ミスをさせない、雑な作業をさせないためには?

日記

写真は今私が組み立て作業を行っている
CBX1000のイグニッションコイルと
右サイドカバー内に位置する配線回りです。

どちらもまだ作業途中の写真ですが
ここだけでも自分でもあきれるほどに
時間がかかっています。
覚悟を決めて作業するしかありません。

古いバイクではあきれるほどに雑な作業が
行われていたりします。

それにはきちんとした理由が何点かあるのですが、
その一番の理由は、整備分解作業の量自体が
とても多いからです。

例えばボルトを一本だけ緩めて、
そして締めるだけの作業をしたとします。

これだけだとボルトが普通に緩んでくれれば
普段整備などした経験がなくても
殆ど問題なく、失敗することもないでしょう。

ですが、あちこちにある百本のボルトを
いったん緩めて取りはずし、外したボルトを
掃除してグリスアップして締める。
こうなるとどうでしょうか?

綺麗に百本並んで取り付けられているならまだしも
バイクの車体のように車体のあちこちに
ボルトがついており、
緩めるだけでなく一旦外してメッキして掃除して
などと作業していると、ミスがおきそうですよね。

さらにこれが製造ラインのように
機械が自動で行ってくれるならまだしも、
早く休憩こないかなみたいな
やる気のない人だったり、
時間が足りなかったり、
作業が苦手な人が行えばミスの起こる確率は
ぐっと上がります。

新しいバイクであればその辺の店でたいした
整備をせずに売っているものでも、
古いものに比べオイル漏れが発生したり
故障することも圧倒的に少ないですよね。

ここ最近のものであれば10年程度など
余計な作業をしていなければ問題は少ないでしょう。
当社の売り物であればCBR1000RRのようなもの。
(それでもタンク下を念のために見ると問題があり
対処したのですが)

では古いものはどうでしょうか。
まず設計段階で最近のものほど物事が
解って作られていません。
今よりも、正解なんてわからず、
より試行錯誤の時代のモノです。
構造、各部品も場所により定期的に
メンテナンスする前提の箇所も多いのです。

つまり程度が良くても整備する箇所が
あって当たり前。

つまり分解して修理して組み立てなければならない
箇所がたくさんあるわけです。

そこでCBX1000の作業途中の写真を
見ていただきたいのですが
極めて複雑、ややこしいつくりになっています。

これは当時のホンダさんのものづくりの
考え方がでていることもあります。
他と同じものは作りたくないという事ですね。
そりゃ整備作業する側からしたら
大変としか言いようがない。

それぞれの部品、構造がややこしい上に
その部品回りで完結するわけではなく、
あちこちに関連する箇所がありますから
一か所で物事を考えるのではなく
一つ一つ回りとの関係性を確認しながら
作業を進める必要があるのです。

例えば左サイドカバー内の配線回りの
スペースが足りない上に、かつ6気筒なので
配線の量が1.5倍。

そこからイグニッションコイル、
エンジン、テールカウルに配線が伸びてます。
さらにそれらが純正部品でない為、
余計ややこしくなります。

このCBX1000の依頼は車体持込で、
エンジンを除いた
(受注時点で他社さんでエンジン作業が
施されて間もないタイミングだったので)
車体のチューニングとレストア作業です。

点火系のウオタニさんの部品や配線回りなどは
入庫時点ですでに変更、取り付けされており
手直しすべき作業があちこちで見られます。
分解前の写真も撮ってあるのですが
変更すべき部分が多数あり、
別のCBX1000のノーマルのものを参考にしつつ
作業していきます。
もちろん部品そのものが違うわけですから
純正と同じにしてはいけません。
あくまで参考です。

他の部品との絡みもあってもう少し配線が長ければ、
という部分もあります。

この辺りは汎用品ですからそれでよく、
取り付ける際に変更するのが当たり前です。

すべてをやり直すのではなく、
他との絡みで上手くいってない部分と
傷んでいる部分を変更しながら作業しています。
これがものすごく手間と時間がかかるのです。

こういう物はすべてを変更すると、
返ってトラブルがおきたり、トラブルが起きた時に
対処が難しくなります。
出来るだけそのままでよい所は残し
必要な箇所のみ手を加えます。

では今回の話で何が一番言いたいのか。

それは構造が複雑で、作業量が多い時に
ミスが多くなり、かつ人の作業も雑になるという事。
さらに作業量が多いという事は
時間が絡んできます。

1週間で7つの作業であれば1日当たり
一つずつ。

これが1日で7つ作業をしなくてはならない
となればどれだけ大変でしょうか。

さらに費用です。もちろん支払う側は
安い方がよい。それは私も同じです。
ですが7つの作業をするのに
本来なら7日間必要、あくまで例ですが
一日当たり1万円として7万円。

これが払えないとして1日1万円で
7つの仕事をさせたとすれば
そりゃ手を抜かれ、元の状態より
悪くなりますわね。

となれば、整備士に作業依頼する時、
あるいは自分で作業する場合でも
ミスを減らし、雑な作業をさせず、
余計な費用も使わないために大切なことは?

●余計な作業が少なくて済む程度の良い車両を手に入れる
●必要な時間と費用を与える

余計な作業が少なくて済む程度の良いものに
ついては説明が要ります。

例えば古いバイクに付きまとう
エンジンオーバーホールなどの作業は
どうなのか。

これはしなくて済むほど状態がよければ
それが一番良いのですが中々そうもいきません。

ではエンジンオーバーホール自体は行うと
なった上で、
余計な作業がないことが作業ミス、
雑な作業をさせないために大切なことです。

例えばエンジンにクラック(ヒビ)が入っている。
ネジ山が壊れている箇所がたくさんある。
エンジンブローしてしまっている。
素人がしてはいけない改造している。

これらがあてはまればその問題ある箇所を
手直しする作業量が大幅に増えます。

となればどうするのが良いのか。
エンジンブローしたり、壊れる前に
オーバーホールする。
素人が改造していないエンジンを
オーバーホールする。
純正のままで分解された形跡が少ない
エンジンをオーバーホールする。

このようなことです。

当社が車体を仕入れる時は
エンジンだけでなく車体全体を見て、
余計な作業をなるべくせずに
力を入れるべきところ、余計な時間を
使わず集中できるものを仕入れます。

そうすれば、作業に集中でき
ミスも少なく、雑になることなく、
仕上がりはよく販売価格は安くなる。

具体的には
年数が経っていても実走行距離が少ない。
分解された箇所が少ない。
純正部品が多く残っている。
間違った改造がされていない。

結局それがミスを減らし、雑な作業を減らし、
余計な費用を払わずに済む
一番間違いのないことなのです。

ではCBX1000のように元々複雑なものを
手に入れるのは間違いなのか?

そうではありません。
もし気に入ったバイクがそういうもので
あれば、それはどうしようもありません。
好きなものは好きなのですから。

そのような場合は複雑な物でも、まずは
専門的でキチンと根気よく作業してくれる店を探す。

古いバイクの整備済み販売車両が
沢山あるなんてことは不可能です。
当社みたいな散々経験とノウハウがある
店でもほんの数台しか作れないのですから。

店が見つかってもお金を払うのだからと
横柄に頼んではいけません。

私ならどうするか、
それは人としてコミュニケーションを
きちんと取り、譲れる箇所は譲り、
相談してできることをお願いする。
出来ないことは出来ないと言ってくれる店の方が
まともな店が多いのです。

構造が複雑でややこしい物ほど
間違いなく手を抜かれ、雑な作業が
されやすいです。

だからこそ、手に入れるバイクは
厳選する必要があるのです。
今支払う目先のお金だけで判断するのは
あきらかに間違い、
作業量が少なく済むものこそが正解、
それを見抜ける人こそがプロであり目利き、
そしてその目にかなうよい車両は少ないのです。

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