CBX1000の走行テスト

日記

写真は製作途中のものです。
こちらのCBX1000は当社で車体回りのレストアと
チューニングを行っています。

CBX1000はCB750Fと販売時期は大きく違いませんが
実際に整備、レストアを行ってみると、
750Fよりもはっきりと一つ前の設計のバイクと
言ってよく、その分難しく手間取るところがとても
多くありました。
ヘッドライトをつけるためだけに1日かかるぐらい
でしたから。
これは社外品のヘッドライトステーとの
兼ね合いで、ヘッドライトケースとリムの強さが
足りなかったからなのですが。

実際の作業は写真よりも進んでおり
枝葉の細かい部分以外は殆ど形になっています。

残念ながら外装の塗装が来年の1~2月ぐらいに
しか上がってこないとのことなので、
それが届いたら少しでも納品が早くできるように
仮の外装を付け、先に走行テストとセッティング出しを
することにしました。

今回当社ではこのCBXのエンジン作業はしておらず、
したがってエンジンに関しては慣らし運転も必要なく
気兼ねなく高回転域まで回して普通に運転することが
できます。
エンジンは当社に入庫前に他店で分解整備作業を
されているとの事です。

FCRキャブとリヤショックも元々ついていたもので、
キャブの方は当社で全分解して点検、オーバホール
してあります。

入庫時のキャブセッティングはすごく薄いものに
なっていたため、一旦ビトーR&Dさんの
標準セッティングに戻してからスタートすることと
しました。
大きくセッティングが変更されている時は
こういうデータがあると無駄が減り
作業時間の短縮につながります。

それでも最初はスロー系が薄く調子悪め、
アイドリングしないぐらいです。
最初ガソリン入ってんの?と思ったぐらいです。

そこでまずスロー系を濃い目に再調整し
まず走れるようになり、
それで乗った印象から中域が少し薄く感じたので
次にジェットニードルの段数を一つ濃く変え
中域を確認します。

過去ついていたマフラーがフン詰まりだったようで
走って上まで回していくうちにどんどん調子が
良くなっていきます。
通常はここまで体感としては変化していかない
ものなので、旧車に抜けの悪いマフラーが
いかにエンジンに悪いか解ります。

この時点で20キロほど走っていたのですが、
確認のためさらに走っていくと今度は
逆に濃い症状が出始めました。

古いバイクは過去にエンジンが本来の調子で
走っていない場合、こういう変化を
することはよくあります。

その濃い症状は部分的にではなくアクセル開度
4分の1から全開にかけてと広範囲なので、
ジェットニードルの段数は変えずに
ジェットニードルのテーパー角度が違うものに
変更したところ(一つ薄いタイプに)
症状が改善し殆どOKというところまできました。

そこでさらにレッドゾーン近くまで
回すことを試みます。

ですが8000回転でババババと吹け上がって
いかなくなります。

ここで点火系に元々ウオタニさんのものが
使われていたことを思い出し、レブリミットが
かかったんだなと一旦会社に引き返し
レブリミット調整用のダイヤルを回して変更、
もう一度走ります。

今度はレッドゾーン近くまで回しましたが
そこまで綺麗に吹けることが確認できました。

2000回転以下ではややガサゴソ回る印象の
エンジンですが、それから上はレッドゾーン近くまで
4気筒エンジンとはまた違うスムーズさで、
むしろ回しすぎてしまうことに注意が必要です。

以前ついていたマフラーは上まで回すことを
拒否するような物でしたから、
(レストア前に試乗して確認)
レブリミットが少し下で設定されていても
気にならなかったのかもしれません。

ここでさらに確認のため負荷をかけ、
やや意地悪に悪い症状が出やすいように
アクセルワークしながら走っていくと、
中域がほんの少し濃い症状が出る時があります。
今のままでよいか、変更したほうが良いかは
もう一度ジェットニードルの段数を変えて
走り、確認する必要があります。

ですが、ここまでで時間帯が下がり交通量が
多くなってきたため残りは後日となりました。

ここまでFCRキャブのセッティングのみについて
書きましたが、まずはCBX1000の音について。

2000回転以下では走っている時はエンジンも
ノーマルですしそれほど良い音という感じは
しませんが、そこから回すにつれ劇的に
変わっていきます。

言葉では表現が難しいのですがクォ~ンという感じで、
4気筒の良い音ともまた音質が違い、6000回転位から
さらに力強く加速していくと同時にさらに高い音に
変わっていきます。まさに快音ですね。

エンジンの出力的にはちょうどよい感じで、
場所によっては上まで回せますから
その音を存分に楽しめます。

そして皆さんにぜひ知っていただきたいのが
車体回りのことです。

エンジンが大きく、乗って重そうで
曲がらない、ブレーキも効きにくいイメージを
持っている方が多いと思います。

ノーマルの足回りでは当時の技術は不十分。
その車格に対して、6気筒のエンジンを
存分に味わうに役不足で、ノーマルの形で
乗りたいという方以外にはお勧めしません。

ですが今回のように足回りに大きく手を加え、
フレームはレイダウン加工とそれに伴う
補強のみでほとんどノーマルですが、
とにかく乗り易い。

乗っている時は車体に手を加えられ、
軽量になった4気筒エンジン車のように
特に重さを感じることなく振り回せる。
難しいどころかバランスよく逆に乗り易い。

限界域まで攻めれば違う面が当然出てくることも
あるのでしょうが、私達が一般道で
普通に飛ばすぐらいでは安定しており、
曲がり方も癖など一切なく素直。

小さなカーブから大きな速度の乗るカーブまで
実に楽しく走れる。
ハンドルの幅、高さも一般的なものですが
下手な重い印象の4気筒車より軽く感じる走りです。

乗り心地よく、ブレーキも良く効き、
Uターンもしやすく、ヘアピンのような
小さなカーブでも6気筒エンジンが
適度なフロント荷重を稼いでくれているようで
すっと意識なく曲がっていけ不安感がない。
むしろ乗りやすいからと調子に乗って
フルバンクまでいって擦らないようにしないと
という感じです。

シートは今回ノーマルの形状のままなのですが
足つきも充分に良いですし、
ステップとの距離感も良く、ギヤシフトも
スパスパと決まります。

クラッチを握った感じは軽くはないですが
ノーマルのニンジャの重さぐらいでしょうか。
ですが半クラッチなどの操作は実にしやすく
操りやすい、温まればニュートラルもすぐに出せる。

テストとは言え実に楽しい経験を積ませて
もらいました。この仕事の一番良い時でしょう。

乗っての難しい所は何一つなく、
実は取り回しも4気筒モデルと比べても
大変なことは一つもない。
例えば一番面倒な後ろ向きに押していって
向きを変える、なんてのも楽勝。

古いバイクが現代の良い部品を
組み合わせることによって元々の良い面が
引き出される、それを強く感じたテストでした。

もう一度走って、ETCの動作チェックかねて
高速道路での走りを確認し、エンジンの
オイル漏れなどが出てこなければ
外装待ちのみです。
早く届かないですかね。
塗装屋さんは抜群に良い仕事をいつも
してくれるので催促はできないので、
ひたすら待つのみです。

ただ作る側としてはCBX1000は
会社の設備も規模が合わないですし
手間がかかりすぎて採算があわない。
金額高くしても時間が作れない。
もう一台この次に完成までの作業をするのですが、
それで打ち止めですね。
そのCBX1000はエンジンのオーバーホールも行います。
これも作業は大変ですが、完成が楽しみです。

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