのバイクやDUCATIの900ssの
話をよく書いています。

私が思うに全方位的に良さげなバイク、
例えばレーダーチャートでhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%80%E3%83%BC%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%88
全体が綺麗によいバイクや車って
印象がぼやけて面白みがない。
俗に言う
「いいバイクなんだけどね」
で終わってします。
よく動画などで人が褒めていても、
実際には買わないだろ、的な。

ちょい乗りだと良い印象だったそのバイクに
実際所有してみるとすぐに飽きて、
100万円でも200万円でも
突っ込んだ後にすぐに買いかえたくなったら
何と悲しいことか。

つまり全方位的に良いバイクでなく
どこかに主張する個性があり、
このバイクはここがいいところだよねと
主張があるバイクこそ、
長く所有することに喜びを感じることが
できるわけです。

つまりそうでないものはすぐに飽きる。
バイク好きは無意識のうちにその個性を
楽しんでいる。

それが現代では技術がすすみ、全方位的に
優れたバイクを作れるようになってきた。
何でもできるからと突っ込んでいると
結局何がしたいの?という仕上がりになる。

出来ることが増えたからこそ、
削ぎ落していくセンスみたいなものが
必要になりますね。

古いバイクでは全方位的に良いバイクを
作ろうと思ってもそれが技術的に
できなかったのですが、
作れるようになると作りたくなってしまい、
結果的に完成したものがこれといった特徴のない
つまらないものになってしまうことが
よくあるわけです。

今では燃費も良く、出力高く、
軽いながらもフレーム剛性も高くすることができる。

スタイルも昔に比べれば複雑な形状のものを
作れるようになった。
足回りも、安くても充分に乗り心地が良く
タイヤの性能も良いので
ただ走るだけなら何の問題もない。

ところがそういうバイクに乗ってみて、
しばらくたって思い返してみると
記憶に残っているところがない。

話が脱線してしまいましたが
DUCATIのもう一つ個性がトラスフレームですね。
トラスフレーム自体は国産のメーカーでも
時々使われていますが、DUCATIほど長く
継続しては使っていない。

長く継続して作っているからこその
ノウハウを乗ってみると感じることができます。

900ssの事故車フレームを掲載しましたが、
このトラスフレームは薄い鉄パイプで作っているので
変更がたやすい。

つまり作っている段階でメーカーも
変更しやすく、都合が良い。
ノウハウを使って思うようなものに
仕上げることがしやすいということですね。

これは仮に鋳物だったりしたら簡単に
型を何度も変更するわけにはいかないですよね。
それに比べここは強めにしよう、
もう少し柔らかくしようと作っている最中でも
変更ができる。

紹介した写真は転倒して前から突っ込んでおり
ホイールも曲がっていたのですが、
ステムの上下やフロントフォークアウターチューブ
側などは曲がっておらず、フレームのネック部分が
大きく曲がっていました。

つまり事故などで、ある一定度以上の力が
加わった時はフレーム側が一番曲がったと
いうことです。

これは通常のバイクであればステムやフォークが
もっと曲がって、そしてフレームも曲がる。
この時ぱっと見、フレームはここまで曲がらない。

900ssのフレームは普通はしっかり強めに作る
ネック部分が強すぎない設計で、
普通は弱いと負荷がかかる運転すると
すぐにヨレヨレしてしまうのに
そうなることなくきちんと走ること。
これが不思議。

もちろんそれには車重が軽いことと、
スイングアームを取り付けるピポットシャフトが
通常のバイクのようにフレームに取り付けられるのではなく
エンジン後端に取り付けられているなど
そちらにもノウハウがあると思われます。

また900ssのように通常弱めのフレームに
倒立フォークを組むと
フォークの強さがやたらと目立ってバランスが悪く
扱いにくいバイクとなってしまいます。
そうはなっていないのが偉い。

ですがもし、もう少しフレームを強くしたいと
なった時もすぐに変更はできたわけですから、
良いころ合いに仕上げてあるということに
なりますね。

例えばGPZ900R、このバイクもフレーム自体は
それほど強くない車種ですが、
倒立フォークを組んであるもので運転して
良い印象だったものに出会ったことがありません。
どうもフォーク回りが硬い感じで成立フォーク
を使ったときの物より扱いにくい感じで
飛ばす気にならなくなります。
もちろんセッティングでまともに走るように
なる可能性はありますが。

なのにそれほど強くない900ssのフレームに
倒立フォークの組み合わせでは乗り易く
コーナリングだけでなく強めのブレーキング時も
安定して怖くないわけです。

これはフレームが上手にしなるからこそ
この安心感が得られているのは確実です。
適度にしなる釣竿みたいな感じでしょうか。

DUCATIはフレーム構造が外から見えることが
多いので新しい車種など他のものも観察してみると
車種によって900ssに比べ前半が太めのパイプに
変更されていたり、トラスの形状が違っていたりして
はっきりと強めに作られているものなどもあります。
そしてエンジンの積んでいる位置なども
違ったりします。

それらをその車種ごとにスポーツ性が高いものや、
普段乗りに適しているものなど使い分けているようです。
長年作り続けているからこその部分でしょうね。
何でも強ければいいというわけではないのです。

900ssの立ち位置は尖りすぎることなく
あくまで一般道で楽しめるバイクですね。
かといって今のバイクと比べても
コーナリング性能も高い。
つまりゆっくり流しても飛ばしても楽しめる。

そしてもう一つの個性がVツインエンジン。
90度で配置されたシリンダーが使われています。
実際に乗ってみると90度バンクのおかげか
高回転まで回したときに、
それ程振動が多くないことが解ります。

と言いますか、普段4気筒エンジンを
扱うことが多い私でも気にならない。
むしろ心地良い。

しかもエンジンはフレームに直接固定されており
間にゴムを使ったマウントなどは使われていません。
それでもそんな感じ。

ただ90度バンクですと、
前側バンクのヘッドがフロントタイヤに近くなり
干渉を避けなければいけないので
エンジンを前に積めなくなり
フロントの荷重が少なくなります。

これが速く走ることが最優先される
本気バキバキのスポーツバイクであれば
前輪の荷重が車重の50%を超えるほうが良いと
されています。

そして実際に古いモデルの前輪荷重が
少なめの物でも、新しいものが発売されると
前輪荷重は増やされていることが
多いですね。

ところが一般道を走るバイクの場合
実際に運転してみると全体のバランスから
前輪荷重が高いものが運転して楽しいかと
言えばそうでもない。
そこがバイクの面白いところ。

ではここで前輪重量についてのデータで
900ssと昔持っていた当社のデモ車の
インチキなしの実測数値を。

今持っている販売車両、すべてノーマルの状態、
91年式DUCATI900ss、
ガソリン満タンの状態で
前輪重量 98.5キロ  後輪重量 101キロ

よって車両重量は前輪重量と
後輪重量を足して 199.5キロ
200キロを切っているのが偉い。
(ガソリンなしは187キロ)

前輪重量は車体全体に対して約49.4%

そして当社の昔のデモ車
1977年式 Z750D1のフルコンプリート車
ガソリン満タン状態
前輪重量 116キロ 後輪重量 109キロ
車両重量は 225キロ
(ガソリンなし213キロ)

前輪重量は車体全体に対して 約51.5%

もう一台当社のデモ車
1983年式 Z1000R2フルコンプリート車
ガソリン満タン状態

前輪重量 114キロ 後輪重量 115キロ
車両重量は 229キロ
(ガソリンなし214キロ)

前輪重量は車体全体に対して 約49.8%

Z750D1とZ1000R2を比べれば
数値だけ見ればZ750D1の方が良く走りそうですが
そうではありません。

実際に運転すると明らかにZ1000R2の方が
軽快に良く走ります。
これは私だけの意見ではなく
当時プロのテストライダーにも乗ってもらい
直接話を聞いています。
誰が乗っても当社のD1とR2ではR2の方が
運転して楽しく良いバイクなわけです。

つまり私たちが一般道で運転する時には
数値だけで判断することは間違いで
実際に運転してみて部品を選んだり
セッティングを変更したりする必要があります。

例えばデモ車Z750D1は車両重量を測定した後に
フレームを加工してキャスター角を
約1度寝かす方向に変更し、
とても良く走るようになりました。

キャスター角は普段簡単に変更できないので
そうしない場合は前を少し高く、
リヤを少し低くするように部品を変更すれば
確実に良く走るようになります。
これはフロントフォークをもう少し長いものに
すること、スイングアームの変更などですね。

結局は人の乗車位置、エンジンの搭載位置
フレームの剛性など、各部が絡み合って
その車種ごとに丁度良い前輪の重量の具合が
変わってきますから、チューニングする際には
そこの部分をキチンと調整する必要があります。

では900ssでデメリットはないのか?
もちろんあります。

それは運転する側、つまり所有車さんの話ではなく
整備士側から見た時の話です。

こればかり作業している人は思わないかも
しれませんが、
簡単に言えば国産車より整備しにくい。

例えばブレーキディスクを外したいとなった時
国産車では、ねじロックを使う箇所なので
緩める時になめにくいサイズのボルトが使われています。
ところが91年~97年のDUCATI 900ssでは
ただでさえブレーキディスクの固定ボルトは
緩めにくいのに、
国産車より一回り小さい頭の薄型のキャップボルトが
使われている。
これがしばらく緩めていなかったりすると
なめやすかったりします。

その他最初に書いた、デスモドロミックの
バルブクリアランス調整も、一般のヘッドとは
違ってきます。
それ以外にもちょっとしたことで?
という部分があります。

また部品を在庫していなければ、
国産車より部品が届くまで時間がかかります。

それとまともな整備していない車両は
国産車より乗りにくくなっているものが
多いです。

つまり最初に一通り整備して乗り始めれば吉、
ということですね。

それと最後に車重です。
よく何でも後期モデルが良いなどと言う人がいます。

確かに後期モデルは、
初期の物を対策していた結果こうなった
というものです。
ですが良いか悪いかは好みですが、
設計者の意思が最もストレートに
反映されているものは大体初期の方の
モデルですね。

また後期モデルで世の中の声を聞きすぎて
過剰に対策してしまった結果、
機構が複雑になって、かえってトラブルが
増えてしまったりすることもあります。

そして一番多いのが車重の増加。

皆さんは同じ車種の年式違いや、
仕様違いでの車重の違いを体験することは
少ないと思います。

ですが車重の違いで走りのキレがまるで違い
別のバイクのようにダメになってしまうことも
あることを知っているでしょうか。

900ssは程度優先で選ぶべき車種ですが
前期モデルと後期モデルで
おそらく7、8キロ位は違うと思います。

それぐらいと思うかもしれませんが、
これは結構違うといってよい数値です。

そして軽い分初期型がトラブルが多いかと言えば
そんなことはあらかじめ整備しておけば
同じレベルです。
また後期モデルで程度の良いものが
ほとんど出てこない車種なんです。

ではおなじみのカワサキの旧車はどうでしょうか。

ここで紹介するのはカワサキZ系で
ノーマル時の車重、
全てガソリン満タン時のものです。

Z1は 252.5キロ
Z1000MK2で266キロ
Z1R 2型  274キロ

Z1000R 252キロ
GPZ1100 A1 270.5キロ(空冷車)

特に注目すべきはZ1とMK2で
13.5キロ増えていることと

そこからフルモデルチェンジしてZ1000Rで
Z1とほぼ同様の数値までパワーアップと
フレームの剛性を上げつつ車重を落としたこと。 

Z1とMK2は車種がそもそも違うので
同じ土俵で争うのは違うと思いますが
乗れば軽快なZ1、安定のMK2です。

そしてZ1の方がトラブルが多いかと言えば
そんなことはなく最初に整備をどれだけ
キチンとしておくかです。

もし軽快なZが欲しければZ1を整備して乗るのが良く
トラブルが心配だからと言って
MK2に乗るのは誤った選択です。

MK2が欲しい方はあくまでカワサキらしい
あのスタイルで欲しいわけで、
トラブルが少ないからといって
買うものではないでしょう。

またここでは書いていませんが
カワサキZ系の前輪重量は全て
車体重量に対し50%より少ないです。

レーサーや、足回り17インチ仕様などならともかく
18インチ仕様で一般道で乗る時、
紹介したZ750D1のように
50%を超えるように車体を作っても、
あまりメリットはないと言っていいと思います。

と言ってもあくまで実際に乗って
調整することこそが重要なのですが。

まだ進んでいませんが900ssも乗れるように
部品の準備しています。
いまマグタンを注文するか悩み中。

コメント

タイトルとURLをコピーしました