販売車両GSX750Eの整備レストア模様紹介 3

販売車両製作模様

間が空きましたが販売車両GSX750Eの
整備レストア模様2の続きになります。
これからエンジンのクランクケース組付けに入ります。

このエンジンは今販売しているカタナ750と
主要な部分は同じような構造で、
1100とは異なる分があります。

スズキさんは同じ車種でも排気量が違う時には
わざわざ構造を変えていることが多く
こだわりが感じられます。

排気量ごとに販売されるタイミングにも
よるのですが、(750が先が後か)
通常体排気量が小さいものが大きいものに対して
デメリットが生じることが多くなります。

それをわざわざ構造を変えることにより
小さい車種でも魅力を損なわず、
逆にそれぞれの車種に魅力を与え
乗っての個性とメリットある車種に
仕上げてあるのです。

私が思うにカタナが好きなのであれば
その違いを楽しむために750と1100
両方持っていてもおかしくないと思うほどです。

ただ構造を違うものにすると
その分共通部品が減り製作コストが上がってしまうので
正にメーカーの良心と言えると思います。
後に販売される、初期型GSXR750と1100の
関係でもそれが表れています。

話を本題に戻しますが、
今回の作業は地味な物ばかりで
見ていてあまり楽しくないかもしれません。
ですがどれも重要なもので、
きちんと作業しないと即トラブルにつながるような
箇所ばかりです。

この写真はエンジンの
クランクケース上側の内部で
オイル通路のガスケットを交換します。
ここのガスケットが悪くなることは
ほぼありませんが。

今回紹介する写真を見れば、
知識のない方でも解るように、
とても綺麗ですね。
程度が最上級で良いものとはこういうものです。
当社で扱うものでもここまで
状態が良いものはめったにありません。

カバーのプレートを外して
ガスケットをはがしたところで、
雌ネジを清掃して脱脂してあります。

使用するガスケットはこちら。
写真を撮っておけば、
どのガスケットを使ったかすぐに確認できます。

ボルトを脱脂してねじロックを塗ります。

組みつけ後に締め付けた後にチェックを入れておきます。

続いて別のオイル通路にエアを吹いてます。
ミッション付近、エンジンで言えば
クランクケース中央ぐらいですね。
新品の様に綺麗です。

エアを吹いていた箇所のアップです。
ここにオイルの流量を絞るための
ジェットがつきます。

スズキの古いエンジンはこの様にジェットつき
構造がいくつかあるので、
組み忘れがないように気を付ける必要があります。
何度も書いていますが、
記録をとっておけば後で確認したくなった時に
とても役立ちます。

いつも言っていますが超重要な部品、
カムチェーンテンショナーの後ろ側。
1100とは形状が違います。

この時はまだ欠品ではありませんでしたが
今は欠品。
ですが最近この部品を純正と同品質で
作ってくれている神のような会社様があります。感謝!
早速買いました。
当社は買う買う詐欺はしませんので。

先程のカムチェーンテンショナーを
クランクケースアッパーに組付けました。

テンショナーの軸を抑えるために
この部品を組みつけます。

この様に組付けます。丸い先端が見えています。
同世代のカワサキ車とは形状が違います。

やや引いた写真。
この次の工程でメタル部分に
クランクシャフトを組みます。
メタルはこの時点で清掃脱脂してあり、
後にグリスを塗ります。

カムチェーン。純正新品です。

写真下側が新品。
写真で見えない方の端をそろえると
新品の方が少し短く、
古い方が少し伸びているのが解ります。

大体のどのエンジンでも
これぐらい伸びているものが多いですね。

クランクシャフト端につくオイルシール。
こういう部品が出るのもありがたい。

クランクシャフトにカムチェーンを通してから
クランクケースに組みました。

クランクシャフトなど各部の
クリアランス測定は過去のブログに
載せてありますがチェック済みです。
コンロッドは事前に組付けてあります。

軸部分にはあらかじめグリスを塗ってありますが
沢山塗りすぎると脱脂しておくべき箇所に
グリスがついてしまうことがあり
余分に塗りすぎないようにしてあります。
液体パッキン同様余計に塗るのは良くありません。

先程のシールはここにつきます。

次にクランクケース下側の作業で、
ギヤチェンジのドラム、フォーク回りのチェック、
整備をします。

ギヤチェンジドラムを外すために
これら部品を外します。

この部品がギヤチェンジのドラムです。
これはカワサキ車の呼び方で
スズキのパーツリストではカムと書かれてますね。

シフトフォークはすでに外してます。

ギヤチェンジドラムを外すため
この位置決めのボルトを外します。

先程のボルトを外すとこうなっています。

写真下側がストッパーと呼ばれる部品で
この部品が上下してギヤチェンジドラムが
左右に動かないようにするための位置決めになっています。

先程のボルトをストッパーが
ついていた箇所です。
この穴にストッパーが入って上下に動きます。

ギヤチェンジドラムです。
この部品が壊れることは殆どありませんが、
過去にカワサキローソン系で一度だけ
溝の部分が欠けて交換したことがあります。
その時はすでに欠品でしたので
たまたま持っていた部品を使用しました。

ギヤチェンジドラムを外したクランクケース。
ドラム支持のベアリングが見えますが
これのチェックをします。

今回はこのベアリングのチェックをするために
ギヤチェンジドラムを外したのですが
全く問題なく、グリスを塗って再使用です。

このベアリングが悪くなっているものは
今まで一度も見たことがないのですが。

ギヤチェンジドラムをチェックし
これから組付けに入ります。
やや過剰整備で、ここまでする必要は
なかったかもしれません。

シフトフォークです。
ミッションのギヤが抜ける方向に力がかかると
この部品が削れて傷んでいることがあります。
この車両は問題なし。

同じくシフトフォーク。
こちらも問題なし。

シフトフォークに使用するリターンスプリング。
特に交換の必要はなかったのですが
部品が出たので交換しておきました。

スプリング組みつけ後。

ギヤチェンジドラムとシフトフォークを
組みつけました。

皿ネジはねじロックを塗ってから組付けて
あります。
こういう箇所に使うねじロックは
高強度タイプではないものを使います。

ギヤチェンジドラムの隣にあるのは
オイルポンプです。
こちらを外してチェックします。

オイルポンプです。
チェックし、問題ありませんでした。
溝の部分にオーリングが入ります。

純正がまだでます。特殊な形状です。

オーリングを組みつけました。

オイルポンプを外したクランクケース。
内部も清掃してあります。

オイルポンプ組付けのためのボルト。
ねじロックを塗っておきます。
ねじロックを塗る箇所は整備要領書に
指定されていますが、
それ以外にも塗ることがあります。

大事なのは塗っても緩めることが
出来るようにしておくことが大事で
完全に固定され緩められなくなると
分解整備ができなくなる為、
緩まないことが優先であっても
やりすぎないようにすることが大切。
したがって高強度タイプとそうでないものを
使い分けます。

オイルポンプを組付け、
軸部にギヤのピンを差し込みました。
このピンは重要な部品ですね。

ギヤまで組付けました。

サークリップは新品にします。

サークリップを組付け、
オイルポンプ回り作業が終わりました。

クランケース外側に移ってシフトロッドの
シールを組みつけます。
交換してからここからオイル漏れしたものは
見たことがありません。

カワサキZ系、J系のエンジンは
このシール構造がよろしくなくて、
よく漏れますので定期的に交換します。

シールを組みつけました。純正部品です。
次の工程で紹介しますが、
ここにシフトロッドがつきます。

シフトロッドのリターンスプリングです。
今は出るか解りませんがこのGSX750E製作時は
まだ部品がでていました。

カワサキZ系はすでに欠品になっています。
普段このスプリングがダメになることは
ほとんどないのですが
30年近い経験の中でZ1のものが一度だけ
折れたことがあります。

スプリングをシフトロッドに組付けたところ。

GSX750Eは少し変わった造りで、
スプリングの中にカラーが入るようになっています。

他の車種はこうなっておらず、
クランクケース側にこのカラー部分が
あらかじめつけられた構造になっていますから
この様に特殊な構造の場合は
組み忘れがないことを写真に撮っておくことが
大切です。ミスをしない人間はいないので。
この写真の左端部分がステップの
ギヤチェンジ機構リンク部につながります。

この様にスプリングの中に納まり
スプリングのセンターがでるようになってます。

どこの部分か解りにくいですが
クランクケースに組み終わったところです。
この写真はエンジン右側、クラッチの奥あたりです。

この様にスプリングの力でギヤのかみ合いが
真ん中に来るようになってます。

この写真はエンジン左外側、
シフトロッドになります。

ワッシャは傷んでいたので交換し、
この後抜け防止のサークリップを組みつけます。

このサークリップを組みつけます。

このように組付けます。
ここに組み付けるサークリップは
新品でもがっちりというより少し緩めに
なることが多いですね。

新車の時に組まれている部品は少し変わった
形をしていますが、
今部品を頼むと形状が異なり一般的なものに
なっており、こちらの方が良いと思います。
位置的にはエンジン左側後端、
このシフトロッドの上にフロントスプロケットがきます。

今回はここまで、次回はミッションを
クランクケースに組んだりなど
解りやすいかもしれません。



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