台風と販売車両GSXR1100の整備紹介(9)完結編

GSXR1100販売車両整備

間が空きましたが以前販売納品した
GSXR-1100(青/白)の整備模様です。
多少はしょっていますが、今回で完結です。

台風ですが大分の方では症状は落ち着いていますが、
遠くにあっても各地かなり被害が出ているようです。
外にでず、仕事も休むことをお勧めします。
当社も休みました。
当社の方は雨漏りだけで大きな被害は出ていません。

では話を元に戻します。
中古車のコンデションは一台一台違います。
今まで9回に分けて紹介しているGSXR1100の整備を、
他のバイクでも毎回同じ内容で行うわけではなく
その一台に適切なメニューを考えて、
オーダーメイドで整備を施すのが
良いコンデションの古いバイクを手に入れる
唯一の正しい方法ですね。

当社で販売するバイクは、
私が自分で乗るなら、
どこまで整備してあるのが良いか、
車種ごとにどこまで整備してあって欲しいか、
それを基準に整備メニューを考えます。

ちまちま悪いところを延々と修理しながら乗る
なんてのは性に合わない。
バイクが傷んでしまう暑すぎる時や雨の時に
乗るのはダメですが、
乗りたいときに乗って、消耗した分を
適切なタイミングでメンテナンスしながら
維持するのがよいと考えています。

元にするベース車両は、
整備が少なくて済む程度の良いベース車両が
手に入れば、
かえって購入金額が安くなることが多いので
運よく良いものが手に入ればそれがいい。

特にエンジンの大掛かりな整備がしなくてよい物、
フレームのレストアが必要のないものが良いですね。

当社には現在販売車両
赤黒のGSXR1100があります。

先日遠方から、わざわざ見に来ていただいた
お客様は金額の面では問題ないものの、
残念ながらご家族の反対にあって購入には
至りませんでした。
結構多いですね。家族の反対は。〇〇んすれば?
こんなこと書くと怒られるか。
家族のために働いて、自分のためには使えない、
アホらしい。人生は一度きり。
リスクゼロの遊びはないですよね。

赤黒のGSXR1100は、本来の良さを引き出すため
マグタンの装着、ハンドル、マスターシリンダー、
キャブレター、そしてマフラーの交換を
考えております。
油冷エンジンはマフラーとキャブ交換で
油冷エンジンならではの攻撃的な音が
聞けるんですよね。

新たなお客様のご連絡をお待ちしております。
ぜひ直接見に来てください。
忘れていたエンジン始動の動画を撮ろうと思ってます。

では本編、ここから販売車両GSXR1100の整備紹介(9)
に入ります。

エンジン本体はコンデションが良いため
大きなことはしませんが、
プラグは交換します。ただしプラグについては
走行テスト後、別の品番や、熱価を換える時があります。

古めのバイクにつけるプラグは
高価なプラグを長く使用するより、
一般的なものを1~2年に一度くらいは点検して、
劣化していれば早めに交換するほうが
よいのではないかと思っています。

交換してプラグキャップを取り付けたところ。
ヘッドカバーガスケットも交換済み。
ヘッドカバー取付ボルトは再メッキ済みです。

キャブのスロットルケーブルの取り回しはこんな感じになります。

順番が逆になりますがキャブレターの
スロットルケーブル取り付けステーは
加工してあります。

そのままだとスロットルケーブルがガソリンタンクに
がっちり当たって具合が悪いので、ケーブルが
やや下向きになるようにしてあります。

キャブはその車種用で販売されていても
セッティングだったり、取り付けもボルトオンで
ないことも当たり前です。

沢山売れている商品だと問題なくつくことが
殆どですが、それ程数が出ないものは
上手くつかない、走らないなんてこともあるので
それに対応できる店で作業するのが良いですね。

リヤブレーキホースを取り付け。
元々この車両に使用されていたアルミフィッティングの
ブレーキホースが珍しくきちんと寸法が出ていたため
再使用できました。
よく何々用ブレーキホースキットとして売られいるものも
ありますが、ひねりや長さが良くないものばかり、
まともなものはほとんどない。
現物合わせが一番良いものに仕上がります。

バンジョーボルトは状態がよく清掃して再使用。


ブレーキホースはスイングアームのクランプを
キチンと通っています。

解りにくいですが、リヤマスターシリンダーの
裏側にブレーキホースが取り付けられています。
オイル漏れしても発見しにくい箇所なので、
車検時など、チェックしたほうが良い。

クラッチのレリーズ機構です。
作業したのが結構前なので記憶が飛んでいますが
外はレストアしたと思います。
この部品をクラッチを軽くしたいからと、
考えの足りない売られている商品に換えたりすると、
クラッチが切れなくなったり、かえって調子が
悪くなることもあります。

クラッチはきちんと切れないとミッションが傷みます。

シール交換します。ピストンやそのほかの部品は状態が良いです。

必要な部分にグリスを塗って、このように組付けます。

ピストンを組みつけました。

フロントスプロケットカバーに先ほどの
クラッチレリーズ機構を組みつけます。

スプロケットカバーの裏側。
純正は強度が増すようにきちんと補強が入っています。
見えなくなる部分で色も多少剥げていますが、
掃除は終わっています。
結構力がかかる部分なので車種によっては
クラックが入っていることもあります。
綺麗にしてチェックします。

社外部品でスプロケットカバーの強さが足りずに
クラッチを握るとこのカバーがグニャグニャと
たわんでしまって、クラッチがきちんと切れて
いないものがあります。

スプロケットカバーにクラッチレリーズ機構を
取り付けたところ。

フロントスプロケット回りを再度チェック。
今回ノックピンはスプロケットカバー側に
つけてあります。

取付ボルトを用意します。

組付け終了。

チェーンカバーです。

チェーンカバーの外側はもちろん、
裏側も綺麗にしてあります。
大体チェーンのグリスが飛んでゲロゲロ状態ですので
こういう時に掃除をします。
一回綺麗にすればそれほど汚れることもないので。

チェーンカバーを取り付けるための
再メッキしたボルトとワッシャー。

チェーンカバーの取付ボルト類はタイヤ交換などの時に
雑に扱われていることが多く、
何の考えもなく、しょーもないその辺で拾ってきたような
ボルトなどに変わってしまっていることがあります。

チェーンカバーのボルト類は、
過去の整備がまともに行われているか、
バイク屋さんがあなたのバイクを大切に扱っているか
意外と解るところです。

チェーンカバーがきちんと取り付けられました。
長年掃除をしていないとこの辺り結構汚れていますから、
整備する側も触るのは嫌なもんです。
普段、乗る人はそういう部分はなかなか綺麗にしにくいので
プロが整備する時に綺麗にして、悪い部分がないか
チェックすべきです。

純正の4マーク入りフランジボルト。
別のものになっていても構いませんが、
何でもよいわけではなく、
ボルトは強度や形状などをある程度
配慮したものを使わなくてはなりません。

ギヤチェンジペダルです。軽く磨いています。
今では考えられない、ペダル部分が溶接で
つけられています。
一体で作れなかったのでしょうけど大変な手間をかけて
作られていますね。GSXR系はそういうところが
沢山あります。今では当たり前ですが、
時代を切り開いたアルミフレームですから。

チェンジペダル先端のゴム(43151)は
よく亀裂が入ったりしてダメになっているので交換。
こういう部品がまだ欠品になっていないのは
ありがたい。

リンク回りに使うサークリップとワッシャと共に交換。

ギヤチェンジに使うリンク回りを製作。
純正のままでも問題ないのですが、
ガタが大きくなっていたためピロボールで製作。
ガタも少なくなって動きが純正よりも良くなり、
シフトフィールも良くなります。
たまに給油すれば問題なく長く使えます。

シフト回りを組みつけたところ。
GSXRは純正でもきちんとシフトできるので
ポジションを換えたいということでなければ
純正のままで大丈夫です。

ヨシムラの油温計。エンジンが純正のままなら
特段必要だとは思いませんが、元々ついていたため
電池を交換して取り付け。
配線の取り回しなど実に雑に取り付けられており
保護のチューブなどが溶けていたため、
問題が起きにくいようにして取り付けました。

普通の旧車バイクは油温と、電圧計だけあれば
充分だと思います。もちろんなくても良いです。

スイングアームののシャフトのカバーを取り付け。
新品がまだありました。



テールカウル回りを組みつけます。

使用するゴムの部品。

このゴム部品は硬化すると
走行中にカバーが外れたりすることもあります。
新品にした時は取り付けがまずい時以外は
外れたことはないですね。

ボルト、ワッシャ、ゴム類は都度交換したり、
再メッキしたりして使用します。
ゴム類は悪ければすべて交換したいですが、
欠品のものもありますから、その時々で
良いと思われる方法をとります。

見えなくなりますが、できることをできるだけするのが大切。
もちろん販売価格によってできることは違いますが。
逆に金額が違うのなら同じであってはいけないと思います。

テールカウル内の後端に上の黒い部品が
本来ついています。外からはほとんど見えません。

ですがGSXRではこの部品がついていないものが殆どです。
ですのでアルミで製作し取り付けてあります。

これは左側のステップ上のカバー内部です。
見えなくなりますが、きちんと組みつけます。

タンデムグリップのバーです。今回は清掃して組付けます。

使用するボルトとカラーです。
ボルトの先端が尖っているのは、
グリップバー取り付けの際に雌ネジ部分にボルトの位置が
合わせにくいので、先を尖らせてボルトがスムーズに
雌ネジに合うように純正でこのようになっています。
と言ってもやや思うようにならないこともあるのですが。

グリップバーを取り付けたところ。

続いて、エンジンを覆うセンターカウルを
組みつけます。
まず使用する樹脂部品を外して徹底的に
掃除をします。

ボルトは再メッキか交換して各部品を組みつけます。
今回カウル類は一部補修、再塗装をしていますが
(当社のサービスで)一部ボルト取り付け部に
軽くクラックなどが入っている箇所には
写真のように裏から補強してあります。
これは塗装屋さんからのアドバイスをいただいて
この様にしています。
何でも腕の良い方に聞くのが一番。

あまりきれいに見えませんが、カウルの裏側も
掃除をしてあります。

GSXRはカウルとエンジンなどのすき間が狭く、
振動などでカウルと接触する箇所があり
この様になっています。

部分的にガラスクロスを貼って補修しておきます。
神経質になる必要はありません。


センターカウルの塗装側は薄皮一枚研磨して完成。
純正塗装をそのまま生かすときは、やりすぎないことが大切。

アッパーカウルは傷んでいたので再塗装しました。

塗装屋さんの腕が大変良く、裏側も気遣って
綺麗にしてくれています。
GSXR系はアッパーカウルの裏側も結構見えるので
こういう部分も自然に仕上げてくれているのが助かります。
長くおつきあいしてもらっているので、何も言わなくても
こちらの思うように仕上げてくれてます。
ただ納期は結構かかります。

シングルシート用のカバー。こちらもお客さんには
言っていませんでしたが、私が気になったので
サービスで塗らせていただきました。

カウル全体を塗るほどサービスは出来ませんが
できる範囲ギリギリまで行います。
塗装は一か所だけ綺麗でもみっともないので
全体のバランスを考え作業します。

アッパーカウルに社外品の新品スクリーンを組みつけます。
純正のゴムのナットは使用してみると一部いまいちで
調子が悪いため、写真のようにGPZ900Rのものを使用しました。

この時代のバイクは純正でも、
物によってばらつきがあるので
こういうところは臨機応変に対応しないと、
後でトラブルの元です。

マスキングテープを貼っているのはスクリーンに
触ると傷が入るので持つところに貼ってます。


塗装面側。ボルトも新品に交換するか、
程度の良いものは掃除して再使用しています。
ワッシャは都度考えて適切なものを使用します。

アッパーカウル組付け前。

配線の取り回しなどは最初純正と同じように組付けますが
ハンドルやマスターシリンダー、スロットルなど使う部品が
違うため、作業しながら結構変えます。

これはアッパーカウルを固定するステーの端部です。
ここにゴムの部品が入ります。

入るゴム部品はこれで、中がナットになっています。

こういう感じで取り付けます。

この時代のバイクはハンドルが遠く乗りにくいものが多く、
GSXR系も同じです。
これを改良するためハンドルを変更するのですが、
そのままでは上手く取り付けられないので
加工してあります。

この後さらに追加工して微調整して、
色を塗ってから車体に組付けました。

アッパーカウル回りの作業をしながら
アンダーカウルの準備もします。
この部品は左右のアンダーカウルを固定する物で、
再メッキしました。

先程の部品はこの様な感じで使用します。
なお、このGSXR1100はマフラーを交換するのですが
カウル内は狭く、
クリアランスはギリギリになる箇所がありますから、
念のため広めに耐熱のガラスクロスを貼っています。
カウルも一部加工してあります。

右側。

左側。

下側。

これはアッパーカウルのステーで、レストアしてあります。
この部品もとても良く見える位置についているため、
綺麗にしておくと気分が良い。

これはミラーとアッパーカウルの間に入る
ゴム部品です。再使用です。

この様に使用します。

ミラーを取り付けた写真を取り忘れたのですが、
先程のレストアしたステーはこの部分の
固定に使います。

この部分も純正のままだと調子が悪かったため
使用する部品を変更してあります。
また手前のプレートはついておらず、
また欠品だったため、作りました。

このゴム部品は純正のものを加工したもので
先程のステー部分に使用しています。

純正そのままでも問題なく取り付けられる時も
ありますが、この時代のものは
物によってばらつきがあるのが普通で
改造していなくても上手くつかない時も多く
対策してから組付けます。

こういう手間を惜しむとせっかくの名車も
くそみたいなバイクになります。
これはカワサキのバイクだろうが同じです。

右側。

ヘッドライト回りにつくカバーです。

GSXR系にはヘッドライトに透明なスクリーン状の
カバーがつくのですが、そのまま取り付けると
そのカバーにクラックが入りやすいので
(純正の物でも)間にカラーを入れました。
写真では解りませんがそのカバーに合わせて
斜めに削ってあります。

先程のカラーは中に入っているため見えませんが
カバーを取り付けたところ。黒の4本の取付ボルトの
内側にゴムのワッシャを入れるとなおよい事が解ったので
それも入れてあります。
これでだいぶ割れにくくなるはずです。

ここでリザーブタンクのステーを製作して取り付けました。
元々ハンドルの方に都合よくネジが切られていたため
そこに取り付け。

クラッチ側。

次にシートの準備をします。
ついていたシートは状態が良く、
清掃して使用します。
メッキ部品も状態が良いので分解せず、
清掃しました。

シート表皮はオリジナルです。
無傷というわけではないですが、
状態は良いのでできるだけの掃除をしました。
750とは違ってタンデム部分まで一体のシートです。
オリジナルのシート表皮は堅すぎず、柔らかすぎず
一般使いにはとても良いものなので、
なるべくオリジナルを使いたいものの一つです。

次にシングルシートのカウル回りの準備をします。

写真右側の穴開いている箇所、
これは取り付けボルトのための穴なのですが、
修理をした後が見えると思います。
カウル自体は問題ないのですが
純正は取り付けの仕方に問題があるので、
後でその部分の対策をします。

シングルシートのストッパーです。
これも状態が良いので清掃して組付けます。

清掃後。

シングルシートのカウルにストッパーを組みつけました。
こういうところも納車整備の時などでなければ
一般の方が使う時に中々きれいにはしない所ですよね。

私的には程度の良い本来の調子の物を手に入れて、
掃除ばかりして乗らないよりも、
適度に乗って楽しんでもらう方が、
調子も良いまま維持されるので良いと思っています。
増える走行距離は勲章みたいなものです。
とっても責任のある立場の方でなかなか乗る暇なし、
といった方も多いようですね。

次に先ほど紹介したシングルシートカウルの
割れ対策をします。

シートのこの穴はシングルシート取り付けのための
ボルト穴なのですが、
ここにネジを取り付け締める時に
純性ではいくらでも締めることが可能な状態に
なってしまっているので、
カウルが変形して割れてしまうわけです。

そこである程度ボルトをある程度
締め付けるとそれ以上締められないように
カラーを製作しはめ込みました。

これが入れたカラーで、
左右同じものではなくシートの穴の深さを測定して、
適切な長さのものにしてあります。

そしてボルトを締め付けた時にシングルシートカウルに
点で力がかからないように、また傷防止も兼ねて
このタイプのワッシャを入れます。

この様な感じです。これで締め付けすぎなければ
純正のように簡単に割れたりしなくなります。

シングルシート取り付け後。良い感じに仕上がりました。
マスキングテープは取り付け時にここを押すので
傷が入らないようにです。

よく売り物や、人のバイクに
指でなぞったりする人がいますが
そういうことは自分のバイクだけに
して欲しいものです。

車体が完成し、走行テストをして
高回転までまわしたところ、
マフラーとキャブが変わったことで出力が
増えたことでクラッチが滑ったため
少し加工しました。

この後走行テストを再度行って、
問題なく走れることを確認しました。

車載工具が元々一部積まれていたため、
再メッキして、少し足してから載せました。

車載工具はあくまでサービスなので
毎回付属しているわけではありません。
乗られる方がそれぞれ自分の整備の力量に合わせ、
必要と思われる工具を準備して載せるように
して下さい。
使えない工具を積んでも意味がないですし、
また必要と思われる工具を全く持っていないのも
いざという時に困ります。

幸いGSXR1100にはこのようにいい感じの
載せられるスペースがあるので
ここに載せました。

ここからは完成写真集です。














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