先日当社の問い合わせフォームからご連絡いただいた方の
問合せ内容にカワサキZ1で黒煙が出る、カーボンの付着が
ひどいと書かれていました。
買った店の話では腰上のレストア済みという事です。
上記不調で店に問い合わせをした際
「Z1はこんなものだ」と口癖のように言われ
嫌気がさし、当社に連絡をくれたとのことです。
納期など条件が合わないのでご契約とはなりませんでしたが、
同じような方も多いと思われるので、それについて
書きたいと思います。
セッティングが濃いという事はオーナーさんも
解っているという事が書かれており、
その後当社ではない他の旧車カスタム店に相談し
いくらかマシになったが治っていないとのことです。
当社にご連絡いただく方で、同様の話をされる方は
結構多いです。
車両を直接見てはいないのですが、
このような場合の原因はいくつか考えられます。
皆様の参考になれば。
Z1に限らず国産旧車4サイクル車は皆同じ考え方で
大丈夫です。
まず今回は口径33mmのFCRキャブレターを
使用されているとの事でした。
Z1は通常FCRの場合35mmの口径を使いますから、
33mmで口径が大きすぎて調子が悪くなっていると
いう事は除外出来ます。
黒煙が出るという事なので、まず通常キャブレター
セッティングを疑いますよね。
当たり前ですがまずキャブに実際についている
番手などを確認します。油面などもついでに
確認、必要なら調整しますが、
多少上下あってもそれほど影響はありません。
具体的にはスロージェットは何番がついているか、
エアスクリューの開度、パイロットスクリューの開度、
そして重要なのがジェットニードルに何が使われているか
知ることです。
メインジェットなどは少しぐらいずれて
いても大丈夫なので、最初は気にしなくても
良いぐらいです。
この確認作業が自分でできると一番良いのですが
出来ない時はお店の方で見てもらうしかありません。
通常旧車のカスタムショップなどであれば
データを持っていることが多く、まともかどうかは
すぐ判断できるはずです。
旧車のカスタム専門店だというのに
その番手が適切かどうかの判断がお店側で
すぐにできない場合は店を変えるほうが良いでしょう。
時間の無駄です。
良く勘違いしている人や整備士が多いのですが、
ボアアップしたり、ハイカムを入れたりしていても
マフラーが集合タイプや、ノーマルマフラーであれば
上記は大体似た番手になるもので、そこから微調整する
ぐらいです。
メインジェットの番手はマフラーや、
チューニングの度合いで結構変わります。
マフラーが特に変わった形状のものであれば
全く違うセッティングになることもありますが、
通常の集合タイプであればほとんど微調整程度です。
この時ビトーR&D製で売られている
カワサキZ1用のキャブであれば基準になる
セッティングで出荷されており、
それを中心にセッティングできるので
難しいことはありません。
キャブ下側のパイロットスクリューは
全閉してから1回転戻し、これは殆ど触る必要は
ありません。
ファンネル取り付け部の下、エアスクリューは
1回転から1、5回転戻しぐらいになります。
当社はいつも1.25回転戻しにして
そこから走って調整しています。
1回転より締めなくてはいけない時は、
スロージェットを一つ濃いものに換え、
1.75回転戻しなどになる場合は
一つ薄いものに換えエアスクリューを
再調整するぐらい。
重要なのはジェットニードルの番手です。
FCRキャブレターの口径35mm以上のいわゆる
ビッグボディの方のジェットニードルは
3文字で刻印されており、4気筒エンジンものは
Fから始まるものかEから始まるものを
多く使います。
この、特に重要なこのジェットニードルを交換する
セッティングをしない(できない)店も
ありますから、そういう店には何を頼んでも
セッティングできません。お金だけはきっちりと
治らなくてもとられたりしますが。
当然変な番手がついているのであれば交換し
状態がどうなるか確認します。
それでも症状が改善しない時、元々の
キャブセッティングの番手が正しい場合は
下記を試していきます。
とりあえず走れているという事ですから、
まずエンジンの圧縮圧力を測定します。
その数値がある程度良いのであればエンジンは
とりあえず大きな問題はないと考えられるので。
バイク屋さんなら必ず測定器を持っていますから
キャブがついた状態ならアクセル全開で、
キャブを外しているのならそのまま測るだけで
すぐ結果が出ます。ものの10分ぐらいの話です。
サービスマニュアルに最低いくらまでと数値が
書かれています。ノーマルのピストンは
ほとんど使わないのでうろ覚えですが
純正で最低7kgf/㎠以上ぐらいだったでしょうか。
当社で鍛造ピストンを使ってオーバホール、
それなりに距離を走って測定したもので
仕様により11kgf/㎠~13kgf/㎠ぐらいでしょうか。
先日たまたま測定したZ1がそれぐらいだったような。
数値も4気筒大体同じぐらいになるものです。
これ以下なら燃焼温度が低いままなので
キャブセッティングが正しくても黒煙がでたり、
走っているとプラグがかぶってきます。
もちろん7kgf/㎠なんてのはすぐにオーバーホール
した方がいい数値ですが、走れないことはないでしょう。
それでも点火系や燃料系に問題がなく、
エンジンオーバーホールなどせずにとりあえず
乗れるようにするにはキャブセッティングを
薄くするしかありませんね。
そうなると当然トルクが減り、エンジンに力はありません。
またFCRキャブならそういうこともできますが、
純正キャブはそういうセッティングをする前提では
作られていないので濃いままプラグをかぶらせつつ
走る羽目になります。
またZ1の純正の点火系はポイント式ですが、
これの調子が悪いことも良くあります。
ポイントが悪い時も燃焼が悪くて
黒煙がでたりするときもあります。
これはフルトラなどの無接点式に交換しましょう。
当社ではポイント式のままにすることはありませんが
ポイントこだわる方は接点だけでなく
回りの部分含めASSYで交換するほうが良いです。
また基本的なことですがプラグや、
イグニッションコイルなどが完全にダメになっていなくて
不調な時にも黒煙がでたりするときもあります。
電気的な不具合は解りにくいことももありますので
予算が許すなら調子が悪い時には新品に交換して
エンジンとキャブ以外、悪い部分をなくして
絞れるようにしておく方がよいです。
ですが最初に書いたような黒煙が多い、確実に
濃い症状の時はキャブ、エンジン、ポイントの時が
ほとんどだと思います。
エンジンのオーバホールとなると費用も
時間もかかります。まずは手の付けやすい所から。
ちなみにFCRキャブは一般の店では分解しては
いけないところが悪かったり、インシュレーターが
悪く調子が悪い時もありますが、
その場合はセッティングは薄い時の症状がでて
調子が悪くなることがほとんどです。
ですので今回のような明らかに濃い症状で
不具合がある場合は、
まずセッティングの番手を見ただけですぐ良い悪いが
判断できる店を選ぶこと、
エンジンの圧縮圧力を測定することです。
濃い状態で調子が悪いままでほっておくと
実によくないことがエンジンにおきます。
まず燃焼室内とピストン上部ににカーボンが
溜まってしまうのは皆さんご存知だと思うのですが、
キャブセッティングが濃い状態で走り続けると
特にエキゾーストバルブとバルブシートの
部分にカーボンを挟み込みことが多くなるようで
バルブシートが傷みます。
そうなると本来バルブとシートが密着して
圧縮が高くなる状態を保たなくてはいけないのに
それができなくなってしまいます。
そうなるとエンジンは本来の力を
発揮できなくなり、トルクがガクンと落ちます。
これを修正するにはエンジンを分解して
バルブシートカットすり合わせ、
つまりヘッドのオーバーホールが必要になります。
これから近々にエンジンオーバーホールをする予定が
あるのなら気にする必要はないのですが、
しばらくそのような予定がない場合はなるべく早く
不調を治す方がよいです。
もちろんキャブからのガソリンがエンジン内に入り
オイルが希釈されるのもとても良くありません。
とにかく不調はすぐに治す!
これが鉄則です。
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