スイングアームなど。

スイングアームの強度が足りない時に
どういう挙動が起きるか知っているでしょうか?

新しいバイクしか乗ったことのない方や、
古いバイクでもノーマルだったり、
エンジンがへたっていて本来の力を
発揮していない状態ですと
問題になるほどの挙動にはならないので
知らない方や気付いていない方も
結構いるのではないかと思います。

車体が不安定になるときは、
スイングアームだけでなく、
車体全体のバランス(剛性や寸法など)
デザインからくる空力な部分、
サスペンションのセッティングなども
大きく影響しますが、今回は他の条件は
同じとして、スイングアーム中心に、
私たちが解りやすい部分について書きたいと思います。

日頃私たちが運転していて、
不安定になりやすい条件としては、
高速道路の様な、空いた道でアクセルを
一定で走り、そこからさらに加速する時が
解りやすいです。

70年代~80年代の
古いバイクはこういうところを走るのが
元々苦手なのですが、
詳しく書くと、
まずエンジンの回転がこれから力がでる、
という中回転域一定にして走ります。

例えば9000回転からレッドゾーンの
空冷バイクなら、4000~5000回転
位です。

アクセルは一定にしておき、
そこから道にデコボコなどないところ、
見通しのいいところでアクセルを
開けます。

この時に直進安定性に難のある
バイクなら、すでに不安定な感じがします。
つまり少し怖い。

フロント回りが左右に少し振られるような。

言葉で表現するのはやや難しいのですが、
簡単に言えばよれだします。

そのまま高回転域まで回します。
するともっと左右によれよれします。
実際にはリヤが沈んで前も少し浮気味になり
左右だけでなく色々起きていると
考えられるのですが、
波があるときに船に乗っているような
感じで車体全体が柔らかくなってしまったように
大きくブアンブアンと不安定によれよれします。

もちろんハンドルも実際に左右に振られます。
車体全体も8の字を書くようにとも言いますか。

高回転域まで回し、今度は
アクセルを戻します。そうすると
すぐに車体が安定すれば怖くはないのですが、
逆にもっと車体が不安定になったりします。
つまり今まで経験がなければ
かなり怖い状態です。

ですのでそのことを頭に入れて
操作しなくてはいけません。

高速道路以外の道でも、
空いた道で同じような条件になれば
当然同じような挙動がでます。

余裕がある時に一度経験しておけば
いざという時にあせらなくていいかもしれません。

このような挙動は信号からゼロ発進したり、
スピードやエンジン回転が低いところから
スタートし高回転域まで回した時には
それほどよれたりしません。

これはエンジン出力も中回転域一定から
高回転まで回した時と、
アイドリング近辺から高回転域まで
一気に回した時には出力の出具合が
違っているのも関係あります。

自然吸気エンジンでも、
慣性過給効果があり、先ほど書いた
中回転域一定から高回転域に回す方が
パワー感があるのが試していただければ
すぐに解ると思います。
特にチューニングエンジンでは
大きく違います。
この方が空気をたくさん吸えるからです。

運転の上手な方はエンジン出力を
引き出すのも上手な方が多いので
無意識のうちにエンジンに負担を少なくしつつ
出力も上手に引き出して運転している方がいます。
エンジンがまともで壊れる場合は
運転がまずいです。

中回転域一定で進んでいる時、
フレームや、スイングアームにも
あらかじめテンションがかかると言いますか、
サスペンションにあらかじめイニシャルをかけ
セット荷重をかけた状態の様なことが起きます。

棒の両端を持って手で曲げるように
少し力を加えた状態の様な感じです。

そこからアクセルを開けると
スイングアームが弱ければフレームより先に
スイングアームが変形します。
先ほどの例で棒の両端に力を加えた
状態からさらに力を加えるようなものです。

当然本来こういう形でとどまって欲しいという
物が変形してしまうわけですから、
タイヤの位置決めも正確ではなくなってしまいます。

そうなれば車体が不安定になります。

この時さらにアクセルを開けつづければ
フレーム側も変形してきます。
つまり変形があちこちにおきてきます。
ですから、スイングアームの剛性アップや
フレームの補強も使い方やエンジンの出力により、
必要になってきます。

この時にアクセルを戻します。
どうなるか。

今まで変形していた物が元に戻ろうとします。
その力は大きく変形していたものほど
強く戻ります。
スプリングが縮んでいた物が
戻る様な感じです。

このゆり戻し(そんな言葉あるかな?)
の様な現象が起きた時に車体がさらに不安定に
なります。
この挙動の方がむしろ乗っていて怖く、
だいたいアクセルを戻す時は
前との距離が詰まってきた、
コーナーが近づいてきた等の余裕がない時が
多いので危ないのです。

では一般道で、停止状態やスピードの低い
エンジン回転が低いところから高回転域まで
加速した時はなぜ高速道路の様に不安定に
なりにくいのか。

まずエンジンの出力がいくらか低い。
つまり物を変形させる力そのものが
さがる。

次にスイングアームやフレーム、
サスペンションなどにあらかじめの
テンション、力がかかっていない。

だから各部に力を受ける余裕がある。

そして肝心なのは時間で、
やや大きな力であっても力がかかる
時間が短ければ、変形が全体に伝わらず
部分的になります。

つまり変形するにしても全体が変形するには
至らず、部分的になる。

人間でも平均台に乗り、手の先や
腕を回す位であれば不安定にはなりませんが、
腰や体幹の中心の部分のバランスが
崩れば不安定になり落下してしまいます。

先ほどの部分的な変形、動きであれば、
乗っていて怖くなく、実際に車体も
不安定になりませんから、問題ありません。
つまりアクセルを開け続けるのではなく、
開けてもすぐに戻すのであれば
力の加わる時間が短く、それほど不安定には
なりにくい。

また同じ高回転域まで回すにしても
じわっと開ければ変形が小さく済みますから
ある程度のスピードまでは大丈夫です。

また負圧式キャブレターや、
エンジンの出力が低い場合も
じわっと開けるのと同じようなものですから、
車体側が同じでも、エンジンがダメなのと同じように
よれたりしないということもあります。

カワサキZ系で高速道路などで
よれよれするなら
(750や純正ピストンの物は除く、
また車体の整備がきちんとできている前提)
エンジンに力があると言え、逆に
何も起きないのならエンジンが本調子でないと
言えるかもしれません。

では高速道路などでも安定するように
スイングアームや、車体剛性を上げれば
良いのではないかという話になります。

ですがそれにも問題があります。
まずスイングアームの剛性を上げるには
物自体を太くしたり、形状を工夫したり
(内部に補強があるタイプの材料)
などありますが、確実に強度が上がれば
物自体は重くなる方向です。

鉄のスイングアームであればそれを
アルミに置き換えるという手がありますが
そっくりそのまま単純に置き換えるだけだけでは
逆に弱くなってしまうので、板厚を増したり、
太くしたり、形状の工夫が必要です。

結局強くすることは重くなるということには
変わりはないので、アルミに変換しつつも
重くなり過ぎない程度にとどめなくては
意味がありません。

バネ下が重くなれば、乗り心地も悪くなりますし、
乗ってどんどん軽快さがなくなり
鈍重になってきます。
つまり古いバイクというのは一般道で乗って
素直に曲がり、軽快なところが面白いバイクなのに
その良さをダメにしてしまうことに
なりかねません。もったいない。

さらにスイングアームなど回りの部品が重くなれば
それが負担になりフレームの剛性を
落としたことと同じ意味になります。
つまり回りの部品が軽くなれば
フレームの剛性が上がったのと同じ意味です。

さらにフレームの剛性を上げるのは簡単ではありません。
エンジンが載っていたり、いろんな機能部品が
つきますから、自由にどこでも補強を入れられる
わけでもなく、場所は限られます。

そのような条件の中でフレームの補強で
著しくフレームの剛性は上げることは
できません。

ということはできる範囲で行うということになります。

となればそれに伴いスイングアームの方も
自然とできることは決まってきます。

キャスター角、ステムを変更することによる
トレールを変更するのは効果的ですが、
フレーム側のキャスター角を変えるのは簡単では
ありませんし、エンジンの搭載などに難が
でる場合もあります。

ステムの変更でオフセットを変更して
トレールを増やすのは有効ですが、
ハンドルの切れ角が減り一般道で曲がる際に
簡単にハンドルロックまで切れきって
しまうようなことが起きるので、
これにも限度があります。

どちらにしても安定性をとると言うことは
旋回性が落ち、古いバイクの曲がる感覚、
楽しさが損なわれてきます。

ではその落とし所をどこにするのか、
その部分がチューナーと言いますか、
店側により大きく違います。

オーナーさんが店に注文を依頼する際には
その店がレースが得意な店なのか、
一般道を走るバイクを製作するのが得意な
店なのか(当社ですね)
ひたすら純正部品で当時のスタイルを優先する
店なのかなど、
良く見極めて依頼することをお勧めします。
向いていないことをさせては
得られるものが小さくなります。

また自社で製品を作ったり加工ができる方が
良いのは確かです。
当社でも、できる部分と、できない部分があります。

全ての部品が外注ですと、実際に乗った時に
起こったことに対し、変更して対処したり、
工夫、改良することが難しくなります。
ノウハウもたまりません。
実際にオーダーしてみれば解りますが、
自社で作業するように細かいオーダーは
できません。

大きい会社が下請けさん頼むような
はっきりした力関係であれば
できるのかもしれませんが、
基本無理だと思います。
それはある程度数多く注文する様なものでも
数が知れてますから。

実際に何でも作って乗ってみると、
小さな変更でも大きな違いがでる時もありますし、
大きく頑張って変更しても効果がない時も
あります。

カスタムバイク屋さんでも
何も考えずただ言われたように部品を
ひっつけるだけの店と、
完成した時にどうなるかを予測しながら
作業するのでは、かけた費用に対し
結果が全く違ってきます。

ショーモデルの様に見た目優先の場合も
あるでしょうが、そこはオーナーさんの
自由です。

当社では一般道を普段よく走り、
たまには高速も使うという方向けに
バイクを製作しています。

どちらも良くというのはどっちつかずで
良い結果がでているとは思えません。
新しいバイクであれば、
ある程度そういうものもできるのかも
しれませんが、古いバイクは器用ではないので、
どっちつかずはすすめません。

自分がどのような場所で走りたいのか
ということがはっきり解れば、
製作する側も目標がはっきりして、
オーナーが楽しめるものなるのは
間違いありません。
多少なりとも参考になればと思うのですが。

 

 

投稿者: 田﨑 隆一

タサキチューニング代表です。よろしくお願いします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です